日本の晩秋、ゆるキャラの晩秋! というわけで、きのう・きょうと埼玉県羽生市では、毎年恒例の「世界キャラクターさみっとin羽生」が開催されている。

先週末の11月18日と19日には、三重県桑名市のナガシマリゾートの特設会場にて「ゆるキャラグランプリ2017 in 三重桑名・ナガシマリゾート」が開催された。今年のグランプリでは、三重のお隣・愛知県知立市の「ちりゅっぴ」と、千葉県成田市の「うなりくん」が、インターネット投票で接戦を繰り広げ、最終的にうなりくんが見事1位に輝いた。ちりゅっぴも、会場での決戦投票締め切りの19日午後1時まで、会場にて最後まで熱心にPRし、来場者の声援を集めていた。

私は19日に会場を訪れたのだが、11月ってこんなに寒かっただろうかと思わせる気温、また突然雨が降ってくるあいにくの天候だった。きっと、会場に集まったゆるキャラたちには人間以上に厳しいコンディションだったに違いない(実際、応急処置として雨除けのビニールを足に穿いたり、体にまとったキャラたちも見られた)。それでもキャラたちは、写真撮影などを求めてくる来場者に快く応じていた。そんな彼らの頑張りに対する天からのご褒美か、表彰式が始まるころには晴れ間が出てきて、各賞の発表直前には空に大きな虹までかかる。まさに祝福と呼ぶにふさわしい、偶然の演出だった。

人気のゆるキャラほど「よく動く」
この日、会場内のステージでは表彰式を前に、各地のキャラのPRタイムが設けられたほか、過去のグランプリで入賞した熊本県の「くまモン」や埼玉県深谷市の「ふっかちゃん」など歴代のレジェンドキャラたちがあいついで登場した。それを見ていて思ったのは、知名度の高いキャラほど「よく動くな!」ということだ。くまモンなど、観客にまんべんなくあいさつするため、ステージを右へ左へと走り回っていた。

表彰式のオープニングアクトでも、青森県黒石市のご当地キャラである「にゃんごすたー」が、X JAPANの楽曲「紅」にあわせて、Yoshikiばりの激しいドラム演奏を披露した。演奏する姿を撮った動画がウェブ上に投稿されて一躍人気を集めたにゃんごすたーだが、昨年1年間は音楽活動に専念するため活動を休止(!)している。復帰後、さらにドラムテクに磨きがかかったようだ。

ちなみににゃんごすたーの正体は“リンゴの実に生まれ変わった猫”であり、その名はビートルズの名ドラマーリンゴ・スターあやかったもの。ただ、最近、一文字違いのお笑いコンビが現れたため、少しややこしいことになっているとか。

その一文字違いのコンビのネタが、ゆるキャラ界隈ではちょっとしたブームになっているらしい。レジェンドとして登場した愛媛県のみきゃんステージでは、“ダークきゃん”なるキャラを相方に「わんこスター」(犬なので)を名乗り、縄跳びを使ったあのコントを完コピしていた。また、あのコントの影響なのか、ステージ外でも、縄跳びや長縄跳びにチャレンジするキャラたちが会場のあちこちで見られた。

ともあれ、グランプリ会場に集まった各地のキャラたちは本当によく動いていた。この「よく動く」ということこそ、最近のゆるキャラに欠かせない条件なのかもしれない。

ここで言う「よく動く」には、ステージ上などを動き回ることだけでなく、PRのため地元以外のよその土地へも盛んに足を運ぶフットワークの軽さも含まれる。くまモンなど、積極的に外に出てPR活動を行なうことでブレイクしたキャラだ。

グランプリ開始とくまモンゆるキャラの意味を変えた
かつて地方の振興策として、ホール美術館など、いわゆる箱モノの建設がブームとなった時代があった。しかしその手の箱モノのなかには、立派な設備に対し、中での催しがともなわないものも少なからずあり、批判の対象にもなった。さらにバブルの崩壊を境に、全国で自治体の財政が厳しさを増すなかで、そうした箱モノの維持は負担となっていく。

ゆるキャラブームはこうした流れのなかで起こった。ゆるキャラは財源の乏しい地方にとって、地域振興の救世主であったともいえる。何しろキャラは箱モノよりも少ない予算でつくれて維持もできる上、移動することも可能だ。ある種のご当地キャラみうらじゅんが「ゆるキャラ」と名づけたのは、そういうお手軽さに「ゆるさ」を見出したからだろう。

だが、やがてご当地キャラのなかには、第一線のクリエイターが手がけ、けっして「ゆるい」とは言えないものも現れるようになった。くまモンはこの点でも代表格だ。

そのくまモンは、2011年ゆるキャラグランプリで優勝している。言うまでもなく、東日本大震災のあった年であり、くまモン被災地で子供たちを喜ばせることに力を入れ、ご当地キャラの枠を超える存在となっていた。

ゆるキャラグランプリは、くまモンが優勝してから今回で7回目の開催を数えた。表彰式の締めくくりのあいさつで、ゆるキャラグランプリ実行委員会の西秀一郎会長は、かつてを振り返り、こんなことを述べていた。

2011年のことを時々思い出すことがあるんですが、東日本大震災があって、その年にくまモングランプリになって、そしてみんなが地域、絆、大切だなと思ったのが、このゆるキャラグランプリの出発点です。だから『ゆるキャラでふるさとを元気に』っていう思いを持った仲間たちのイベントだというふうに僕たちはいつも思っています。ですから、ゆるキャラグランプリで順位が悪くても、全然有名なゆるキャラさん、たくさんいます。地方で頑張ってるゆるキャラさん、たくさんおります。なので、あんまり順位に一喜一憂せず、みんなでふるさとをよくしていこうと、そのなかで気づいたこと、アイデア、創造力、愛情、情熱、これを地域創生に活かせると、私たちは信じています」

ゆるキャラグランプリが始まり、その最初の回でくまモンが優勝したことで、ゆるキャラの意味は変わったともいえるかもしれない。これをきっかけに、地元どうしの結びつきを深めることもキャラたちの重要な任務となったのだ。

「終了検討」発言は一つの提案ではないか
かしここへ来て、西会長が、ゆるキャラグランプリ2020年を目処に終了を検討していることをあきらかにしたと時事通信社が報じた。今回のグランプリ閉幕直後のことだ。その理由について会長は、《ゆるキャラで地方を元気にと思ってやってきたが、自治体の人がやればいいことだと思う》と説明し、《20年くらいで終わりにしたい。グランプリを続ける、続けないはみんながもっと考えてくれるといい》と語ったという(「時事ドットコムニュース」2017年11月19日)。

2020年は、ゆるキャラグランプリにとっては10回目という節目を迎える年だ。今回の会長の発言は、ひとまず10回目までは実行委員会が旗振り役を務めるとして、その後のグランプリのあり方は、続けるか否かも含め、参加する自治体や各団体がみんなで考えて決めようと議論を促すための提案だろう。少なくとも私はそう解釈した。

もちろん、ゆるキャラグランプリの存続を願う人は多いはずだ。今後も続けていくために、ゆるキャラ関係者だけでなく、キャラたちに楽しませてもらっている私たちにも何かできることはないのか。そうしたこともあわせ、議論が広がればいいなと思う。
(近藤正高)

表彰式のあと、互いに健闘を讃え合う「うなりくん」(左)と「ちりゅっぴ」