「老後のために投資が必要なんて大間違い」「投資でリスクを負うのは消費者であって、機関は安全に手数料でけられる」――。『投資なんか、おやめなさい』(新潮社)のなかで、経済ジャーナリスト荻原博子氏はこのように警鐘を鳴らす。

 10月31日付記事『個人年金や投資信託なんて、やってはいけない…手数料でける機関、損する顧客』では、生き残りをかけて庶民のお金を狙う機関の実態や日本経済が大不況に見舞われる可性について、荻原氏の話をお伝えした。

 今回は、「つみたてNISA」の是非や自身の投資体験について、さらに荻原氏の話をお伝えする。

「NISA」は手数料をむしり取られるだけ?

――10月から、「NISA(少額投資非課税制度)」の積立版である「つみたてNISA」の口座開設受付がスタートしました。どのように評価していますか。

荻原博子氏(以下、荻原) 「つみたてNISA」は、大騒ぎするほど魅的な商品ではありません。金融庁が承認した投資信託を紹介するパンレットを作成するのですが、それによって消費者に「金融庁のお付き」という印を与えてしまうのではないかと心配です(※10月13日時点で114本を承認)。しかも、そのパンレットにはNISAの欠点については書かれていません。すごく罪深いことだと思います。

 かったときに非課税になるというのは、確かにNISAメリットです。たとえば、NISAの口座で100万円のを買って150万円になれば、50万円が非課税になります。

 しかし、逆に100万円の50万円になったらどうなるのでしょうか? 一般的なNISAの口座にお金を入れておけるのは5年間です(「つみたてNISA」は最長20年)。5年が経過して50万円だったら、これを引き出すと、取得価格が50万円となります。その50万円が価の上昇で100万円まで戻った場合、50万円に対する所得税20(10万円)が課税されてしまうのです。

 もうひとつ、不合理な仕組みがあります。「つみたてNISA」は、毎決まった日に投資しなければならないことです。なぜ、価格が上がっても下がっても毎同じ日に買わなければならないのでしょうか? 機関にとっては、そのほうが手間がかからないし、手数料もコンスタントに入る。つまり、顧客にとっては、確実に手数料をむしり取られるだけということです。

「投資をしなければ」という呪縛から脱する

――ところで、機関の社員は自分の資産をどのように運用しているのでしょうか。

荻原 お客さんに勧めるような商品については、けのカラクリを知っているので、自分では購入していないと思いますよ。デフレ下では現を持っているのが一番ということを知っている人たちなので、住宅ローンを抱えている場合は繰り上げ返済などで済しようとしているのではないでしょうか。

――資産の運用方法を機関に相談するというのは、機関にとってはカモネギを背負って来るようなものですね。相談先として、独立系のファイナンシャルプランナーはどうなのでしょうか?

荻原 機関口に出向いて「老後の資を運用したいのですが、何に投資すればいいのですか?」などと聞くのは、カモネギを背負ってに飛び込むようなものだと思います。

 相談するなら、常に1億円以上の自己資を運用しているような人がいいでしょう。そういう人はさまざまな経験をしているので、現実的なアドバイス提供してくれると思います。

――荻原さん自身は、どのように資産運用をされていますか。

荻原 「投資なんか、おやめなさい」というのは、実体験に基づいて書いています。かつて、3戸のマンションに投資して損失を出した経験があります。また、昔から相当数の式を運用しています。

 ただ、不動産投資も式投資も他人に勧めたことは一度もありません。については、投資信託よりはましだということは言っていますが、そもそも投資は競馬競輪と同じギャンブルなのに、なぜか別扱いされています。40年近く身銭を切ってさまざまな投資を経験してきましたが、投資はギャンブルだと思います。

――会社員の場合、投資に走ってしまうと、勤務中なのに運用額の変動が気になって仕事に集中できなくなるといったことも増えると思います。

荻原 現役で仕事をしている人が投資をやろうとすれば、多忙な合間を縫って相当な勉強をしなければなりません。たとえば、機関の営業担当者が「ドル・コスト均法」によるリスクヘッジをアピールしてきたら、「なに寝ぼけたことを!」と論破できるぐらいの知識を身につけないと、いいカモになって損させられてしまいます。しかし、専門的な知識が多数必要な融商品について勉強するのは、実際のところ大変だと思います。

――「投資をしない人はリテラシーが低くて時代遅れである」という趣旨で、政府と融界が庶民を煽り続けています。しかし、現役で仕事をしながら融商品の勉強をするのは大変ですね。

荻原 それなら、投資をしなければいいのです。投資をしなければ、損をすることもありません。大変な思いをして勉強する必要もありません。投資をするのであれば、機関カモにならないように勉強すればいいのです。

 それなのに、庶民の貯を吐き出させようとする金融庁機関によって、多くの日本人が投資をしなければいけないかのように思い込まされてしまっていることが問題です。何よりも大切なのは「投資をしなければいけない」という呪縛から脱することです。

 今、日本企業の財務状況がピカピカなのは、バブル崩壊以降はや不動産などの変な投資をやめ、借を減らして現を増やしてきたから。個人の計も、これを見習うべきでしょう。

――ありがとうございました
(構成=小野史/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリストの荻原博子氏