2~3年に一度、スズナリに現れる、URASUJI』。お金のために敵討ちの片棒をかつぐ裏稼業の杏らの活躍を描く時代劇ミュージカル。時代考証などなんのその、面白さとかっこよさが先を行く。その中心にいるのが、80年代を疾風のごとく駆け抜けたロックバンドBARBEE BOYSの杏子。着物をリメイクした衣裳を振り乱し、歌い、ズッコケ、本当に本当に狭い舞台を駆けめぐる。とっても気軽に楽しめるシリーズなのに、公演がたまにだからなかなかURASUJIマニアが広がらないのがちょっと残念。その布教を手伝うべく、脚本・演出の松村武と、杏子に対談してもらった。

URASUJI2017『ちんもく』公演は、12月16日(土)19:0012月17日(日)14:00について、プロデューサー・出演者の杏子さん体調不良のためやむを得ず公演を中止とし、12月18日(月)を初日とすることになりました。また、それに伴い12月24日(日)18:00に振替追加公演が決定しました。チケットの払い戻し、振り替えについては、公式サイトをご覧ください。

『URASUJI』の背後に名プロデューサー・深沢敦あり

ーー初演のころは、杏子さんがそもそもスズナリの舞台に立たれる、演劇に出られるということ自体が驚きでした。発端が気になります。

杏子 それはあっちゃんですね、深沢敦さん。あっちゃんとは『ROCK TO THE FUTURE』というミュージカルで知り合って、お互いのライブに行き来したり、あっちゃんのお芝居を観たりしていたんです。そのうちに「杏子がスズナリで歌ったら面白いんじゃない、芝居やらない?」「いやいや、とんでもない」みたいなやりとりがあって。あっちゃんはその後、明治座の『三人吉三東青春』(2003年)で松村さんとご一緒されて、「すごい才能のある劇作家に出会ったんだけど、彼だったら杏子を面白く料理できる」と言ってくれて、そこから物事が一気に動いてくれたんです。とはいえスズナリは演劇界の老舗劇場ですから気軽な気持ちではなかったし、舞台に立つことの想像もつきませんでした。

松村 『三人吉三東青春』の時は僕も30歳くらい。明治座史上最年少演出だと言われましたが、現場はうるさ方ばかりで、深沢さんや大谷亮介さんが小劇場つながりで優しくしてくださるくらいで。その後に深沢さんが「杏子とスズナリでやりたい、必殺仕事人パロディにしたミュージカルをやりたい」ついては若くて、素直に企画の意図が通る劇作家がいないか、と。明治座は藤田記子(カムカムミニキーナ)も出ていて、深沢さんにかわいがられていた経緯もあって僕が呼ばれたんです。

杏子 だから「敦-杏子プロデュース」という企画名称にはなっていますけど、実質はあっちゃんが立ち上げてくれたんです。

前回公演より

前回公演より

杏子がスズナリでシャウトし、ズッコけるぜいたく

ーー第1回目を見たときに、杏子さんがカッコよくて。ボケるのもかわいらしいし、瞬間で虜になりました。劇中には物語に沿ってさまざまな歌が挿入されますが、役者さんが歌うのはすごくワクワク感があるし、ボードビル的に皆さんの見せ場もある。それがどこか懐かしいんですよね。

松村 考えてみると、美空ひばりさんの映画などはまさに話に沿って耳なじみのある歌が入ってくる。もしかしたら『URASUJI』も日本のエンターテインメントの伝統的な構造だったのかもしれません。でも現代の商業演劇に変化していく過程で歌が別コーナーになり、演劇の部分は歌わずに芝居をしっかりやるというスタイルになっていく。『URASUJI』はいわばネオ大衆演劇、僕は歌舞伎的だと思っているんですけどね。また西村直人さん、岩﨑大(StudioLife)、森貞文則(元TEAM 発砲 B・ZIN)らは『URASUJI』で出会ったのですが、みんな人並外れた「技術」を持っているんですよ。その「技術」を生かすという前提の作劇は自分の劇団ではやれない。僕的には新たな方法が開けた感覚はあります。

ーー僕が大学生の時に、杏子さんはまさに青春ど真ん中で聞いていたんですが、松村さんは少し時期的にズレているのでしょうか? 緊張はしなかった?

松村 いやいや僕も「目閉じ」(BARBEE BOYS「目を閉じておいでよ」)とかはドンピシャでしたし、もちろんご一緒する緊張はありました。

杏子 ありましたかぁ~?

松村 ありました、ありました。でもそれさえもわからないくらい遠い存在でした。

杏子 うそでしょ!

松村 ありましたって(笑)テレビの向こうで歌っていた大スターだから、実感がなかったというのが本当のところですね。僕の場合、ミュージシャンの方とこんなにがっつりやるのは『URASUJI』だけですが、当初は「演劇側の意地を見せなきゃ」という気負いもあったかもしれません。

杏子 最初の『URASUJI』は本当に少人数で始まったけれど、『幕末編~みだれ~』(2007年)でダイアモンド☆ユカイ君、『寵愛-大陸編-』(2009年)では倉科カナちゃんが出てくれたり、

松村 『仇花』(2012年)に木の実ナナさんが出てくださった時は本多劇場でもやりました。『URASUJI』では仕事人メンバーが固定されていて、深沢さんと藤田、草野徹が演じる悪者を敵討ちするという勧善懲悪ものと決まっているんです。それがあるので、いざ書き出すと、すぐに書けるんですよ。今回も実質3日ほどで書いていますから。

杏子 えー、すごい!

松村 他ではそうは行きません(笑)。それに大きな軸があるからこそ瑣末な部分を広げていける。最初は江戸の悪い代官を懲らしめる物語でしたが、何回も公演するからには同じでは飽きてしまうので、幕末や中国に行ったりと物語は拡大傾向にあります。今回は前回と全然違うみたいなスタイルを繰り返していく。でも杏子さん演じる杏だけはしっかり、どっしりしているんです。そこは中村主水的な、飛び道具ではない感じです。 

杏子 松村さんの脚本も、私の性格をわかってくださって、かっこいい場面もあればずっこける場面もあったり。まるで私の私生活知っているの?みたいな場面もあるんです。

松村 ハハハ! ちなみに『ちんもく』は映画「沈黙‐サイレンス‐」を見た時に、安易ですが、これで行こうと(笑)

松村武

松村武

舞台を経験すると自分が強くなったように思える

ーー杏子さん、お芝居はいかがですか?

杏子 本当に難しい。何もしてない時でも何かしているところが……。自分のパートになると必死なんですよ。でもほかの皆さんのパートを見ていると、自分もその中にいるはずなのに、お客さんになって楽しんでしまう。

一同 笑い

杏子 私はお稽古の映像を家で冷静になって見返すようにしているんですよね。だってお稽古場でダメ出しされている時は緊張しているから、「言われている!」と思うだけで何を言われているかわからない(笑)

松村 役者もみんなそうですよ。ただ長く演劇をやっている人たちは、その場をしのぐ能力に長けているんです。

杏子 そうですか? それにしてもすごいですよ。けれど、できなくて苦労するからこそ、ストンとハマった時の面白さは格別!

松村 杏子さんは「私は音楽担当だから」みたいなことはなくて、先頭に立って芝居に取り組んでくださるの素晴らしいんです。

杏子 芝居はどうしてもキャッチボールですからね。ライブだと「ギャーッ」と歌って、間違ってもガンガン行ってしまいますけど、芝居はそうもいかない。客席が沸いてもなかったことのように進んでいく。ライブだと歓声をイジったりするけど、演劇はウケたと思った途端に次のことを忘れてしまうので、客席からの声に反応してしまわないように我慢しています(笑)。だから、舞台を終えて音楽に帰っていくと、自分が強くなった気がするんですよ。

松村 『URASUJI』は深沢さんと杏子さんの二人プロデュースですが、ソフトは杏子さん色で作っているところがある。深沢さんはどちらかと言うとハード面よりのボスで、作品の求心力。役者も一人、二人欠けることがあっても、いつものメンバーが集まってくるのは劇団みたいだし、杏子さんは信頼できる座長感があります。それに『URASUJI』では美術さん、衣裳さん、ヘアメイクさん、スタッフさん最前線でやっている方々が、狭い空間でも高いクオリティーで勝負してくださる、そこが深沢さんの人徳。ある部分(笑)は勘弁してほしいけど、でも本物でやってくれという(笑)。だからものすごく豪華なんです。

杏子 ほんとに!

杏子

杏子

ーー『URASUJI』は今のところ東京だけの公演ですね。

松村 地方公演は一回もやってないんですよ。僕らも行きたいんです、特に長野県は!

杏子 私は松本市生まれなのですが、どうしたら松本でできるんでしょうね? 佐久市の市長さんはツイッターで絡んでくださるんですけど(笑)

松村 関西のファンもすごく気にしてくれている。

杏子 今度の公演ではパンフレットの特典DVD用に『URASUJI』のテーマ曲でミュージックビデオを作っているんです。過去の名シーンライブのドタバタとか、みんなのプロフィール映像もある。

松村 見ていただければ『URASUJI』がわかるし、それで待望論が盛り上がってくればツアーの体制も作れるかもしれませんね。

杏子1992年BARBEE BOYSの解散後、ソロで活動。 現在、ラジオ番組のパーソナリティをはじめ、映画、舞台など、幅広いジャンルで活躍中。2016年9月28日に、 盟友いまみちともたか作詞・作曲・プロデュースのもと、ゲストボーカルに現在活動休止中N’夙川BOYSのリンダ、演奏にOKAMOTO’Sのハマ・オカモト&オカモトレイジを迎えたロックナンバー「イカサマ美男子 feat.リンダ」、全国のフィットネスジムで話題の人気プログラム地中海系・エクササイズ『BAILA BAILA』とのスペシャルコラボソング第三弾「Magenta Butterfly」を収録したDouble A-Side Singleリリース

松村武早稲田大学在学中の1990年、カムカムミニキーナを旗揚げ。自ら役者として出演しつつ、劇団の全作品の作・演出を担当。2003年には史上最年少で明治座の脚本・演出を手がけた。シス・カンパニー『叔母との旅』、敦×杏子PRODUCE『URASUJI』シリーズなど、外部への脚本提供や演出作品も多数。また、自身も俳優として、NODAMAP、阿佐ヶ谷スパイダース、ラッパ屋などの作品などに出演している。最近は故郷の奈良で一般参加型演劇イベント「ナ・LIVE」のプロデュースも担当。

取材・文=いまいこういち

公演情報
敦×杏子プロデュース URASUJI2017 『ちんもく』

URASUJI2017『ちんもく』公演は、12月16日(土)19:0012月17日(日)14:00について、プロデューサー・出演者の杏子さん体調不良のためやむを得ず公演を中止とし、12月18日(月)を初日とすることになりました。また、それに伴い12月24日(日)18:00に振替追加公演が決定しました。チケットの払い戻し、振り替えについては、公式サイトをご覧ください。

2017年12月16日(土)~12月28日(木)
会場:下北沢 ザ・スズナリ 
■作・演出:松村武 (カムカムミニキーナ)
出演:
杏子 深沢敦
岩﨑 大 (Studio Life) 西村直人 池田有希子 森貞文則 草野とおる (壱組印)
藤田記子 (カムカムミニキーナ) 吉田晋一 (カムカムミニキーナ) 亀岡孝洋 (カムカムミニキーナ)
中川浩行 花井祥平 是澤洋文
渡邊 礼 (カムカムミニキーナ) 大倉杏菜 (カムカムミニキーナ)
新垣里沙
中山祐一朗 (阿佐ヶ谷スパイダース) 辻凌志朗
小川菜摘 天宮 良
演奏:ガレージシャンソンショー(山田晃士・佐藤芳明)
チケット料金:
指定5,000円/当日5,300円、自由4,600円/当日4,900円
※学生券3,000円 (枚数限定・要証明書/URASUJホームページでのみ)
自由席は全て整理番号付
開演時間:16・18・19・21・22・25・26日19:00、28日・日曜14:00、20・23・27日14:00と19:00
問合せ:リトルジャイアンツ メール urasuji@littlegiants.biz、Tel.090-8045-2079
※29日19:00は「URASUJI SPECIAL LIVE 」を開催。全席整理番号付自由席 / URASUJホームページでのみ取扱い)。前売・当日とも5,000円

URAUJI公式サイト http://www.urasuji.info/chinmoku.php