テクノロジーの発展による社会的変革が起きようとしている。
よく聞くところでは、AIの進化で多くの仕事が人工知能に取って代わられるという話があるが、今、「お金」「経済」にも大きな変革が到来しようとしている。

これは、お金の稼ぎ方が変わるとか、新たな資産運用が生まれるという話ではない。「お金」や「経済」そのものの概念が変わろうとしているのだ。

そんなお金の新時代について言及された一冊が『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(佐藤航陽著、幻冬舎刊)だ。

本書では、すでに20兆円を超える規模になっている仮想通貨市場、SNS上で強い影響力を持つインフルエンサーの登場とそこからの評価経済の変化を踏まえ、21世紀に登場した「新しい経済」の姿を解説している。

■テクノロジーの変化により「お金」と「経済」の在り方が変わる時代

お金には価値の保存、尺度、交換の役割があると言われている。古くは貝殻や金属による価値のやり取りを仲介していたものが、時代を経て「お金」に置き換わっていったのだ。

今、その「お金」は、国家が管理する中央銀行で作られている。

国がお金を作り、経済をコントロールする。これが今まで常識だ。そんな既存の経済は中央集権化によって秩序を保ってきた。中心に管理者が存在し、そこに情報と権力を集中させることで、問題が起きた時にもすぐ対処できるようにできる体制を作ってきた。

しかし、今、お金や経済の世界において「中央集権化」とは真逆の「分散化」の流れが生まれていると著者は述べる。

トークンエコノミー仮想通貨で作られる経済圏)は、まさに「分散化」の流れの延長線上にあると言える。トークンエコノミーが既存の経済と大きく異なる点は、経済圏がネットワーク内で完結していることだ。

既存の経済圏は、国家が通貨発行者、企業や個人がプレイヤーという関係にある。しかし、トークンエコノミーでは特定のネットワーク内で流通する独自の通貨をトークンとして生産者が発行し、完全に独自な経済圏を作り出すことができる。つまり、これまで国家が行ってきたことの縮小版だ。

最も規模が大きなトークンエコノミーと言えばビットコインだ。

ビットコインが秀逸な点は、通貨発行益を受ける対象まで分散化が進んでいる点だ。ビットコインではマイナーと呼ばれる採掘者が実質的に通貨発行益を得られる仕組みになっている。つまり、誰でも通貨発行益を得られるシステムなのだ。

さらに、特定の存在が経済システム全体をコントロールしようとしても、それに反対する人が離反すれば経済圏の価値が下がるか分裂してしまい、独占や支配が難しい仕組みになっている。

著者は、こうしたテクノロジーが示すのは、「経済そのものの民主化」だと指摘する。国が作る経済圏やお金に左右される社会ではなく、誰もが「経済」を自分で作れるようになる社会が訪れる。そんな時代が、今まさに現実に訪れようとしているのかもしれない。

■限界を露呈する「資本主義」から「価値主義」という時代へ

資産経済の肥大化により、お金は滞留し始め、相対的に価値は下がり続けている。これは「お金が価値を媒介する唯一の手段である」という独占の時代が終わりつつあることを示している。

そして著者は、今後は可視化された「資本」ではなく、資本に変換される前の「価値」を中心とした世界に変わっていくことが予想されると述べる。

例えば、フェイスブックグーグルのようなモノを扱わないネット企業では、人材やデータ財務諸表上の価値として認識されないが、それらはお金以上の価値を持っている。同じように、個人もお金ではなく、独自の価値を持つことが大きく評価される「価値主義」時代になるだろうと著者は説く。

今はまだ、資本主義的な「お金中心」に世界が回る時代だが、テクノロジーの発展はそんな常識を覆し、「価値中心」の時代へと移るかもしれない。経荒唐無稽な話に思えるかもしれないが、イギリスの作家ダグラスアダムスはこんな言葉を残している。

「人間は自分が生まれたときに既に存在していたテクノロジーを、自然な世界の一部として感じる。15歳から35歳の間に発明されたテクノロジーは、新しくエキサイティングなものと感じられ、35歳以降になっては詰めされたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる」(『お金2.0』p.206より引用)

新たな経済圏が生み出す世界は、これまでの資本主義経済や金融を知っている人間には現実味がなく感じられる。

だが、生まれた時からそのテクノロジーに触れる人間には、それがごく当たり前の常識になるのだ。10年も経てば、「お金」と「経済」の常識は、今とはかけ離れたものになり、人の生き方そのものを変えているかもしれない。

ライター:大村 佑介)

『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(幻冬舎刊)