コウチーニョのバルサ移籍に絡めて特集 ドルトムント時代の主力流出と対応策を分析

 リバプールはエースのブラジル代表MFフィリペ・コウチーニョを、バルセロナに放出するという大きな痛手を被った。英メディアでは、名将ユルゲン・クロップ監督が古巣ドルトムント時代から直面していた「ビッグネーム引き抜きの事例」と、「その後の見事な対応策」を紹介。その記事の中で、2012年にマンチェスター・ユナイテッドに移籍した愛弟子、MF香川真司も登場する。

「涙、トロフィー、そして移籍… ユルゲン・クロップはいかにビッグネームの移籍に対応してきたのか。リバプールにとってどのような意味を持つのか」との特集記事を組んだのは、英地元紙「リバプールエコー」だった。コウチーニョにとっての悲願だったバルセロナ移籍に際し、クロップ監督は「選手は移籍するもの。それがフットボールだ。クラブとして我々は十分に強大だ。そして、ピッチ上でのアグレッシブな成長を続けるだけの強さを持っている。重要な選手を失ったとしても、だ」と語っている。

 特集では、クロップ監督が08年から15年まで指揮したドルトムント時代の主力流出の事例を振り返っている。

 まず紹介されたのは、ドルトムントトルコ代表MFヌリ・シャヒンだった。10-11シーズンのドルトムント9年ぶりのブンデスリーガ制覇に貢献後、スペインの名門レアル・マドリードに移籍した。

 シャヒン移籍時のクロップの対応について、同紙は「素晴らしい。シャヒンとの会話で人情味を示しながら、クロップドルトムントは夏に新たなる補強に視線を移した。イルカイ・ギュンドアンこそが、彼の代役に選ばれた者だった」と評価されている。現在マンチェスター・シティで活躍するギュンドアンは、11年夏にニュルンベルクから加入し、シャヒン流出の痛手を忘れさせるプレーを見せた。

 一方で、シャヒンについては「スペイン移籍は上手くいかなかった。レアルではわずか1シーズンで10試合の出場。2012年8月にはリバプールレンタルで出されたが、12試合3ゴールで2013年1月に契約期間は短縮された」と、ドルトムントからの移籍は失敗だったとされている。

「私の心は張り裂けている。本当に泣いたんだ」

 そして2番目に登場するのが香川だ。

 12年夏にサー・アレックス・ファーガソン元監督に才能を認められる形でマンチェスター・ユナイテッドに移籍した香川については、「クロップドルトムントでの黄金時代における重要な存在が日本代表の香川だ。2011、2012年のブンデスリーガ連覇で不可欠な存在だった。だが、シャヒンのように欧州のビッグクラブからの誘いはあまりに大きすぎた。彼はセレッソ大阪からわずか35万ユーロ(約4700万円)で獲得したが、マンチェスター・ユナイテッドは1200万ポンド(約18億円)を彼に支払った」と振り返っている。

 そして、ユナイテッド2年目のデイビッド・モイーズ政権下で不遇を味わった香川についての、クロップ監督の魂の叫びも紹介している。

シンジ・カガワは世界最高の選手の一人だ。彼は今、マンチェスター・ユナイテッドで20分しかプレーしていない。左ウイングで、だ。私の心は張り裂けている。本当に泣いたんだよ。セントラルミッドフィールドが、シンジの最高の役割なんだ。ゴール前で、今まで見た誰よりも嗅覚を持っているんだ。

 だが、ほとんどの日本人にとっては、ドルトムントでのプレーより、マンチェスター・ユナイテッドでのプレーの方が大きな意味を持つんだ。彼が移籍した時には、私たちは20分間抱き合って泣いたんだよ」

 愛弟子の窮状を見るに見かねた名将の当時の悲嘆に暮れた様子を紹介する一方で、香川流出後の対応は水際立っていたという。

ゲッツェ、レバンドフスキの穴は痛手に…

「涙が収まった後、彼は本当に素晴らしい仕事をした! ボルシア・メンヘングラートバッハからマルコ・ロイスという、若く、才能溢れるアタッカーを選んだ。2013年にドルトムントチャンピオンズリーグ決勝に導いたのだ」

 香川流出の痛手を、ドイツ代表MFマルコ・ロイス獲得で完璧に補ったと同紙は称えている。

 一方、香川のその後のイングランドでの挫折も紹介している。「シャヒンのように、彼の大きな移籍も想定通りにはいかなかった。カガワは確かにユナイテッドでの1年目にプレミアリーグの優勝メダルを手にしたが、ドルトムントで見せた好調さを示すことに苦労した」と指摘。2014年夏にドルトムントに復帰した。

 2013年にはドイツ代表MFマリオ・ゲッツェが、2014年にはポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキが、それぞれバイエルンに引き抜かれた。ゲッツェ流出については「第一線の先発選手を失った」と、同紙は痛手になったと分析。そしてレバンドフスキ移籍に際しては、イタリア代表FWチーロ・インモービレ(ラツィオ)獲得で補おうとしたが、機能しなかったと紹介している。

 ドルトムント時代から主力流出という運命と戦い続けてきたクロップ監督。今回も香川やシャヒン放出時のように代役を発掘できるのか、それともレバンドフスキ移籍時のように穴を埋められないのか。“コウチーニョ・ロス”をどのように乗り切るのか、その手腕に大きな注目が集まっている。

【了】

フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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