(C)宮新・神崎裕也/集英社 2018「不犯」製作委員会

マンガ原作映像化作品が続々開される中、人気漫画『不犯』があのホラー映画界の鬼才白石晃士監督の手で映画化された。松坂桃李悪魔的な主人公を演じることでも話題の本作を、今回は初日の最終回で鑑賞してきた。映画サービスデーということもあり、場内は満席。松坂桃李ファンの若い女性が多い中で鑑賞に臨んだ本作だが、果たしてその出来はどうだったのか?

ストーリー

都会のどん中で、次々と起きる変死事件。

現場で必ず撃されるスーツの男。彼の名は相吹正(松坂桃李)。ある電話ボックスに殺してほしい理由と連絡先を残すと、その「願い」をえてくれる男だ。

ただし、依頼人の殺意が純な物でないと、逆に恐ろしい事態を招くという。

しかも彼の犯行は、「見つめるだけで相手を死に追いやる」ため、罪には問われない「不犯」なのだ。

果たして、その手口とは?(公式サイトより)

予告編

原作からの改変に賛否両論!果たしてその内容とは?

今回ネットレビューや感想で立ったのが、「予想と違った」あるいは「ラスト意味不明」などの意見。

自分も正直映画の中盤までは、原作通りのエピソードが幾つか続き、それを繋ぐための狂言回しとして、松坂桃李が演じる主人公相吹が登場する展開に、「あ、また原作通りの映画化なのか」と思いながら鑑賞していたのだが・・・。

今回映画化されたのは原作の4巻あたりまでであり、実は映画化に当たっては要登場人物の性別が変更されたり、重要な人物の死がサブキャラ扱いにされてしまった関係で後の展開に一切絡んで来ないなど、原作ファンであればある程戸惑う様な、大幅な変更が成されている。

更にネットの感想の中には「意外とホラー映画だった」との意見と同時に、原作を知らない・読んでない、とのも多かった本作。

(C)宮新・神崎裕也/集英社 2018「不犯」製作委員会

実は原作も初期の方は映画以上にホラー寄りの描写が多く、相吹のキャラ設定も普通に周囲の人々に溶け込んで生活している様に描かれている。
例えば、下宿先の部屋にネコを大量に飼っていて大家さんと普通に会話もするし、殺しの依頼で収入を得ているなど、あくまでも人間の男として描かれているのだ。

元々上映時間が限られている以上、原作物の映像化作品でしかも未完の物を映像化する際には、原作からどの部分を生かしてどの部分を削るか?そして、映画としてどの様な結末を設定するか?その部分の脚色が非常に重要となる。今回の大幅な編は、そのために必要な選択肢の一つだったのは間違いい。ただ、要登場人物の性別変更は原作ファンにはかなりの違和感を与えるものであり、キャスティングの関係で仕方がかったとしても、この部分への多少の配慮は必要だったのではいだろうか?

だが、それを補ってくれるのが、前述した様に原作では人間として描かれている主人公を、一種の悪魔的存在として描いている部分だ。
この変更はさすがに白石監督ならではの物であり、そのBGMが連想させるイメージと相まって、相吹が映画では全に「人ならざる者」として描かれることで、更に得体の知れない不気味さを増して観客に迫って来るのが見事!

ちなみに相吹がを刺されても気な理由は、実は原作ではちゃんと説明されているのだが、それでは相吹が生身の人間になってしまう。

ネットではこの部分の説明不足を摘するも多かったが、本作の様に人間でない存在として描くのであれば、ここは説明しないで正解だったと言える。ジョン・カーペンター監督の『ハロウィン』に登場するブギーマンの様に、人の悪夢を具現化した様な常的存在、それこそが映画版の相吹なのだ!

今回、映画版の相吹を見事に演じた松坂桃李の演技は必見なので、是非劇場でご確認を!

(C)宮新・神崎裕也/集英社 2018「不犯」製作委員会

豪華な出演者の意外な役柄での登場も、本作の魅力!

とにかく本作の出演キャスト!単に知名度の問題ではく、「え、この人がここに出てくるのか!」そんな意外性と嬉しさが味わえるのだ。

例えば、本作での間宮祥太朗オーラの消し方の凄さと、イケメンとは思えないある行動!
矢田亜希子の予想外入浴シーンに、安田顕小林の短いながら絶妙の登場シーン。更に玉なのは野恵理菜の好演!その「えっ!」と驚く役柄はファンにとっては思わぬお宝と言えるだろう。

もちろん、白石監督作品のファンには、代表作『戦慄怪奇ファイルコワすぎ!シリーズ』のあのキャストが所々で出演しているのも、大きな楽しみと言える。果たしてがどのシーンに出演しているのか?それは是非劇場で!

ちなみに、現在放映中の『仮面ライダービルド』で悪役ナイトローグこと氷室幻徳を好演中の水上が、本作の冒頭で相吹の犠牲となる悪徳融屋の木を演じているので、全仮面ライダーファンにも全でオススメします!

(C)宮新・神崎裕也/集英社 2018「不犯」製作委員会

最後に

本作で印に残ったのは、間宮祥太朗の好演もあって本作の見せ場となっている白石晃士版『ダークナイト』とも言えるラストの展開。

人間の良心を試す様な「究極の選択」は、思えば映画ミュージアム』のスピンオフとして製作された『ミュージアム序章』や、あの衝撃の問題作『グロテスク』など、白石監督の作品で繰り返し用いられて来た共通のテーマだった。

前述した通り、原作から大幅な編を加えた本作だが、実は白石監督の軸は今回もブレていない。制作規模の大きさに人気俳優の起用、そして人気マンガ原作映像化。これらの状況から来る制約やプレッシャーに負けることなく、映画版の『不犯』として見事に成立させた白石監督の姿勢は、絶対に評価すべきだろう。

『勝手にふるえてろ』の時にも触れたが、原作映像化作品とは別物であり、むしろどの様にアレンジを加え脚色したか?が映像化作品の魅だと言える。但し、変した結果が原作を大幅に下回った場合、編は即悪となって製作側への悪評として降りかかって来る。そのため、原作ビジュアルの再現に重点を置く作品が多いのも事実

実際この『不犯』も、原作内容そのままで映像化するなら正直テレビの連続ドラマでも十分に出来るが、今回の映画化で大幅な編を恐れなかった白石監督の挑戦は、今の原作映画の安易な制作状況に一席を投じるものだからだ。どうか白石監督には、これからも勇気を持って日本映画界に刺を与えて行って頂きたいと、心から願っている。

(文:滝口アキラ)

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