さまざまな書類の「デジタルとアナログ」についての投稿が先日、SNS上で話題となりました。きっかけは企業などで多用されている、「パソコンで作った書類を印刷後、印鑑を押して郵送し、その紙をスキャンしてストレージに保管する」という作業に関する投稿。これに関連して「履歴書」のデジタルとアナログについても話題になり、「エクセルで作成した履歴書で面接通過したけど、入社時に改めて手書きの履歴書を提出させられた」「名前だけ直筆ならよさそうなのにダメなの」「手書きの人だけ採っている会社もあるらしい」など、さまざまな声が上がりました。

 最近では、履歴書をパソコンで作成することも珍しくありませんが、手書きの履歴書がベストという価値観があるのも事実。人材を採用する企業側は履歴書についてどのような考え方を持っているのでしょうか。新卒関連事業を手がけるベネッセi-キャリア取締役兼新卒事業本部本部長の大竹航さんと、パーソルキャリアが運営する転職サービス「DODA」編集長の大浦征也さんに、新卒と転職それぞれの履歴書について聞きました。

新卒であれば「手書き」が好印象

Q.近年の新卒/転職市場のトレンドとして、履歴書は手書きとパソコンのどちらが主流と言えるのでしょうか。

大竹さん「新卒の場合、まだ手書き作成が主流です。大手就活サイトがパソコンでの独自履歴書を運用するなど、応募書類には活用されてきていますが、選考の際はまだ手書きの履歴書の提出を求められるケースが多いのが実情です」

大浦さん「転職活動の場合、パソコンでの作成が主流となっています。企業側から『手書きの履歴書を提出』と指定がある場合は手書き、指定がない場合はパソコンで作成しても問題ありません」

Q.「手書きの方がパソコンよりも有利」などの差異はありますか。

大竹さん「新卒の場合は手書きが好印象です。手書きの方が人柄や誠意、志望度が伝わります。ただし、字のきれいさや余白量によってはマイナスに判断されることもあるため、書く時は注意が必要です。転職活動とは異なり、新卒はスキルや実績よりも人柄や素養を見ています。また、企業によっては応募人数が膨大になるので、履歴書が初期フェーズの選考に活用されているとも言えます」

大浦さん「転職活動においては、指定がない場合は基本的には手書きとパソコンのどちらで記載しても有利、不利はありません。ただし、企業側から『手書きの履歴書を提出』と指定があるにもかかわらずパソコンで作成したものを提出したり、『パソコンで』と記載があるにもかかわらず手書きで提出したりすると、不利となる可能性があります」

Q.業界や業種、職種によって違いはあるのでしょうか。

大竹さん「メーカー・商社などの老舗企業は手書きを重視する傾向にありますが、IT業界はパソコン作成とする企業が徐々に増えてきています」

大浦さん「最近ではほぼないと思います。転職活動の場合、新卒の就職活動以上に時間がない中で動くことになるため、特に指定がない状況で履歴書を書く時には、書き間違えて一から作成し直さなければならない手書きよりも、パソコンで作成して残りの時間を企業研究に充てた方が賢明と言えます」

Q.「手書きの方がよい」と信じられているのはどうしてだと思われますか。

大浦さん「昔はパソコンで履歴書を作成することが一般的ではなかったからです。新卒の就職活動時に手書きで作成しているので、その経験に基づき『履歴書は手書きの方がよい』と考えている人もいます。また、公的な文書は紙で提出する場合がいまだ多いことや、結婚式の案内や年賀状が紙で送付される、などの側面が影響しているものと思われます。文具店に行くと履歴書が売られており、手書きで書くように指導しているので、手書きの方がよいと思っている人もいるのです」

(オトナンサー編集部)

履歴書は手書きすべき? パソコンでも大丈夫?