世界遺産の「大聖堂」がそびえるケルン。夏でも冬でも晴れても雪でも、世界各国からの観光客でごった返すケルン。そんなケルンに、新たなアトラクションがまたひとつ仲間入りです。その名も「ブラインド ウォーク」。本来ならば、名所見物には「目を皿のようにする」はずのところを、あえて「目隠しする」という逆転発想から生まれた、聴覚と嗅覚で観光する、ユニークなスタイルです。

まずは、「ブラインド ウォーク」の集合地点で、観光ガイドさんと待ち合わせ。ガイドさんは、参加客ひとりひとりに、アイマスクリュックサック、イヤホンを配ってくれます。イヤホンからは、常時ガイドさんの説明が流れてくる仕組みでひと安心。所持品を入れられるリュックサックの外側には、ツアー客同士が「ひしっ」とつかまって歩くための取っ手がついている構造です。
そして、いよいよ最後に配られるアイマスクを装着すると、ひと筋さえも日光が入り込まず、目の前は100%の真っ暗闇。「真っ暗」「真っ黒」のことを、ドイツ語では「カラスのような闇(黒)」といいますが、目の前はまさにカラス色一色。なお、アイマスクは立体構造になっているため、マスクをつけていてもまばたきは可能です。

こうして準備が整ったら、ツアーに出発。ケルン中央駅、大聖堂、ローマ ゲルマン博物館、ホーエンツォレルン橋、ライン川、ルードヴィヒ美術館など定番の観光ポイントを巡るわけですが、何せ一寸先は闇の中。ツアー参加者が、互いのリュックサックの取っ手だけを頼りに歩く姿は、周囲からの注目度も大。アイマスクをつけて市内を練り歩く姿そのものが、新たな観光名物になっている感もあります。もっとも、参加者本人はそんな熱い視線を感じる余裕もなく、目の前の一歩一歩に全力投球ですが。

所要時間おそよ2~2.5時間の「ブラインド ウォーク」のしめくくりは、青空の下でのピクニック。季節のフルーツや焼きたてパンに舌鼓を打ちながら、参加者同士が自己紹介をしたり、ツアーの感想などを語り合うひとときです。といっても、アイマスクはつけたまま。頭上に広がる青空も、お互いの顔も見えないままですが、聴覚と嗅覚を澄ませてみると、見えないはずのものも、見えてくるような気が……。

「ブラインド ウォーク」は原則土日の午後のみ開催で、少人数で行うツアーのため、事前申し込み制です。目下のところ、使用言語はドイツ語のみ。6名以上のグループなら、希望の日時にガイドしてもらえるそうですので、事前にご相談を。
(柴山香)

ケルン市内を歩くブラインド ウォークのツアー客。「進行方向右側に見える(はずな)のが、ケルン中央駅です!」と、先頭のガイドさん。 写真提供:Blindwalk Koeln