プロ生活20シーズンを戦い終えた加地11月25日に現役引退を発表してから、ファジアーノ岡山練習拠点である政田サッカー場には連日多くのファンが詰めかけた。今年の練習最終日となった12月3日には500人をえるファンが集まった中、加地は練習後にチームメイトから胴上げされて送り出されると、ファンの一人ひとりと丁寧に言葉を交わしていく。加地と岡山幸せな関係にあったことを示す最後の一日だった。

 2006 FIFAワールドカップ ドイツピッチにも立った“世代”の一人である加地が岡山に来る! それは岡山に関わるすべての人々にとって大きなニュースだった。元日本代表の岩政大も同時に加入した2015年、「テレビで見ていた選手が来た」とチームメイトを丸くする中、先頭に立ってチームを牽引する岩政とは違った形で加地はチームメイトに大きな影を及ぼしていった。

 一緒に岡山へ加入して3年間を過ごした伊藤大介はこう振り返る。「加地さんはいろんな経験をされてすごいレベルの高いところで戦ってきた選手なのに、ぜんぜん驕ることなくたち選手と接してくれて、(岩政)大さんとはまた違う形で決して率先してとかを出すわけじゃないけど、加地さんから伝わるものはすごくあった。はそういう姿がすごくカッコいいなと思いました」

 すぐにチームメイトに慕われていつしか「あっくん」と呼ばれるようになった加地の人間性に、チームメイトは惹きつけられた。「加地さんは分かりやすく時には笑いを交えながらツボを突いたことを言ってくれる。グッと引き寄せられるがあった」(澤口)。「ちょっと悩んでいるようなときに加地さんはタイミングよくを掛けてくれる。加地さんはたちの拠り所になってくれていました」(伊藤)。チームメイトにとって加地は理想の上司のような存在だった。

 そして、加地は「本当のプロフェッショナル」(長澤監督)である。練習前の入念な準備や練習後のケアをはじめ、自己管理を徹底して選手生活を送る加地の姿が、チームメイトに刺を与えなかったわけがない。

 クラブハウスにはよりもく加地が来ていた。二番に来ることが多かった篠原次郎は、「毎っ暗なうちに練習場に来て、風呂で加地さんに会って『おはようございます』っていうのが日課だった。それがなくなると思うと寂しい」と名残を惜しみ、「加地さんの時間の配分とかを聞いたりして自分のやり方を作っていった。にとってめちゃくちゃ大事な時間でした」と感謝を惜しまない。

 加地もチームメイトに大切なことを伝えようと心を砕き、「いろいろ考えて言葉も探しながらやりましたけど、背中で見せた方が伝わるだろうと思った」。決して多くはらずも態度で示し続けてくれた。

がいたことがクラブにとってすごい財産になった」と長澤監督は、「それを消さないようにいる選手がどう受け継いでいくか。そこがこれから大事になる」と続けた。加地の背中をすぐそばで見て過ごす珠玉の時間に恵まれたチームメイトには、加地が残した財産を次世代に受け継いでいかないといけない。そうすることで岡山に加地がいた三年間の意味は大きくなっていく。

文=寺田

現役生活に別れを告げた加地亮 [写真]=J.LEAGUE