飲食店への「営業妨害」に関する投稿が、SNS上で話題となっています。きっかけは、東京都内で海鮮丼を提供する飲食店が「近隣の寿司屋から嫌がらせを受けている」と投稿したこと。さらに同店は「当店の鮪やいくらは悪い事して仕入れているとか、ヤクザから仕入れているから安く出来るとか事実無根な事、言われて困っています」「当店は早朝、築地市場に足を運び、現金で仕入れています」とツイートしています。

 これを受けてSNS上では「クソみたいな嫌がらせですね」「同業者として看過できない」など励ましの声がたくさん寄せられていますが、こうした嫌がらせ行為にはどのような法的問題があるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

信用毀損罪や名誉毀損罪の可能性

Q.他店について事実無根のうわさを流す行為には、どのような法的問題がありますか。

牧野さん「刑法の信用毀損罪や名誉毀損罪にあたる可能性があります。信用毀損罪とは、虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて人の信用を毀損する犯罪で、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(刑法233条)。ネット(SNS)上で『虚偽の風説を流布し人の信用を毀損する』行為はこれに該当する可能性があります。また名誉毀損罪については『公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者はその事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処する』とされています(刑法230条)。同じくネット上で『公然と事実を摘示し人の名誉を毀損』していますので、これに該当する可能性があります。企業の名誉も対象になりえます。さらに、上場企業の株価に影響を与えようとしてデマ情報を流した場合は、金融商品取引法158条の『風説の流布』にあたる可能性があります。これに違反すると、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処せられます」

Q.事実無根のうわさによって売り上げや評判などに悪影響を与えた場合、どのような法的ペナルティーが科されうるでしょうか。

牧野さん「上記の刑事責任の可能性のほかに、民事上の責任が発生します。『競争会社に損害を与えようしてデマ情報を流した場合、不正競争防止法第2条1項15号『競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為』にあたり、損害賠償責任を負う可能性があります。また、競争会社に損害を与える目的ではなく、一般人が単にその会社に損害を与えることを意図して、または不注意でデマ情報を流して損害を与えた場合は、前述の信用毀損や名誉毀損の不法行為に基づいて発生した損害を賠償する責任を負う可能性があります(民法709条)」

Q.過去に同種の事件(裁判)の例があれば教えてください。

牧野さん「飲食店における、同種の民事の裁判例は見当たりません。発信者の特定までに多額の費用と時間がかかることから、裁判にまで発展しないものと思われます。ただし、刑事事件となると捜査機関が全力を挙げて発信者を特定しますので、裁判例があります。2011年に神戸市の男性が、自らが保有する株式の株価を吊り上げる目的で、インターネット掲示板に虚偽の企業情報を書き込んだとして、金融商品取引法158条の『風説の流布』で逮捕された事例があります」

(オトナンサー編集部)

他店に対する事実無根のうわさ、法的には?