JR西日本が安全対策に関する5か年計画を策定しました。今回の計画では安全性を向上した新製車両の導入のほか、無線を使った安全システムの導入も明記されています。

新幹線の台車トラブル「極めて重大な問題」

JR西日本は2018年2月1日(木)、安全対策の指針となる5か年計画「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」を策定したと発表しました。無線式の自動列車制御装置(ATC)を導入するなど、新しい技術の導入も盛り込んでいます。

JR西日本は2005(平成17)年4月に発生した福知山線脱線事故の反省を踏まえ、2005年度に「安全性向上計画」を策定。続いて計画期間を2008(平成20)年度から2012(平成24)年度までとした「安全基本計画」と、2013年度から2017年度までとした「安全考動計画2017」を策定しました。今回策定された「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」は、これらの計画を引き継ぐもの。計画期間は2018年度から2022年度までです。

東海道・山陽新幹線では2017年12月、JR西日本が保有するN700系電車で台車に亀裂が入るなどの重大インシデントが発生。「鉄道安全考動計画2022」は「新幹線の運行を脅かす台車の亀裂を発見できず、また異常を感じたにもかかわらず運行を継続させたことについて、極めて重大な問題」とし、これを受けて「安全最優先の意識の浸透」「組織の安全管理(安全マネジメント)の充実」「安全を維持する鉄道システムの充実」を盛り込みました。

新技術「無線式ATC」導入を明記 新製車両の導入も

「安全最優先の意識の浸透」では、安全に関する研修やミーティングなどを実施。「迷わず列車を止める」ことを大切にする価値観を浸透させます。「組織の安全管理(安全マネジメント)の充実」では、リスク抽出の新たな仕組みを導入したり、リスクを評価する手法を改善するなどして、重大な事故の防止を実現します。

一方、「安全を維持する鉄道システムの充実」では、山陽新幹線や近畿エリア、広島エリアなどに「より安全性の高い新製車両」を導入。自動列車停止装置ATS-P)や新幹線運行管理システムの更新なども進めます。このほか、無線式ATCの導入を「新技術による保安度向上」として明記しました。

列車の位置や速度などのデータのやりとりを無線で行う安全システムは、海外の都市鉄道などで広く普及。日本ではJR東日本が開発した「ATACS」が埼京線仙石線に導入されています。JR西日本も「車上主体列車制御システム」という名前の無線式システムの開発を進めており、2015年には同社の試験車両「U@tech」を使った試験が行われました。

【写真】無線式の試験で使われた試験車両「U@tech」

山陽新幹線を走るN700系。今回策定された「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」は2017年12月に起きた重大インシデントの影響を大きく受けている(2011年10月、恵 知仁撮影)。