
冬が深まるとテレビのニュースなどで「小学校でノロウイルスが流行し……」といったニュースを見かけることが多くなりますよね。感染すると下痢や嘔吐の症状を引き起こすノロウイルスやロタウイルスなどの感染性胃腸炎。実はどちらも流行る時期やかかる年齢、感染経路が異なります。今回はこれらの違いや治療法についてまとめました。
この記事の監修ドクター
向洋こどもクリニック 梶梅 輝之先生
子どもの病気の診療や予防はもちろんのこと、心身の健全な発達を支援し、ご家族の皆様と子どもの成長をともに喜び合えるクリニックにして行きたいと考えています。
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ノロウイルスもロタウイルスも一年中感染する可能性はありますが、例年ノロウイルスは11月から2月にかけての冬の時期、ロタウイルスは3月から5月にかけての春の時期に蔓延します。
ノロウイルスが落ち着いたと思ったら次はロタウイルスの流行シーズンへと移り変わる形となるので、小さいお子さんを持つママはこのシーズン、幼稚園や学校で流行したらどうしようとヒヤヒヤするかもしれませんね……。
かかる年齢も違う?ノロウイルスはすべての年齢層が感染しやすいのに反して、ロタウイルスは0歳〜2歳を中心に乳幼児に多く発症します。
もちろん、ロタウイルスが大人に感染するケースもありますが、ロタウイルス感染を発症すると脱水症状など重症化しやすい乳幼児に比べて、大人は症状が軽いことが多く、数日で倦怠感や吐き気、腹痛などは治ります。
ノロウイルスとロタウイルスの原因と感染経路ノロウイルスもロタウイルスも基本はどちらも経口感染であることがほとんどですが、感染経路に微妙な違いがあります。ロタウイルスはロタウイルス感染患者の吐しゃ物や便、食べ残しなどウイルスを含んだ物に触れてしまったことでの感染が多いですが、ノロウイルスの場合それ以外に、ウイルスに汚染した貝などの食品を通してヒトに感染することがあります。
またどちらも乾燥するとウイルスが空中に舞ってしまうため空気と一緒に口から体内に入り、その結果感染・発症することがあります。
感染期間の違いは?どっちが治りやすい?ノロウイルスの場合、症状は感染患者によって個人差がありますが、吐き気から始まり、下痢・発熱などが1〜2日続きます。また、後遺症もありません。
一方ロタウイルスは、嘔吐で始まり、発熱や腹痛を起こした後、下痢が始まります。この時の便の色が白く水っぽいのがロタウイルスの特徴です。また発熱自体は半日〜1日程度、2日もすればほぼ治りますが、ノロウイルスに比較して発熱の頻度が高く、重症度が高いことが多いと言われています
潜伏期間や生存条件も違う?どっちが怖い?ノロウイルスの潜伏期間が24時間〜48時間なのに対し、ロタウイルスの潜伏期間は24時間〜72時間と、ノロウイルスよりもロタウイルスの方が少し長めなのが特徴です。
ロタウイルスは感染した環境の中でも安定した状態で長くいることができ、感染力が非常に強いためどんなに気を配っていてもなかなか感染を防ぐことは難しいと言われており、実際5歳になるまでに一度は発症する子どもがほとんどです。
一方、ノロウイルスは、低温下の水中や乾燥状態でも2週間以上生存すると考えられています。また、ノロウイルスに汚染されやすい二枚貝などの食品は中心部を85〜90℃の熱で90秒間以上加熱するようにしましょう。
ノロウイルスとロタウイルスの症状ノロウイルスの場合、嘔吐の症状はいきなりくることが多く、それまでなんともなかったのに突然の吐き気を催してしまうといったケースがよくあると聞きます。
繰り返し何度も吐いてしまうことも少なくないですが、吐き気がおさまったあとに発熱や下痢などの症状が始まりますが、2日程度でおさまります。一方ロタウイルスは3~6回程度、嘔吐しまいますが2日も経てば症状は落ち着きます。しかし、下痢の症状は一週間程度続くことが多いようです。
ノロは微熱、ロタは高熱?発熱時の違いノロウイルスとロタウイルス、どちらも感染症状として発熱を起こしてしまいますが、ノロウイルスは発熱の頻度は低いのに対し、ロタウイルスは38度以上の高熱を発するので注意が必要です。ノロウイルスは発熱よりも、下痢・吐き気・嘔吐が主症状と言われています。
どっちも危険!脱水症状どちらも嘔吐・下痢を引き起こしてしまうため、脱水症状には注意が必要です。こまめに水分補給を行い、イオン飲料や経口補水液などの水分を補う様にしましょう。脱水症状を起こしてしまった際は病院で点滴治療などを行います。
ノロウイルスとロタウイルスの検査と治療法それぞれの検査についてですが、ノロウイルスに関しては大きく二つあり、ひとつは検査キットを使う方法。そしてより正確に詳しく検査するため、検査キットより費用は高額となりますがリアルタイムPCR法・電子顕微鏡・RT‐PCR法といった手法で検査を行う方法があります。しかし研究用で行われるので保険適応もなく、ほとんどの医療機関では検査できず一般的な検査ではありません。
また、ロタウイルスも検査キットによる検査が一般的です。気になる費用面ですが、残念ながらロタウイルスは保険適用ができますが、ノロウイルスに関しての検査には2歳未満の患者しか保険が適用できません。保険適応外の費用は病院によって大きく違いがありますが、規則では保険と保険外の混合診療は認められていないので、保険適応内だったすべての医療行為が10割の負担で高額な請求されることになります。
検査キットによる診断は正確?前述したように、ロタウイルス・ノロウイルスの診察の現場で用いられる検査キットですが、15分〜30分程度で調べることができ即効性が高いのがメリットですが、検査のタイミングなどによって感染していても陽性反応が出ない場合もあり、100%正確ではないことがデメリットです。
どっちも特効薬はない?それぞれの対策治療とはロタウイルスもノロウイルスも、残念ながら抗ウイルス剤は存在しません。そのため、対症療法での治療になります。基本的に脱水症状に陥らないための水分・栄養補給がベースですが、嘔吐や吐き気がひどく、水分さえも喉が通らない場合は病院での点滴が必要となる場合があのます。
感染中・治療中の食事や出席停止日数は同じ?嘔吐や吐き気、下痢など症状がひどく、食事もままならない場合は、1日〜2日程度なら無理に食事をとらなくても問題ありません。嘔吐の症状がなくなり、体が少し回復してきたら、おかゆやうどんなど、消化によく食べやすいものから始めましょう。
乳幼児の場合も同様、おかゆやバナナ、すりおろしたりんごなどがおすすめです。また、ロタウイルスやノロウイルスに感染した場合の出席停止日数ですが、どちらも学校保険安全法に基づき、病状が回復したから登園・登校するようにと定められています。しかし、法的に日数が定められているわけではないため、通っている園や学校に規定を確認するようにしましょう。
ノロウイルスとロタウイルスの予防と対策ノロウイルスとロタウイルスはどちらも感染経路は経口感染。そのため、日々の手洗い・消毒が予防に欠かせません。万が一感染してしまった場合、二次感染を防ぐ意味でも重要となってきます。石鹸をしっかり泡立て爪の中まで念入りに洗うようにしましょう。調理器具、おもちゃ、衣類、タオル等は85度以上の熱湯で1分以上加熱すると、ウイルス死滅には効果的であると考えられています。
再感染と予防対策、ノロとロタ、症状の重さが違う?ノロウイルスもロタウイルスも一度感染すると免疫がつきますが、だからといって再感染しないとは限りません。ノロウイルスに関しては種類が多く、一度感染して免疫がついていたとしても、種類が違えばまた感染してしまうため、ワンシーズンに二回も感染した、という人も少なくありません。
また、乳幼児に多く、重症化しやすいことで知られているロタウイルスですが、二度目の感染の場合だと、重症化する可能性は低いのが一般的です。
ワクチンや予防接種は?ロタにはあってノロにはないの?ロタウイルスには任意接種となりますが、予防接接種を接種することができます。種類は二つありますが、ロタウイルスを弱毒化したワクチンで生後6週以降に打つことができ、生後32週に到達する頃にはどちらも接種が終わっています。
しかし、ノロウイルスには予防接種がないため、手洗い・食材の熱湯消毒など、日々の日常的な予防が大切となってきます。
まとめロタウイルスもノロウイルスも、発症すると下痢・嘔吐・発熱を繰り返すため、ママにとっては看病も大変な病気ですよね。特に初めての感染だと、焦ってしまうことも多いかと思いますが、適切な対策療法を行っていれば症状は治まります。
小児科の指示を仰ぎながら、経過を見守るようにしましょう。

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