「驚き過ぎてどこか他人事でした」。初めて手掛けたライトノベル小説『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』(以下、『デスマ』)のアニメ化を聞いたときの気持ちを答えたのは著者である愛七ひろ。小説投稿サイト『小説家になろう』発の作品であり、PV数は5億超という大人気小説のアニメ化ということで、著者の愛七に本作誕生のきっかけや、アニメ化について、そして自身も“デスマーチ”経験者のプログラマーという肩書を持ちつつ、小説を書き続けてきた思いについて話を聞いた。

【関連】『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』フォトギャラリー

 本作は、デスマーチ真っ最中のゲームプログラマー“サトゥー”こと鈴木一郎が、仮眠を取っていたはずが、気付くと異世界に迷い込んでしまっていたところから始まる異世界冒険ファンタジー。視界の端には、仮眠前に作っていたゲームを思わせるメニュー画面。そして、ひょんなことからこの異世界で最強の力と財宝を手にしてしまった“サトゥー”が、夢か現か、“異世界観光”の旅に出発する。
 
 今回、ついにアニメ化となった『デスマ』。だが、愛七いわく「デスマは放送に引っかかりそうなことが多い」という認識があったそうで、書き始めた当時の担当編集と「『(アニメ化は)難しいねぇ』と話していた」と明かす。ゆえに「ドラマCDになれば嬉しいな、という気持ちでした。それが一足飛びこえて、アニメ化ですからね。びっくりです」と言い、“どこか他人事”という気持ちもあったが「内心はその場で、床でゴロゴロ転げ回りたいような気持ちでした」と照れ笑いを浮かべた。

 本作は、主人公サトゥーの本業が“デスマーチ中のプログラマー”という点がユニークであり注目を集めている。愛七も、プログラマーという顔を持っていることから、「(デスマの)半分くらいは実体験です」と苦笑する。「土日に小説を書き、平日は会社から帰ってきて寝るまでの間に、少し時間があれば思いついたネタなどを書いたり、校正をしていました。基本は土日に書きためていました」と、プログラマー小説家、二足のわらじを履いていた当時を振り返る。

 またこの“プログラマー”という著者自身の職業が、主人公サトゥーのキャラクター設定に少なからず影響があったようで「実生活のデスマーチを受けて、感情の起伏が少なくなっていったというキャラクターなのです」とのこと。だが、“感情の起伏が少ない” という点が、「絵コンテ担当の方がすごい苦労しているみたいです」と、アニメスタッフにとっては四苦八苦している点なのだという。「主人公が熱くないため、テンプレートの反応が描けず、周囲にいるキャラクターがその分反応する…というのが大変みたいです」。
 
 冒険物語なのに “主人公が熱くない”というユニークな設定には、アニメスタッフだけでなく作り上げてきた愛七自身も頭を悩まし、「小説も、クライマックスの描き方が大変なんです」と漏らす。感情の起伏という点だけでなく、“最強の力”も持ち合わせていることから「ピンチになる状況が作れない。追い込まれたら一瞬で勝ってしまうので。主人公が万能過ぎて、さてどうやってピンチにさせようか…といつも考えています(笑)」。(取材・文:ほりかごさおり
 
 感情の起伏が少ない、万能過ぎる主人公サトゥーはどのように描かれるのか…。TVアニメ『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』はTOKYO MXにて1月11日より毎週木曜日24時からスタート。

※『小説家になろう』は、株式会社ヒナプロジェクトの登録商標です

アニメスタッフ泣かせ?『デスマ』原作者・愛七ひろが明かす主人公の困った人物像(C)愛七ひろ・shri・KADOKAWA カドカワBOOKS刊/デスマ製作委員会