舞台やコンサートといったイベントで、スモークやテープなどを使って会場を盛り上げるのが特殊効果スタッフ。どのような流れで特殊効果がイベントで用いられるのか、屋外と屋内イベントにおける違いなどについて、有限会社酸京クラウドの戸塚洋美さんにお話を伺いました。
特殊効果の種類はさまざま! 本番に向けて実験も行う
――イベントで特殊効果が使われるまでの流れを教えてください。
まずは、依頼主であるイベントの主催者や演出担当の方と打ち合わせをします。その際にどのような演出にしたいのかについてヒアリングし、こちらでプランを組み立てます。
そして、イベントの詳細や時間割を基にどのタイミングでどんな特殊効果を使うかを考え、それから実験を行います。
――実験とは何でしょうか? また特殊効果にはどのような種類がありますか?
実験では、実際に特殊効果として成立するのか、タイミング通りに出せるかなどを事前に試します。
ただし、弊社は住宅街の中にあり大きな音が出る実験は難しいので、周囲に迷惑にならない場所や時間を選んで行います。
弊社で扱っている主な特殊効果は、シャボン玉、炎、花火、二酸化炭素、キャノン砲、舞台用銃、スノー(雪)、ミスト(霧)、雨、バルーン(風船)です。特に高圧ガスを使ったキャノン砲を使う機会が多いですね。紙吹雪やテープ、その他の装飾材を吹き飛ばしたりするために使います。
屋外と屋内のイベントにはこんな違いがあった!
――イベントが行われる場所には屋外と屋内がありますが、特殊効果の仕事において違いはあるのでしょうか?
屋外のイベントだと天候に左右されることがあります。イベントに一番影響するのは風です。風の向きや強さを考えないと、狙ったところに紙吹雪やシャボン玉が飛んでくれない場合があるので、イベント当日に強風が吹いている時は特殊効果の内容を変えることもあります。
でも、屋外だからこそできるダイナミックな特殊効果もあります。例えば、火や水を使うものですね。花火ももちろん屋外でなければできません。
一方屋内では、空調の影響を考えないといけない場合があります。屋外と同様、シャボン玉やミスト、煙などが空調から出る風の影響を受けてしまうことがあるからです。
――特殊効果スタッフには欠かせない、いつも持ち歩いている道具はありますか?
必ず持っているのがレンチ、ニッパー、そしてビニールテープの3点です。
レンチとニッパーは、特殊効果を行う機械を調整したり、壊れた物を修理したりするために使います。ビニールテープは、電源ケーブルを束ねるために使います。電源ケーブルは長いものでは50mにもなるので、ビニールテープは必需品です。
自分のアイデアがきっかけでお客さまの感動を感じられるのが楽しい
――繁忙期はありますか? また、お休みはちゃんと取れますか?
イベントがあるときは朝7時から現場に入って、仕事が終わるのが夜中になることもあります。忙しい時期はライブや音楽フェスが増える夏場で、その時期の週末は休まず働きますが、しっかりと代休も取っています。イベントが少ない時期とそうではない時の差が大きいですが、仕事は楽しくやりがいを感じています。
――今までで一番楽しかった仕事は何でしょうか?
お台場で行われたDJのダンスミュージックフェスティバルで、炭酸ガスの演出をしてお客さまが驚いてくれたときです。
この時は特に台本がなく、私の好きなタイミングで炭酸ガスを出すことができたんです。夏だったので炭酸ガスは涼しく、それもあってお客さまに喜んでもらえたんだと思います。ステージと観客席の距離が近いためリアル感があり、お客さまの感動もじかに伝わってきました。私のやり方を採用してくれ、さらにイベントが盛り上がったので、とてもうれしかったですね。
イベントを盛り上げる演出は、入念な打ち合わせと試行錯誤があるからこそなせる技なんですね。
特殊効果スタッフをはじめとするイベント業に携わる仕事に興味がある人は、舞台やコンサートなど好きなイベントに足を運んで、改めて一つひとつの演出を肌で感じてみてはいかがでしょうか。
【profile】有限会社酸京クラウド 特殊効果スタッフ 戸塚洋美
有限会社酸京クラウド http://sankyocloud.co.jp/
取材協力:有限会社酸京クラウド
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