離婚合意した松居一代が「まだセクシーだった」ころの傑作映画

作品目『肉体の門』

東映/1988年
監督/五社英雄
出演/かたせ梨乃、名取裕子、渡瀬恒彦、芦川よしみ、松居一代ほか

12月某日、わが家に配達されるスポーツ紙のトップ記事にデカデカと《松居 離婚合意 船越》と報じられていた。松居一代と船越英一郎の一連の“泥沼離婚騒動”が年内決着したというのだが、こんな“犬も食わない”出来事が第一面かよ、というのが正直なところ。あの“鬼嫁”ぶりに閉口した世間の男性は船越に同情することしきり。ボクも今の松居に何の興味もないが、若いころはまだセクシー・タレント及び女優として通用していたものだ。

最初は、かつて深夜の大人向けバラエティー番組、もはや伝説の『11PM』司会の作家・藤本義一のアシスタント1980年から5年間務め、ホステス感あふれるルックスで当時はボクも注目していた。1984年には新藤恵美主演のロマンポルノルージュ』に助演。1985年には鬼才・若松孝二監督の、実際に起こった女性教師と男子高校生の駆け落ち淫行事件に基づく『衝撃 パフォーマンス』に主演し、ヌードも披露し、成人映画指定にもなったが、映画は話題にならず、最近になって“お宝”化している。

そんな彼女が助演したこの『肉体の門』を今回はチョイスしたい。この田村泰次郎の原作は何度も映画化されており、一番有名なのは今年亡くなったカリスマ的映画監督・鈴木清順の1964年作だが、こちらも『鬼龍院花子の生涯』の五社英雄監督、『仁義なき戦いシリーズの脚本・笠原和夫のコンビなのだから堂々たるもの。

 

本物のナイフと火の付いた木材で格闘

終戦直後のバシン(新橋)で、かたせ梨乃演じるリーダー格が率いるパンパン(街娼)グループ・関東一家の興亡を描いたもので、名取裕子が敵対すラク町(有楽町)一家のカシラを演じている。

松居は“血桜お銀”という勇ましい名前の役だが、俳優序列は7~8番手程度の扱い。まだアラサーの若さで、濃いめの美貌が印象的だったのだが…あれから30年、今の姿なのだから、女は変わるねえ。

五社・笠原の骨太コンビだけに、原作をかなり解体し、清順作品とも視点を変えている。街娼たちのアジトが焼けただれたビルで、瓦礫に引っ掛かっている不発弾を守護神としている新設定が象徴的で、明日をも知れぬ彼女たちの土性っ骨に賛美を送りたい。

当時、ボクはこの年のベストテンの2位に推したほど。かたせ梨乃と名取裕子は本物のナイフと火の付いた木材で渡り合ったという。出演女優は皆傷だらけ、脱ぎも当たり前なのが五社監督の現場だった。今は、そんな監督いないよね、としみじみ思った。そこで松居をダシにして、この隠れた傑作をもっと若い人に見てほしい、と願うわけです。

(映画評論家・秋本鉄次)