クラシカル・クロスオーバーのテノールトリオ、IL VOLO(イル・ヴォーロ)の初来日公演【Notte Magica~魅惑の夜~】が、12月1日にカルッツかわさきで開催されライブレポートが到着した。

イル・ヴォーロ初来日公演 写真(全7枚)

 プログラムは、昨年イタリアのフィレンツェでプラシドドミンゴと共演した【3大テノールに捧げるコンサート】でのクラシカルな曲を軸に、カンツォーネミュージカル曲、オリジナルなど、計20曲余り。クラシカルナンバーには、かつてドミンゴルチアーノ・パヴァロッティ、ホセ・カレーラスが【3大テノールコンサート】で歌った曲も盛り込まれ、全曲オーケストラをバックに歌い上げた。

 歌唱は、個々の特長を生かして、ソロあり、デュオあり、トリオあり。オープニングは、オペラトゥーランドット』のアリア「誰も寝てはならぬ」で、ジャンルカ・ジノーブレが甘くムーディーな声で歌い始め、ピエロ・バローネがハイトーン域を美しく響かせると、すでに観衆はうっとり。イニャツィオ・ボスケットは、名シーンが浮かび上がるかのような歌唱でホールを包み込み、3人で高らかにフィニッシュすると、とても1曲目とは思えない盛り上がりに。

 歌だけでなく、笑い満載のトークも快調。にこやかにアイコンタクトを交わして、「パヴァロッティ……、カレーラス……、ドミンゴ……、に捧げるコンサートにようこそ」と、自分たちを3大テノールの面々に見せかけた絶妙のフェイントで、観客のハートを最初からしっかりゲット。そんなユーモアに富んだ軽妙な会話が、ムードメーカーのイニャツィオを中心に展開する。陰マイクで日本語に同時通訳されてテンポよく進むので、客席は笑顔が絶えない。

 しかし音楽が始まると、3人とも瞬時に大人のクラシカルな歌手の顔になり、個性を発揮しながら歌う。ジャンルカは、レオンカヴァッロの「朝の歌」やロッシーニの「踊り」、ロドリーゴの「アランフェス」などで、彼特有のロマンチックでスィートな魅力を全開。ステージに詰めかけるファンから、抱えきれないほどの花束プレゼントが続いた。

 イニャツィオは、パヴァロッティの十八番だったオペラ『愛の妙薬』の「人知れぬ涙」を熱唱。また、ミュージカルウエストサイド物語』の「トゥナイト」を天性の明るさでおおらかに表現するなど、聴き手の心を晴れやかなパワーで満たして大喝采に。

 ピエロはすでにオペラ歌手の風格で、カレーラスの得意な「グラナダ」では、曲中のロングトーンで拍手が起きたほど。ドミンゴの真骨頂「トスカ」の『人知れぬ涙』やフランク・シナトラの大ヒット曲「マイ・ウェイ」もスケール感たっぷりで、ソロサバルの「ありえない」を、どこまでも伸びる高声で朗々と歌うとホール全体が響き続けて、客席では暫く拍手が鳴り止まず。ジャンルカとイニャツィオもピエロを拍手で讃え、3人のその様子に胸打たれて、さらに観客の拍手が続く。

 また、今年5月にローマ法王の前で披露したオリジナル「アヴェ・マリア」では、ジャンルカが「カトリック信者の一人としてとても感激しました。CDに録音してフランチェスコ法王にプレゼントしました」と思い出を語ったり、イニャツィオが「日本で本物の寿司のおいしさにビックリしました」などと日本の感想を話したりして、常に和やかムード。

 とても20代前半のテノールトリオとは思えないステージ運びで「日本の女性はエレガントですね」とリップサービスもなかなか。イニャツィオが「忘れられない思い出がたくさんできました。僕たちは明日、日本を後にしますが、また来年帰ってきたいです!」と締めくくり、オペラ『椿姫』の「乾杯の歌」で、客席の手拍子とともに賑やかに盛り上がってのエンディングとなった。

 アンコールで、ヒット曲「グランデ・アモーレ」を歌い終わると、客席はスタンディングオベーションに。あちこちから「ブラボー!」が飛び交い、ステージのエプロンには握手を求めるファンが「素晴らしかった」「来年、必ず来てね!」と大勢詰めかけ、2時間のステージは幕を下ろした。