自分勝手で偏屈で、妄想活動にけっこうな時間をさいている…。「これ、自分とカブるわぁ」の連発だった、「勝手にふるえてろ」の主人公・ヨシカの七転八倒。ここまで全面的に感情移入を誘った主人公は、2017年にあまた見た映画の中でも、ヨシカただ1人だったと断言します。クリスマスプレゼント的な名ヒロインの登場に心が躍りましたよ~!

生涯初となる”脳の外”での恋騒動に奮闘するヨシカ。”理想の脳内彼氏”と”タイプじゃないリアル彼氏”の間であがく!もがく!

中学の同級生・イチ(北村匠海)に10年間も片思い中のOL・ヨシカ(松岡茉優)、24歳。イチとの古い思い出を召喚してはピュアな初恋にときめき、絶滅した動物について夜通し調べ、博物館から払い下げてもらったアンモナイトを愛でたりと、1人で忙しい毎日を送っています。そんなある日、まったくタイプではない会社の同期・二(に・渡辺大知)から突然の交際要請が!「人生初、告られた!」と舞い上がりながらも、ある出来事をきっかけに「もう一度だけイチに会おう」と決意するヨシカ。同級生の名を語り同窓会を企画、イチとの再会の日を迎えるのですが…。

映画初主演となる松岡茉優ヒロインに迎え、芥川賞作家・綿矢りさの同名小説を実写化した本作。若い女性のリアルな生態を捉えた綿矢ワールドが、妄想入り乱れるテンポのいい会話劇として唯一無二の世界観へとパワーアップしました。”自分だけの世界”を猛進する、ちょっとイタいヒロイン役の茉優ちゃんのこじれた演技が巧い!お笑い番組のMCにも定評がある彼女が、全シーンに登場し、愛すべきコメディエンヌぶりを発揮しています。「ファ×ク!ファ×ク!ファ×ク!ファ×ク!ファ×ク!」と真顔で唱え、アンモナイトの渦巻きを指でなぞってはご満悦…、闇ってる雰囲気が最高にキュートなのです。

ヨシカ史上初の”リアル恋愛”の相手・二を演じるのは渡辺大知くん。”笑顔の見本”のような満面スマイルの持ち主です。序盤は、あの屈託のない笑顔が”ウザい”の一歩手前(偏屈な人種にとって笑顔は軽く脅威なので…)ですが、慣れてくるとだんだん居心地がよくなってくるんですよね。イケメンでもなく、お人よしの”二”ですが、「自分を幸せにしてくれるに違いない!」という根拠のない安心感を抱かせる”何か”を宿している!

そして、ヨシカの”脳内片思い”の相手・イチ役には北村匠海くん。クールなんだけどどこか冷酷さを漂わせる”イチ”は、”実態不明の初恋相手”という、誰の思い出にも潜んでいるであろう対象を具現化したような存在です。ろくに話したこともない人を見た目で好きになって、それを”恋”と呼んじゃう若気の至り…。24歳にもなっても堂々とその”恋”とやらを引きずり続けるヨシカの純真が、うらやましくもあり痛ましくもあり…。再会後、奇跡的に絶滅動物話で盛り上がる2人ですが…、その先は、どうなる!?

2人の男とのすったもんだのあげく、待ち受けているのが、ヨシカが街のさまざまな風景の中で劇中歌「アンモナイト」を歌い上げる感動のシーン!「絶滅すべきでしょうか~?」という過激な歌詞と共に、心の叫びが大爆発します。憧れの”イチ”に対して二番手の男を”二”と呼んでキープするとか…、ヨシカがおよぶ人でなし行動の数々は、私にも身に覚えがあったりするんですよね…。ヨシカも「傷つきたくない」一心で生きてきたのだと察します。”自分の殻”という安全地帯にとどまり、好みに脚色した夢物語にひたって。そんな理想とプライドが崩壊し、現実世界にほっぽり出された彼女が、ラストで素の自分をさらけ出して他者と初激突!孤独にくすぶっていたヨシカの暴走からの成長に拍手喝采です!

「現実ってこんなもんだよね」って、前向きにそう思えましたよ。立派すぎる理想にまつわる妄想をふくらませて自分の首を絞めてさえいなければ、”なんてことない現実”ってけっこう楽しいのかも。いろんなことに怯えて”勝手にふるえてる”すべての人へ…、今年一番の共感を!【東海ウォーカー

【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします! 最近のお気に入りは「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」(12月15日公開)のアダムドライヴァー!(東海ウォーカー・おおまえ)

一気にファンになってしまいましたよ、お笑いセンスも突出している松岡茉優!地味に寄せた外見&”間”が絶妙です。底力のある女優さんですね~