すみだ水族館では11月11日の「チンアナゴの日」を記念し、11月10日11月12日の3日間、「ゆらゆらチンアナゴまつり2017」を開催します。
展示する水族館の数もずいぶん増え、今や大人気のチンアナゴですが、その詳しい生態は意外と知られていません。いったいどのような生き物なのでしょうか……?


種類で顔付きが異なるチンアナゴ
現在世界中で生息が確認されているチンアナゴの仲間は28種類。すみだ水族館では「チンアナゴ」「ニシキアナゴ」「ホワイトスポッテッドガーデンイール」の3種類が展示されています。

黒いドット模様がオシャレな「チンアナゴ」。

シマシマ模様が人気の「ニシキアナゴ」。

体の側面に並ぶ白いドットが個性的な「ホワイトスポッテッドガーデンイール」。

模様の違いが目につきやすい3種のチンアナゴですが、顔付きも種類ごとに少し異なります。「チンアナゴ科、チンアナゴ属」のチンアナゴは全体的に丸い顔をしていますが、「チンアナゴ科、シンジアナゴ属」に当たるニシキアナゴやホワイトスポッテッドガーデンイールは、口先が少しとがっているという特徴があります。

ちなみに、すみだ水族館では3種類のチンアナゴがひとつの水槽で暮らしているのですが、彼らは基本的に同じ仲間同士で集まって生活しています。自分がどの種類に当たるのかということをきちんと理解しているんですね。


ゆらゆら揺れる動きのヒミツ
砂から顔を出し、ゆらゆら揺れる動きが「癒される」と評判のチンアナゴ。この揺れる動きは彼らにとって、食べ物を探すための動きでもあり、そして異性へのアピールでもあるとされています。

ウナギアナゴの仲間は、その多くが嗅覚に頼って生活をしているため、鼻が長く発達しているのが一般的。しかしチンアナゴの場合、嗅覚にはそれほど頼ることなく、視覚情報に頼ることが多いので、鼻はそれほど発達しておらず、代わりに目が大きな顔付きに進化したのだと言われています。

視力に頼っているため、餌を探す時には周りをキョロキョロと見回す必要があります。これが揺れる動きの理由なんですね。

そんな目が良いチンアナゴですが、実は水槽の中から、外にいる人間たちの姿も見えているそうです。そのため水族館に来てから日の浅い個体は、人間を警戒してなかなか砂から顔を出しません。けれど段々慣れてくると「水槽の外の人間は危ないものではない」と理解し、まったく警戒しなくなるのだとか。

自分たちにとって危険なものとそうでないものを学習できるあたり、見かけによらず賢いのかもしれませんね。


砂に隠れた部分はどうなっているの?
「砂に埋まっている部分はどうなっているんだろう……?」水族館でチンアナゴを見たことのある方なら、きっと一度は抱く疑問ではないでしょうか。体の大部分を砂の中に隠して暮らすチンアナゴですが、根気強く観察していると、ごくまれに全身の姿を見せてくれることもあります。

その様子がこちら。

こんなに長いんです!

チンアナゴが巣穴から出て来るのは、移動するためというのが主な理由ですが、時には餌を追いかけるのに夢中になるあまり、つい全身が抜け出してしまうなんてこともあるそうです。


尻尾で穴を掘る。チンアナゴの不思議な巣作り
全身を見せるとずいぶん長いことが分かるチンアナゴですが、実はこの長い体全体のうち約3分の2は尻尾が占めています。

巣穴から出て移動したチンアナゴは、新しい場所を見つけるとこの尻尾を使って新たな巣穴を掘ります。尻尾は細胞の密度がとても高く、砂をかき分けることが出来るように硬くなっています。

新しい巣穴を掘ったあとは、顔まで穴に潜り、体から出る粘液を使って巣穴を固めます。魚の粘液は本来、生体防御のために使われることが多いですが、チンアナゴのように巣穴を固める用途に使うのは珍しいそうです。


飼育員さんの想い
「水族館でチンアナゴが飼育されるようになってから40年あまりが経ちましたが、その生態にはいまだに解明されていない部分が少なくありません。水族館での飼育下で新しい発見がされることも数多くあります。すみだ水族館では2014年に、世界ではじめて、チンアナゴの産卵を動画で撮影することに成功しました」

そう語ってくださったのは、すみだ水族館、魚類担当リーダーの柿崎さん。
「どちらかといえば『可愛い』『癒やされる』などの、キャラクター性の部分が注目されがちなチンアナゴですが、ゆらゆら揺れる行動や砂に潜る行動にも、それぞれ理由があります。そういったところに着目していただけると、これまで以上に楽しんでチンアナゴのことを見ていただけるのかなと思います」


「ゆらゆらチンアナゴまつり2017」
11月10日11月12日の3日間、すみだ水族館で開催される「ゆらゆらチンアナゴまつり2017」。

特に注目なのが11月11日に行われる「有識者の集い!チンアナゴ会議」。チンアナゴグッズの開発担当者から、ロボット工学博士に至るまで、さまざまな分野の専門家が一堂に会し、チンアナゴの魅力をさまざまな視点から掘り下げていきます。

その他、お面配布やフォトスポット、イベント期間限定のデザートメニューなども盛り沢山。デートや家族でのお出かけにもおすすめです。この機会に是非、チンアナゴに迫るひと時を過ごしてみてはいかがでしょう。
(辺川銀)