ノートルダム清心学園理事長で、現役シスターでもある85歳の渡辺和子さんが説く指南本『置かれた場所で咲きなさい』が、各書店やランキングで存在感を示しています。

 74年の岡山県文化賞(文化功労)をはじめ、山陽新聞賞、済世賞、千嘉代子賞、三木記念賞などを受賞したことのある渡辺さん。同書では"生き方"について、「時間の使い方は命の使い方。置かれたところで咲いていてください」、「無理に咲けない時は、次に咲く花をより大きい美しいものとするため、代わりに根を下へ下へと降ろし根を張りましょう」と、一生懸命生きることの尊さを、優しい言葉で綴っています。

 なかでも、人格論という授業での、信頼についてのお話は印象的です。「100%信頼しちゃだめよ、98%にしなさい」と、渡辺さんは言うのです。シスターでもある彼女からは、「120%相手を信頼しなさい」と教えられても良い気がするのですが、それについて彼女はこう持論を展開しました。

 「人間は不完全なものです。それなのに100%信頼するから、許せなくなる。100%信頼した出会いはかえって壊れやすいと思います。『あなたは私を信頼してくれているけれども、私は神さまじゃないから間違う余地があることを忘れないでね』ということと、『私もあなたをほかの人よりもずっと信頼するけど、あなたは神さまじゃないと私は知っているから、間違ってもいいのよ』ということ......そういう『ゆとり』が、その2%にある気がします」

 確かに間違うことを許すことができる『ゆとり』は、どのような人間関係であっても必要だと言えます。

 100%相手を信頼することは美談にも聞こえますが、98%に留めていますと言える人は、どこか高い品性を感じることができるのではないでしょうか。

『置かれた場所で咲きなさい』渡辺 和子 幻冬舎