CG黎明期の1989年からCGアニメコンテストを開催しているDoGA。長年、自主制作のCGアニメ作品の振興に努めてきた団体である。そのCGアニメコンテストのグランプリや入賞者には、『君の名は。』の新海誠監督をはじめ、『びじゅチューン!』のクリエイター 井上涼 氏、『イヴの時間』や最近では日本アニメ(--ター)見本市での『パトレイバー REBOOT』の記憶も新しい吉浦康裕監督、『けものフレンズ』のたつき監督irodori)など、そうそうたる面々となっている。

 KYOTO CMEXの一環としてDoGAが開催した国対抗のインディーアニメ団体戦 CGアニカップ2017が9月18日に行われ、日本と韓国のクリエイター達が一堂に会し対戦した。編集部ではCGアニカップ後のDoGA代表の鎌田優氏へ現在の自主制作アニメについてのインタビューを敢行。黎明期からネットの普及を経て、スマホネイティブが受け手の主流となりつつある現在までを知る鎌田氏に自主制作CGアニメにかける想いを伺った。

取材・文:サイトウタカシ

【予告】明日6日(水)には、CGアニカップに出場した日韓のクリエイター達が、日韓の表現の違いから自主制作アニメにかける想いまで語った座談会の記事を公開いたします。乞うご期待!

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新海誠 監督、たつき監督らを輩出したCGアニメコンテスト

──まず、昨年からの自主制作CGアニメ出身の方の活躍がめざましく、世の中の注目を集めていると思いますが、鎌田さんはどう思っていらっしゃいますか?

DoGA代表 鎌田優 氏(以下、鎌田):
 まず昨2016年は『君の名は。』の新海監督が、大ヒットして、今年の頭は『けものフレンズ』のたつき監督が、また大ヒットして、どちらもCGアニメコンテスト出身のクリエイターの方が、僕、アニメ界を席巻したと思うんですけれども。その前の年は、NHKの『びじゅチューン!』の井上涼さんも活躍され、大人気です。
 最初の前提として、我々が1985年DoGAを作り、CGアニメ始めた30数年前、その当時と現在では全然違うし、ずっと続けている立場としては「何を今更」という感はあるんです。

──多分、『君の名は。』から知った方達からすると、突然出てきたかのように見えてるのではないかと思います

鎌田:
 新海さん、井上涼さん、その前は『サカサマのパテマ』の吉浦康裕さんが大ヒットしてるように、毎年のように大ヒットしてる人は出てきています。確かに今年去年とそのヒットの規模が全然違うなというのは確かにあります。
 そしてCGアニメコンテストの出身の方々が何故活躍しているのかという問いに対しては、それを私が言ってはお終いという気がするので、あまり言いたくはないですけど、CGアニメコンテスト出身のクリエイターが活躍しているというよりは、CGアニメコンテストでは活躍しそうな人たちを入選させているんです。

──そうなるように考えて、選んでいると

鎌田:
 来年でCGアニメコンテストが30周年、30年やっていて、他のコンテストも含めて今まで審査した自主制作アニメが1万本を超えています。1万本を超えるアニメを作品を審査して、毎年、「あの人、物凄く伸びたよな」とか、「ああ、あの人期待してたのにイマイチその後話しを聞かないよね」とか、「あの人、もっと入選させるべきだった」というのを毎年ずーっと考えているので、やっぱり、こういう人はその後伸びるというのがなんとなく判ってきたんです。今日もアニカップの壇上で「若井麻奈美さんは天才だ」と、「この人は活躍するから、是非、この作品を覚えておいてください」と言ったように、そういう人たちを集めているというのはあります。

新海監督が自主制作CGアニメの黎明期を終わらせた

──そうした皆さんのご活躍の半面、現在の自主制作アニメ界が盛り上がりに欠けているというお話もあるそうですが、とりあえず現状がどうなっているのか?というところからご説明頂ければ

鎌田:
 CGアニメコンテスト自体が盛り上がった時っていうのは、今までの30年間で、2回盛り上がった時があります。1回目は『ワイバーン』の青山さんと『リューセイバー』の渡辺さんが活躍された時です。

鎌田:
 お二人とも3DソフトのLightWaveを使っているクリエイターさんです。だからあれを見て「LightWaveを購入すれば、自分にもこんなすごいアニメが作れるんだ!」と思った層から、物凄く応募がありました。
 もう1つの曲がり角が新海監督の『ほしのこえ』ですね。あれで自主制作のCGアニメが、みんなに知れ渡って、「俺もこんな作品が作りたい!」「新海さんという人が一人でこんなのが作れるのだったら、俺にも何か作れるんじゃないか?」と、あの頃『ほしのこえ』とか、『彼女と彼女の猫』の作風を真似た作品がどっと応募されて、審査する方も......

──うんざりしてしまいますね......

鎌田:
 両方共に共通する点は、あれらの作品・入選作を見て、「私にも作れるんじゃないか?」とみんなが思った。結果的には、殆どが誤解だったのですが...... でも、今、新海さんの作品を見ても、『けものフレンズ』を見ても、あれを作ろうとはしないでしょう。最早、自分達で作ろうと思うのではなくて、あくまでも私たちは見る側、作る人たちは別と完全に分けて考えているのを感じます。

──今では、「自分もできるかも!?」と思える技術的なブレイクスルーは見えてこないのかなと思います

鎌田:
 そうですよね、『君の名は。』には別にブレイクスルーはないですよね。『ほしのこえ』の頃はまだ、自主制作のCGアニメが知られてなくて、パソコンでこういうものが作れるということ=パソコンCGアニメ自体がブレイクスルーの技術だったと思うんです。

──CGアニメが珍しいという時代はもう終わってしまったのでしょうか?

鎌田:
 その質問については、もう完全に終わりました。もう15年くらい前に終わっています。新海さんが出たことによって自主制作のCGアニメが広まって、それで皆が珍しいと飛びついて、やっぱり普通の人には作れないんだと諦めてしまった。そこで1つの時代が終わったと思うんです。実際、新海さんが『彼女と彼女の猫』でグランプリを獲られた第12回のCGアニメコンテストの上映発表会の場で、私が「この作品をもって自主制作アニメの黎明期は終わりました。」とハッキリ言いました。新海さんが出て、個人制作のCGアニメというジャンルを確立して1つの時代が終わりました。

──確立されると共に最初のブームは終わったと

鎌田:
 そうです。だからその時点で、作れる、作りたいという人は作るけども、大部分の人たちは今はもう見る方に移ってしまって、自分たちで作ろうという気はイマイチ感じられないですね。

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