俳優・玉木宏が、主演映画『悪と仮面のルール』で、愛する女性を守るために殺しを重ねる主人公を熱演している。「誰かのために、あそこまでできるというのは、ある意味で幸せなことだと思う」と役柄への思いを明かす玉木に、驚きの役づくりや俳優としてのスタンス、そして今年4月に迎える芸能生活20周年について話を聞いた。

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 中村文則の同名小説を基にする本作は、世の中に悪をなす“邪”となるために生み出された久喜文宏(玉木)が、愛する香織(新木優子)を守るため、殺人者として生きる姿を描く。香織を守るために父すら殺める文宏について「香織がいなければ、父親を殺すこともなかったし、顔を変えることもなかった。すべては香織がいたからこそだと思う」と語る玉木。「誰かのために、あそこまでできるというのは、ある意味で幸せなことだと思うし、そこまで誰かを一途に想い続けること自体、なかなか難しい世の中になっていると思う」と考えを明かし、「文宏のように、一途であれたらいいですよね」とも話す。

 素性を隠すために整形を行っている設定の文宏を演じるうえでは、特殊な役づくりも敢行した。「表情筋を強張らせることによって、顔が上手く使えない感じを、少しでも出せたら」と、知人の鍼灸師(しんきゅうし)に約50本の針を打ってもらってから撮影に臨み、リアリティを追求したのだ。驚きのアプローチをサラリと解説するその姿からは、作品に対して真摯に向き合う姿勢が感じ取れる。

 そんな玉木も、デビュー当時には自分本位な部分があったという。「18歳からこの仕事を始めて、20半ばくらいまでは、ある程度知名度が上がらないと好きなことができないと思っていた。自分の名前を有名にすることばかりを考えていた気がする」と告白するが、その姿勢はキャリアを重ねるにつれ、徐々に変化していったそう。今の自身については「自分本位ではなくなった」としたうえで、「絶対こうしたい、ああしたいというのは、僕はゼロ」と役者として柔軟なスタンスを持つ。

 4月に迎えるデビュー20周年については「あっという間だなという感じはするんですけど、20年という数字を見ると、ものすごく長い時間を過ごしてきたと思う」としみじみ。37歳という自身の立ち位置を「現場で間に挟まれている、宙ぶらりんな年代」と分析する彼は「もっといろいろな経験をして、幹を太くして、プラス、いろいろな役で枝を増やして、大きな木を目指す」と力説。また「役として、もっともっと、エグいこともやりたいなと思う。常に飽きられないように、自分自身がチャレンジできる環境で、何かにトライしていたい」とストイックな心持ちをのぞかせる。

 NHK連続テレビ小説あさが来た』やテレビドラマのだめカンタービレ』への出演を経て、日本でもトップクラスの役者となった玉木だが、デビューしてから数年はアルバイトと役者を掛け持ちする日々が続いた。当時については「時間ばっかり取られて、好きなことができないときではありましたけど、いまだにそのときに出会った人と仲良くしていますし、振り返っても、本当に良い時間だったと思っています」と微笑む。出会いを大切にするのは、役者業でも同じ。「まだ触れたことがない監督さんの元で、ぐちゃぐちゃになってみたい」。そう語る玉木の中には、爽やかイメージとは異なる、貪欲な役者としての生きざまがあった。(取材・文・写真:岸豊)

 映画『悪と仮面のルール』は1月13日より全国公開中。

玉木宏、『悪と仮面のルール』インタビュー クランクイン!