12月1日に公開となった映画『鋼の錬金術師』(実写版)、通称「ハガレン」。

もともと人気漫画の実写化は何かと叩かれがちだが、なかでも熱烈的なファンや“信者”の多い同作の場合、実写化が発表された段階から、「絶対認めない!」「日本人がやるなんてありえない!」「イメージと違う」など、批判が殺到していた。

さらに、原作者・荒川弘が映画版のストーリーに続く新作エピソードを描き上げた「鋼の錬金術師0[ゼロ]」が第1弾入場者特典として配布されることが発表されると、批判が殺到。
試写会後にも、「胸糞悪い」「クソ映画」などの酷評が続出。おまけに、「Yahoo!映画」のレビューに、不自然な日本語で高評価のレビューが多数書き込まれたことから、「サクラ」疑惑まで持ち上がっていた。

……とここまでは、全て公開前の話。

しかし、いざ映画が公開されてみると、それまでバッシング一辺倒だった論調が一変、意見が真っ二つに分かれてきている。
それどころか、意外に多いのが「酷いと聞いてたけど、ふつうに良い映画」「映画としては意外とよくできてる」という声。


Twitter上の声を拾ってみよう。

まずは公開初日、「ハガレン」のベストツイートとして長時間挙がっていたのが、このコメントだ。

映画としては普通に面白い
ハガレン実写という真理の扉から生還してきました。とりあえず…全然観れる映画じゃねえか!!むしろ頑張ってて面白いつまんないで言うと面白い寄りの映画じゃねーか!!!!誰だよクソ映画っつったの!!!!!!!」
「そう、映画としては普通におもしろかったんだよ…ハガレン
「案外まとまってる」
ハガレン映画は見に行ってよかった、わりと面白かった」
「面白かった」という声のほか、多かったのは「原作と別モノとして観れば楽しめる」という声だ。


世間の声がとりあえず気になる派
また、そうした世間の声により、風向きが変わってくると、にわかに気になり始める人、それも踏まえてやはり「認めない」宣言をする人もいる。
「なんかハガレンの評判が予想してたのとはちょっと違う方向になってるのでそれはそれで興味を引かれるからとりあえず今日観てこよう」
ハガレン実写、人によって酷評してんのとそんなに悪くなかった派に分かれてるみたいだしやっぱ観に行こうかなあ相性の問題だろうけども」
「映画ハガレンの評価が周囲で真っ二つに分かれている。楽しみでもあり怖くもある」
ハガレン実写の感想を色々見てると総合するに『キャラに思い入れある人は辛い』『CGの出来はめっちゃイイ』に大別されるので、デビルマンを定価で見に行った私なら耐えられるかもしれない」
ハガレン見た方の感想見てると『原作を知らなければ』ってワードがすごく出てくる(笑)確かにそれはあるだろうなー、と思う。でも原作の人気に肖って作られたからこそ、そこまで話題作になって注目されたという一面があるわけでね。難しいね。等価交換だよね、まさに。」
「『そこまで言われるほどの出来じゃない、見る前からこき下ろすな』っていうハガレン実写擁護勢がいますが、無理ですよ。私たちは実写化の出来が悪いことに怒っているのではなく、実写化されたこと自体に怒っているんですから。それからもちろん制作側の態度にもね」


「あえての~」「逆に~」派
「怖いもの見たさにハガレン実写見に行きたさある」
ハガレンはさ なんか一周回って見てみたいの私だけ??」
ハガレン感想声出して笑ったwww原作ファンやから見たら死ぬかなっておもってるけどあえて見に行きたいわwww」
「くはははは!!来たぜ映画館!見るぜ地獄!!聞くぜ阿鼻叫喚の絶叫の嵐!!待ってろ実写鋼の錬金術師!!!!」
ハガレン実写、行くもんかと思ってたけど、0巻欲しいし説明できない突っ込みたい症候群にとりつかれたみたいで、月曜あたりのレイトショーに行こうか考え中。」
「はーーーー今日ハガレン見るけどウィンリィがどうしても受け入れられなくてこれを乗り越えなきゃ2時間半耐えられないだろうからウィンリィを受け入れようとショック療法かましてる」
「あえて~」「逆に~」とツッコミ目的で見たがる人たちは、SNS時代ならでは。

ちょこちょこ見かけるワードとして気になるのは「耐える」という言葉。
しかも、「原作知らない自分なら、まだ耐えられるかな」といった、最初から何と戦っているのかわからないコメントもチラホラ。


「観ない」ことをとにかく言いたい派
「特典欲しさにハガレン映画行くけど、途中で抜ける気満々だし」
「誰か1800円あげるから、0巻下さい」
ハガレンの実写化の映画は見ない絶対」
など、「観ない」ことを声高に宣言する人たちも。ただ、さすがに途中で立つ気で行く人って、周りに迷惑な気が……。

大好きな作品が映像化されることについては、愛が深ければ深いほど、いろいろ言いたくなる気持ちはよくわかる。
また、これは漫画実写化の話に限らず、小説でも、昔からよくあることだ。
かく言う自分も、ミステリー好きの子どもだった頃には「エルキュール・ポワロポアロ)はデビッド・スーシェしか認めない!」とか「ホームズはジェレミー・ブレッドじゃないと!」とか、「金田一耕助石坂浩二じゃないとダメなのに、『八つ墓村』は古谷一行ですらなく、なんで寅さんなんだよ!」なんて鼻息荒く語ったものだ。
でも、40代になった今、しみじみ思うのは、「自分の子どもの頃にSNSがなくて助かった」ということ。そして、「あの熱い語りを延々聞かせてしまったのが、身内と身のまわりの友人だけで良かった」と心底思う。

ともあれ、観た人も観ていない人も、観ないつもりの人も、とりあえず何か言いたくなるハガレン実写版
人気原作の力を改めて痛感させられるのだった。
(田幸和歌子)

第1弾入場者特典として配布された「鋼の錬金術師0」。