住居の購入は人生の一大イベント。金額が大きいだけに、より慎重に検討したいところだ。だが、もし値引きされていたらうれしい反面、疑いの目を持つという人もいるだろう。「教えて!goo」にも「新築マンションの値引きの真相を教えてください」と、マンション購入を検討するユーザーから、購入予定の部屋が値引きされ、その理由が心配との投稿が寄せられている。大きな買い物だけに「値引きするのは問題があるからでは……」と気になるのも当然だ。そこで今回は不動産コンサルタントの野口豊一さんに、新築マンションの値引きの真相を教えてもらった。

■値引きの理由の多くは売れ残り

まず知りたいのは、やはり値引きがされる理由だ。過去の事例にどのようなものがあるのか聞いてみた。

「たとえば冬に値付けした後に、夏に隣の工場の騒音や臭気が発覚し、その工場に面する住戸が値引きされた例があります。しかし、基本的に価格はあらかじめ立地環境などを調査して決められるものです。あとから何かが発覚して……ということはほとんどありません。多いのはマンションの完成時に売れ残っている、あるいは完成予定の3カ月前に半数以上が売れていなく見通しが悪いというようなケースです。つまり販売不振ですね」(野口さん)

もし売れ残っているところを見つけたら、値引きしてくれる可能性があるということだろうか。

「可能性はありますね。ただし、売れ残っていても、分譲会社は『値引きします』と大々的は言いにくいものです。というのも、すでに当初の価格で契約した人がいるのに、他の物件の値引きをすると、既契約者から価格変更を申し込まれることがあるからです。これが原因で裁判になり、分譲会社が敗訴して既契約者に差額を返金した例もあります。もし堂々と値引きを広告している物件があったとしたら、既契約者にもなんらかのサービスを施していると思われます。また、広告で『建物内モデルルーム』、『即入居可』、『家具付き』などとうたわれている物件は、値引き、もしくはなんらかの費用負担に応じてくれる可能性が十分あるといえるでしょう」(野口さん)

通常の物件と違った条件が示されている場合は、価格交渉ができる物件の可能性がある。

■時間が経てば、さらに値引きされることも

値引きされている物件が、さらに値引きされる可能性はあるのだろうか。

「売れ残りがある場合、分譲会社は見学に来た人などを対象にDMなどで盛んにアプローチします。それでも売れなければ、状況が変化することがあります。大手の分譲会社が中小の会社に手数料を支払い、販売を委託することが少なくないのです。実は新築マンションの値引きは会社によっても差があり、中小の会社のほうが値引きすることが多いのが現状です。中小の会社が、購入する可能性がある人に『価格は相談に応じます』と、さらなる攻勢をかけ、100万円単位で値引きすることも珍しくありません」(野口さん)

このようなことは、同じ地域で、あとから立地環境がよかったり、よりリーズナブルな新築マンションが出現した場合に起こるという。

■少しでも迷いがあれば専門家に相談を

値引きの仕組みがわかったところで、そのような新築マンションの購入を検討する場合の注意点も教えてもらった。

「購入予定者が値引きにより警戒したくなるのもよくわかりますが、少しでもリーズナブルに入手できるのであれば、それは悪いことではありません。そのマンションの売れ行きが悪い原因が分かり、その理由が受け入れられるものであれば、お買い得と考えてよいのでは。ただ不動産の現状を踏まえつつ、第三者の視点で客観的に判断したほうがよいことも多々あります。少しでも不安がある場合、家の購入は大きな買い物でもあるため、不動産コンサルタントなどの専門家に相談するのもよいでしょう」(野口さん)

野口さん曰く「多くの人は、モデルルームで設備や間取りを重視しますが、専門家は必ず『設計図・地質図』を検証します」とのこと。2015年に世間を賑わせた、横浜市の傾斜マンション問題のような例もあるからだ。金額も大きい買い物となるので、失敗しないよう納得いくまで検討を心がけたい。

●専門家プロフィール:野口 豊一
不動産専門のコンサルタント会社、(株)アイリスコンサルタント代表取締役。1982年宅地建物取引主任者1998年にファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。35年におよび不動産業、不動産金融を経験し、新築・中古マンションの売買のアドバイスやサポートに高い評価を受けている。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

新築マンションなのに値引き!の真相を専門家が暴露