円形の交差点ラウンドアバウト」がふたつ近接するという「ダブルラウンドアバウト」が、高速道路ICと一般道の接続地点に誕生します。日本初の構造で、逆走防止にも効果があるそうです。

直進の場合も2度「回る」?

山陰地方を縦貫する高速道路として計画されている山陰道で、日本初という「ダブルラウンドアバウト」なる構造を採用したICが建設されています。島根県大田市の朝山IC(仮称、以下略)です。

そもそも「ラウンドアバウト」とは信号のない円形の交差点のことで、日本では2014年の道路交通法改正によって通行ルールが明確になり整備が本格化しました。交差点の中心に「中央島」などと呼ばれるスペース、その外周を取り囲むドーナツ型の通行路「環道」があり、そこから放射状に道路が伸びるという構造で、以下のような通行ルールがあります。

・環道へは左折で進入、環道からは左折で流出
・環道内は時計回り右回り)で進む
・環道内を走行している車が優先
・環道へは徐行で進入

朝山ICは、このラウンドアバウトがふたつ近接するという構造のようです。どのように通行し、どのような効果があるのか、国土交通省中国地方整備局 松江国道事務所に聞きました。

――朝山ICは具体的にどのような構造なのでしょうか?

高速道路本線につながるONランプ(入路)、OFFランプ(出路)と、本線をまたぐ県道を接続させる形で、本線を挟んで県道上にラウンドアバウトをふたつ設置します。このように単円のラウンドアバウトが近接する構造を「ダブルラウンドアバウト」と呼称し、日本では初めて採用されるものです。

――どのように通行するのでしょうか?

高速道路への進入、退出、そして県道を直進する場合いずれも、いったんラウンドアバウトに進入します。たとえば高速道路から出て県道を左折したい場合は、ラウンドアバウトをおよそ4分の1周、右折したい場合は、最初のラウンドアバウトを4分の3周してから高速道路本線をまたぎ、さらに次のラウンドアバウトで半周する形で通行することとなります。高速道路に入らず県道を直進する場合も、最初のラウンドアバウトで半周し、さらに次のラウンドアバウトでもう半周する形になります。

スピード抑制に効果アリ 逆走防止にも?

――なぜこの「ダブルラウンドアバウト」を採用したのでしょうか?

最も大きいのは安全対策です。ラウンドアバウトはすでに各地で導入されており、スピードが抑制され、重大事故の危険性が減るという効果が認められています。今回は、2014年の道路交通法改正でラウンドアバウトの通行ルールが整備されたことと、逆走防止対策も総合的に判断し、導入することとなりました。

――ラウンドアバウトに進入すると、そこへつながっている進入禁止の道、つまり「逆走」となってしまう道にも容易に入れてしまうような気がしますが、なぜ逆走防止に効果があるのでしょうか?

それぞれの道からラウンドアバウトへは、まっすぐではなく角度を付けて接続しており、たとえばラウンドアバウトから進入禁止路へ左折しようとする場合、かなり鋭角にハンドルを切らないと入れない構造になっています。

たとえばこのICがダブルラウンドアバウトではなく「H」型の平面交差点(縦棒がランプウェイ、横棒が県道)だったとしましょう。県道から高速道路へ右折で進入する場合、高速道路本線を越えた先で右折してONランプへ進入する形になりますが、本線の手前の右折路、つまり進入禁止のOFFランプへ間違って入ってしまうという懸念が、住民の方からも聞かれました。必ず左折で進入し、目的の道へ左折で出ていくラウンドアバウトであれば、そのような懸念も解消されると考えています。

――「ダブル」ではなく単円のラウンドアバウトにしなかったのはなぜでしょうか?

単円の場合、高速道路をまたぐ箇所にラウンドアバウトを建設することとなり、構造物を大きくしなければならず、それぞれの道路線形も大きく曲げる形で接続させることとなります。このため、高速道路上下線の両脇にそれぞれラウンドアバウトを設けるような形になりました。

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松江国道事務所によると、新東名高速で建設中の新磐田スマートIC静岡県磐田市)にも単円のラウンドアバウトが導入される予定だといいますが、「ダブル」は現在のところ朝山ICのみだそうです。

この朝山ICを含む山陰道 朝山IC~大田IC間6.3kmは、2017年度中の開通が予定されています。朝山ICに接続する県道そのものはすでに存在しますが、今後、ダブルラウンドアバウトの設置工事を行っていくそうです。

【画像】ラウンドアバウトの通行方法

ダブルラウンドアバウトが導入される山陰道 朝山ICのイメージ(画像:松江国道事務所)。