
7月16日に名古屋市で政府のエネルギー政策に関する意見聴取会が開催された。
その会で中部電力(中電)の原子力部門の課長が、原発推進の「個人意見」を述べる中で「福島の原発事故の放射能が原因で亡くなった人はいない」と発言した。
その途端、会場は「またやらせか」「被災者の気持ちをちょっとでも想ったことがあるのか」などの野次が飛び、その後の聴取会が紛糾した。
「放射能で直接的な死者は出ていなくても、放射能のために生活を奪われ、故郷を追われ、生きる気力をなくして自殺した人は何人もいる。放射能が原因で亡くなった人がいないとは認識違いも甚だしい」
「この程度の想像力しかない人間が管理職になれるとは、中電のレベルが知れる」
社会の空気がまったく読めない中電の課長に対し、ネット上ではこうしたチャットが飛び交った。
中電には18日朝までに「被災者を傷つける発言だ」などの抗議が電話やメールで477件殺到した。
「間違った愛社精神」とも批判された問題課長を生み出した中電とはどんな会社なのか、その体質を、キャリコネの口コミから探ってみた。
【その他の口コミ&年収記事はこちら】
同社の口コミを見て驚くのは、手厚い福利厚生を自慢する書き込みが実に多いことだ。
例えば20代後半の女性社員はこう自慢している。
「どこの支店にも会社専属の飲み屋のようなものが準備されている。また、保養所が管内に数多く存在し、家族で安く旅行することも可能」
バブル崩壊まで、大企業の多くがホステスの侍る「社員専用クラブ」を主要都市の繁華街で運営、社員のエリート意識をくすぐっていた。
その遺物が中電では今も健在らしい。これでは「空気が読めないのも当然か」と、思わず納得してしまう。
また、20代後半の男性社員も、次のように書き込んでいる。
「社宅や保養所、スポーツ施設なども充実している。社員食堂は安い値段で定食、カレー、ラーメン、丼物など充実している。休暇も取りやすい」
さらにこう話している。
「働きやすい職場の代表と言えるのではないか」
このように多くの社員が自慢する手厚い福利厚生費は、総括原価方式により原価の1つとして電気料金に含まれている。消費者の怒りに想いを馳せる社員はいないようだ。
一方、自社に厳しい目を向けている人もいる。60歳の男性契約社員は、中電の体質をこう批判している。
「営業努力も余りなく、顧客の電気料金を上げてしまえば赤字はないと思っている」
中電の三田敏雄会長は「君に伝えたい私の経験」と題する随筆の中で「仕事をする上で肝に銘じているのは『正しい倫理観を持つこと』。(略)自分だけが儲かればいいと言う考えでは駄目」と若者たちを諭している。
しかし、この三田会長が率いる会社が、企業努力もせず電気料金の値上げで赤字回避をしようとしているのだから、倫理観に対する定義が社会と三田会長では異なるようだ。
社会から見れば「間違った愛社精神」を社員に植え付け、被災者の気持ちをくみ取れない課長が物議をかもすのも無理がないと言える。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年6月末現在、45万社、18万件の口コミが登録されています。

コメント