SNS上で先日「中学生に対する性的アプローチ」が話題となりました。きっかけは人気テレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の登場キャラクターにちなんだ、「葛城ミサトさんと同じ年齢になったとき分かったけど29歳が中学生の碇シンジへキスしたり性的なアプローチを仕掛けてるの頭いかれてる」という投稿。これについて「精神年齢が近ければお似合いなのでは?」「アラフォーで中学生アイドルの握手会行ってる僕としては普通の感覚」「アニメだからよしとされるだけで、実際中学生にキスしたら帰り道に通報されて逮捕されそう」など、さまざまな声が上がっています。

 こうしたケースが実際にあった場合、法的にはどのように扱われるのでしょうか。オトナンサー編集部では、グラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士に聞きました。

交際相手を選ぶための自己決定権

Q.成人と中学生の交際は法的に認められますか。

刈谷さん「ひと口に『交際』といっても、さまざまな交際の内容が考えられますが、少なくとも都道府県青少年保護育成条例(都道府県によって名称は異なる)は、成人が中学生と2人で会うこと自体を禁止する規定を置いていません。そのため、真剣に交際している場合、交際そのものは法律上認められるということになるでしょう。中学生といえども、真剣に交際相手を選ぶための自己決定権は尊重されるということです。しかし、中学生は未成年者として親権者による監護や教育を受ける立場にあり、親権者には子の健全な育成のために努める義務があります(民法820条、都道府県青少年保護育成条例)。そこで、法律は未成年者自己決定権を尊重しつつも、その健全な育成のために未成年者の行動に一定の制限を設けるという態度を取っています。これは、未成年者が精神的にも肉体的にも成熟しているとは言えないことから、法律で制限することで未成年者を保護しようという考え方に基づくものです。ただし、誰を好きになって誰と交際するかということに正解はないことから、法律もそれについてまで未成年者の決定権を制限していません。一方、都道府県青少年保護育成条例は、正当な理由なく18歳未満未成年者(青少年)を深夜(午後11時~翌午前4時)に外出させる行為に刑罰を科しています。このように外出を伴う交際は、青少年の健全な育成を害すると考えられているわけです」

Q.成人と中学生の性的行為は法的に認められますか。

刈谷さん「中学生との性的行為が法律上どのように評価されるのかについては、実際の年齢や性的行為の内容によって変わってきます。(1)未成年者が13歳未満の場合、仮に未成年者本人の同意があるような場合であっても、故意にキスをしたり身体に触れたりするなどのわいせつな行為は強制わいせつ罪(刑法176条)、性交や肛門性交、口腔性交は強制性交等罪(刑法177条)として犯罪が成立する可能性が非常に高いです。中学校になりたての満12歳の男子や女子がこれに含まれるでしょう。(2)未成年者が13歳以上18歳未満の場合、都道府県青少年保護育成条例は、18歳未満未成年者(青少年)と『みだらな性交又は性交類似行為』をした人に刑罰を科しています。ここでいう『みだらな』とは、『青少年を誘惑し、威迫し、欺罔(きもう)し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような』態様を意味するとされています(昭和60年10月23日最高裁大法廷判決)。つまり、青少年に対する性的行為全てを禁止しているわけではないということです」

刈谷さん「実際には、当事者それぞれの年齢や性交渉に至る経緯などの諸事情を考慮し、青少年の健全な育成を害すると言えるかどうかが判断されます。たとえば、青少年の保護者に対するあいさつや説明をきちんと行い、結婚を前提とした真摯な交際をしている場合、その中で行われた性的行為は青少年の健全な育成を害するものではなく、許される可能性があります。しかしながら、民法731条が婚姻適齢として、女子満16歳以上、男子満18歳以上と定めていることからすると、中学生(一般に満12~15歳)との性的行為が真摯な交際の中で行われたもので、その健全な育成を害しないと評価できるケースはごくまれであると考えられます。男女問わず成人としては、未成年者のすこやかな成長のためにその人格を尊重すべき立場にあることを意識し、行動することが何よりも大事なのです」

(オトナンサー編集部)

中学生への“アプローチ”は法的にどう扱われる?