漫画家アシスタントの労働環境が話題となる中、「ブラックジャックによろしく」で知られる漫画家の佐藤秀峰さんは1月8日アシスタント時代に「労働基準法的にはガッツリ『アウト』」な働き方を強いられていたと告白した。「カイジ」シリーズで有名な福本伸行さんの元でアシスタントをしていたときには、

「最長で47日間泊まり込みで仕事したことがあります。その間、外出は一歩もできず、睡眠時間は1週間合計で10時間程度」

ということがあったという。

「『寝ていい』と言われるまで何日徹夜しようが寝てはいけません」

かなり過酷なアシスタントの仕事

事の発端は、漫画家のカクイシシュンスケさんが7日、「三田紀房先生に残業代を請求したことについて」という記事を自身のブログに投稿したことだ。

カクイシさんが「ドラゴン桜」で有名な三田さんの元でアシスタントをしていたとき、毎週木曜日には22~23時頃まで残業するのが当たり前になっていたが、残業代は一度も支払われなかったという。どうしても納得できず、「思い切って残業代を請求することにしました」と報告している。

佐藤さんはこのブログを受けて「『三田紀房先生に残業代を請求したことについて』というブログを読んで感じたこと」を「note」に投稿。佐藤さんはまだ20代だった1990年代前半、2年3か月に渡って福本さんの元で作画スタッフとして働いていたが、

「週90時間~140時間勤務 初任給11万円 交通費不支給、各種保険未加入 残業代なし 休日、月4~5日程度」

という条件だったという。かなり劣悪な条件だが、実際にはもっと過酷だったようだ。

「24時間いつ何があろうと福本さんの指示に従わなくてはならず、休日、どんなに深夜に呼び出されようとも自転車を漕いで仕事場に駆けつけ、仕事をしなくてはいけません」
「『帰っていい』と言われるまで何日でも泊まり込みで仕事をし続けなくてはならず、『寝ていい』と言われるまで何日徹夜しようが寝てはいけません。外出も禁止」

福本さんの指示が絶対で、仕事が終わるまでは睡眠も碌にとれなかったことが伺える。時には福本さんに対して、「殺意」まで感じたことがあるという。

「70時間連続勤務の後、『2時間だけ寝ていいよ』と言われて布団を敷いている時、背後から『オレも甘いなぁ?、ここで寝かせちゃうんだもんなぁ?…。はぁ?…』というつぶやきが聞こえてきた瞬間は、殺意に近いものを感じました」

こうしたアシスタントの雇用環境について佐藤さんは、「どうしたらいいんでしょうね?こんな業界一回滅べばいいんだろうな」と諦め気味だ。

「原稿料が安すぎる」「アシスタントを出版社が正社員として雇用した方がいい」

あまりにも過酷な労働環境に、ネットでは「福本先生の現場が、カイジとかに登場してきそうな状態になっている」といった驚きの声が上がっていた。

こうした問題の原因は、「出版社からの原稿料が安すぎる」ことにあるのではないかと指摘する人もいた。原稿料が上がれば、漫画家もアシスタントの待遇を改善することができるだろう。

また、漫画家がアシスタントを雇うのではなく、「出版社が正社員として雇用、漫画家に派遣するシステムが良さげ」という提案もあった。漫画家にアシスタントの雇用を任せてしまうのではなく、出版社が責任を持つべきだというのだ。

佐藤さんの記事に対してカクイさんは、「お願いしますよ、先輩…。マンガ家も今後はアシスタントに対して労働基準法に則って働いてもらわなければいけない、くらいのこと力強く言えませんかね…」などの複数のツイートを投稿。翌9日には佐藤さんが「カクイシさんに反論をいただきました」という記事を投稿している。