フジテレビ系「明日の約束」(火曜21時~ 制作カンテレ)8話。真紀子(仲間由紀恵)の放置児・英美里(竹内愛紗)が、真紀子から離れるという選択をした。これは、第1話の希美香(山口まゆ)のときと同じケースだ。

1話の希美香を振り返る
「明日の約束」1話で、希美香は母親を捨てた。希美香の母・麗美(青山倫子)は離婚後、男遊びに夢中で希美香を放置していた。ネグレクトというやつだ。希美香は、母親に構ってもらいたくて万引きをして注意を引こうとするが、失敗。最終的に選んだのは、「母親を捨てる」という選択肢だった。これを正解と言い切るのは難しいが、希美香がポジティブになれたのは、間違いなくこの選択をしたからだ。

希美香からの影響
英美里は、物語を大きく動かすとんでもない行動に出た。母・真紀子が死んだ圭吾(遠藤健慎)の部屋を盗聴し、さらには圭吾の行動を縛っていた証拠の音声を週刊誌の記者・小嶋(青柳翔)に売ったのだ。

これで真紀子の援護をしていた「鎌倉からイジメを根絶する会」は、この件から手を引く。ネット上は、真紀子の悪評で溢れた。

「もう児童相談所にはメールした。母親はネグレクト、父親は愛人作って別居状態。こんな家じゃまともに生きていけません。結局、私のことは見てくれなかったし、声も聞いてくれなかった」

英美里が両親に向けて言ったセリフ。全てをぶち撒けるという、真紀子の視界に入るための最後の賭けだ。現時点で真紀子に心変わりがあるのかはわからないが、この行動は、母親を捨てる覚悟という点で、希美香が1話で取った選択と似ている。

英美里が不幸の中に身を置きながらも、初めて前を向けた瞬間だ。自身の経験を元に寄り添ってくれた希美香からの影響は大きい。たぶん、このドラマで初めてのポジティブな連鎖だと思う。

2人の親はネグレクトだったが、日向の母・尚子(手塚理美)は過干渉。全く違うタイプの毒親だが、英美里の決断を目の当たりにした日向が、自身の親子関係にどう影響させるか、残り2話はそこに注目したい。

もう1人の毒親持ち和彦
希美香、英美里、日向、そしてもう1人毒親に縛られているのが、親にネグレクトされ気味の日向の彼氏・和彦(工藤阿須加)だ。しかし、和彦の場合は他の3人より少し複雑。ここに兄のDVという呪縛が乗っかってきてしまっている。前話のラストで、日向に暴力を振るってしまったように、和彦の脳内には、兄の暴力が染み付いてしまっている。

日向の場合は、希美香や英美里のように、「母親を捨てる選択」もあれば、「母親を受け入れる」選択もある。どちらも難しい状況なのに変わりはないが、一応、ゴールは見える。離れるか、より、近づくかだ。さらに、母親・尚子の変化もありえないわけではない。
だが、和彦の場合は、親よりも兄の暴力が問題。しかもその兄は、すでに亡くなってしまっている。どうやったらこれを乗り越えることが出来るのだろう? たとえ、両親が心変わりしたとしても、和彦の闇が晴れるとは限らない。また、日向が和彦の全てを受け入れて結婚しても、根本的な解決にはならない。

「明日の約束」は、全ての闇を抱える登場人物が、事件を乗り越えて何とか頑張って前を向く、何とか明日を見る物語だと、漠然と想像していた。だが、和彦だけはなかなか難しい気がする。どうやって和彦が救われるのか、ある意味、日向よりも気になる。

そして、もうわけわかんないのがミッチー
かなり序盤から怪しい演出をされまくっていたミッチーこと及川光博演じる霧島先生が、ついに本性を現した。圭吾を孤立させるよう仕向けていたと自白したのだ。そして、3年前に香澄(佐久間由衣)がイジメられた原因を作ったのも霧島だった。

怪しい怪しいとは思っていたが、まさかそこまでしていたとは全く思っていなかった。良い視聴者だと我ながら思うが、見た瞬間「え?なんで?」と思わず呟いてしまった。もう全く持って理由が想像出来ない。本当になんでそんなことするのか続きが気になって仕方ない。

ただ、一つだけわかることがある。それは、霧島先生が自分を正義だと思い込んで圭吾と香澄をクラスで孤立させたということ。悪事を問い詰められた時の霧島先生の開き直り方は、圭吾のスマホを使って長谷部(金子大地)に「先輩のせいで死にます」とメールを送ったことを問い詰められたときの真紀子そっくりだったからだ。

(沢野奈津夫)

イラスト/Morimori no moRi