就職活動で嫌われる会社は「ワンマン社長」「精神的ストレスが多い」――。

 12月13日付記事『就活生は企業のどこを見ているのか?嫌われる企業の共通点』では、リクルートキャリアの研究機関「就職みらい研究所」が発表した「働きたい組織の特徴(2018年卒)」を踏まえて、同所所長の岡崎仁美氏に最近の就活生の意識や動向について聞いた。

 今回は、企業の“採用力”や社員の離職を防ぐ方法などについて、さらに岡崎氏の話をお伝えする。

●簡単にバレる嘘をつく企業も

――リーマン・ショック東日本大震災の際に採用を控えた会社がありましたが、今考えると失策だったのでしょうか。

岡崎仁美氏(以下、岡崎) 就活生と年が近い先輩がリクルーターになると、採用につながる傾向にあります。なかには、採用を控えた期間が長すぎて就活生とリクルーターの年齢が親子ほど離れてしまったケースもあり、そうした会社は採用力が鈍っています。一方、コンスタントに採用を続けた中小企業などは、採用力では他社と比較して一日の長があります。

――知り合いの中小企業は、11月以降もまだ採用活動を続けています。何か、いい方策はありますか。

岡崎 前回も申し上げた通り、キーワードは「所属欲求」と「承認欲求」です。具体的な例があります。

 ある関西地区の金融業界志望の学生は銀行に内定をもらいましたが、それを蹴って中堅の金融コンサルティング会社に入社しました。彼はそのコンサル会社のインターンシップに参加した帰り際に、ある社員から名刺をもらいました。そして、彼が簡単なメールを送ったところ、その社員はインターンのなかで見つけた、その学生の「いいところ」と「悪いところ」を詳細に綴って返信してきたそうです。

 実際にそのメールを拝読しましたが、合計でA4用紙6枚におよぶ内容でした。感激のあまり、それにまたお礼メールを送ると、これから始まる就職活動に対する熱いエールが返ってきたそうです。

 その後、彼は当初志望していた銀行を中心に就職活動を進め、念願かなって内定を得たわけですが、この中堅コンサル会社からも内定を得ました。最終的には、「やっぱり、自分をひとりの個人としてしっかり認めてくれている会社に行こう」ということで、そのコンサル会社に入社を決めたのです。

 また、ある企業の総務部長は、常に学生に「大手は、採用担当と育成担当は別。でも、うちは会社が小さいから採用も育成も総務部長の僕が担当。だから、ずっと君のことを見続けることができる。一緒に成長しよう」と呼びかけ、毎年コンスタントに優秀な人材を確保しています。もちろん、この“殺し文句”が必ずしも通用するわけではないですが、「それなら」と入社する学生もいるでしょう。

 学生に「自分をちゃんと認識してくれる会社」「承認欲求を満たしてくれる会社」と思われれば、中小企業にもチャンスがあるということです。

 逆に、悪い例もあります。ある大学の研究室での話です。従来からその研究室とつながりのあるメーカー・A社が、学生向けに自社工場の見学ツアーを企画し、参加を促しました。

 事前連絡では「これは採用選考ではありません」と述べていたはずなのに、いざツアーが終わって数日後、参加した女子学生に「一次審査の案内」が届きました。彼女は違和感を覚え、同じ研究室の友人にその事実を打ち明けたところ、なんと別の学生には「二次審査の案内」が届いていたのです。「『採用選考ではない』と言っておきながら、こんなにすぐバレる嘘をつくなんて」と彼女はあきれてしまい、もちろんその会社の選考を受けることはなかったそうです。

●若手が嫌がる「俺の背中を見て覚えろ」

――採用活動自体も大事ですが、採用した社員の離職を防ぐことも大切です。こちらについては、いかがでしょうか。

岡崎 「報連相」(報告・連絡・相談)が大事なことは、みんなわかっています。しかし、新入社員にとっては何を「報連相」すべきかわからないことが多い。そこで、ある会社は軽い雑談をしながらお互いに「報連相」を引き出すというやり方をしています。

 新入社員が一番嫌がるのは、理不尽に怒られることです。また、「俺の背中を見て覚えろ」という姿勢も嫌われます。そういった指導は合理的ではありません。若い人は、合理的でない指導を嫌悪するのです。

 また“暗黙の了解”も通用しません。ある企業で新人を受け入れた課長は「うちの新入社員は無断遅刻が多い。もう、やる気をなくしているのだろうか。ひょっとして、近々離職するのだろうか」と思い悩んでいました。そこで、思い切って当の本人を問いただしたところ、「遅刻や欠勤の際の連絡ルールを知らなかったから」との回答。それを伝えたとたんに、教えた通りに連絡するようになり、課長のストレスも軽減されたそうです。

 離職を防ぐ方法はさまざまですが、次世代のリーダーのあり方として、まず相手と関係性をつくり、そのなかで相手の成長をサポートする「サーバントリーダーシップ」の精神が求められます。

 相手の話をしっかりと聞いて受け止め、そのなかで個性を生かした営業の仕方などを指導する。そうしたリーダーが会社を牽引するようになれば、離職率は減少していくのではないでしょうか。
(構成=長井雄一朗/ライター

就職みらい研究所の岡崎仁美所長