日々の仕事の終了後に、名刺を1枚1枚パチリ。「エリートビジネスマン」をIT企業の社員タカヤさんにとって、仕事でできた人脈を整理するために、名刺管理アプリ名刺情報を取り込むのが一番の楽しみだ。

こうして何人分ものデータベースが作られ、エリートビジネスマンになるために役に立つかどうかはわからないが、今後のキャリア形成に向けた宝物と考えているようだ。

ただ、タカヤさんの心配は、転職などで会社を辞める際に、名刺の実物や、アプリデータまで提出しなければならないかどうかだ。名刺アプリ情報仕事を通じて得たものであれば、これらのデータは会社のもの、ということになってしまうのだろうか。武田健太弁護士に聞いた。

退職時に返却する必要はない

「退職時に、名刺の実物や名刺管理アプリデータ(以下『名刺等』といいます)について、会社に対して返却する必要があるか否かについては、名刺等が「営業の秘密』(不正競争防止法2条6項)といえるかが問題となります」

営業秘密とはどのようなものか。

「『営業秘密』に該当するためには、(1)秘密管理性、(2)有用性、(3)非知性(然と知られていないこと)の全ての要件を満たしている必要があります。名刺等が営業秘密に該当しない場合については、退職後も、従業員が自由に使用することができると考えられます。

裁判例においても、会社を退社した役員による名刺帳持ち出し行為について、営業の秘密の該当性が争われた件について、『名刺記載情報が非知とはいえず、同名刺帳に有用性・秘密管理性は認めれず、営業秘密ということはできない』(東京地方裁判所平成27年10月22日)と判示したものがあります。

また、退職時に、名刺等を強制的に返却させることは、従業員の職業選択の自由憲法22条1項)を過度に制限することにもなりかねません。

ですから、原則として、勤務中に得た名刺等は、退職時に返却する必要はないと考えられます。ただし、労使間で秘密保持契約を締結している場合や、会社の秘密管理規程などにより社員に周知している場合など、会社に対し名刺等の返却することになり得る場合もあります。」

弁護士ドットコムニュース

【取材協弁護士
武田 健太郎(たけだ・けんたろう)弁護士
大学時代にサッカーで全大会を二連覇し、その後、日本フットボールリーグJFL)でサッカー選手として活動しました。また、教員免許も取得しています。
現在は、労働問題の他、離婚男女問題、交通事故学校問題などの民事事件から、成人・少年等の刑事事件まで幅広く扱っております。

事務所名:武田健太法律事務所
事務所URLhttps://www.bengo4.com/tokyo/a_13102/o_25762/

「名刺管理アプリ」のデータを増やすのが喜び…退職時には会社に渡さないといけない?