福顔酒造(©ニュースサイトしらべぇ)

新潟県のほぼ中央に位置する三条は「ものづくりのまち」。鍛冶の伝統を受け継ぎ、金属加工を中心に多様な加工技術が集積している。

■清流・五十嵐川の恩恵を受けて

そもそもの起こりは、江戸時代の初め頃、五十嵐の度重なるに苦しむ農民のために当時の代官が江戸から釘職人を招いて、農家の副業として釘の製造を導・奨励したことと伝えられる。

の南東、との界にそびえるのは帽子岳。この山にを発する五十嵐を流れ、やがて信濃川に合流する。アユヤマメウグイなどが生息し、にはサケが遡上するという清流だ。

「いがらし」ではなく「いからし」と呼ばれるの名前は、垂仁天皇の第八皇子・五十日足命(いかたらしひこのみこと)に由来するとか。

三条下田地区周辺はこの第八皇子が開拓し、その子孫が「五十嵐(いからし)」を名乗ったためと伝えられる。 福顔造の銘柄『越後五十嵐(えちごいからしがわ)』は、このに因むもの。

三条はこの系の豊かなと肥沃な土地に恵まれて、コメをはじめ多な農産物の産地でもあります。豊かなコメがあったので、三条には何軒かの蔵がありましたが、今は当社1軒のみになってしまいました」

と、福顔造の5代目蔵元で代表取締役小林章さんは話し始めた。

■「福顔」の由来は?

福顔酒造(©ニュースサイトしらべぇ)

寿様がシンボルマークの福顔造 創業は1897年、代表銘柄は『福顔』。屋号「寿屋(うすや)」として『松風』という銘柄も出荷していたが、統制により『福顔』を残し、現在に至っている。

「福顔は縁起のいい名前でしょう」と小林社長銘のいわれを話してくれた。

「初代・小林正次は飲んだ人が福の顔になる旨いを造り、日本酒で人を幸せにしたいとの志から、この名を付けたようです」

福顔ので、福顔の人をつくる。飲むと福を呼び、至福の時を提供するお酒。これが創業以来の基本理念だという。

「二代小林正次に小林訓として伝えられ、正次という名前は三代目まで訓と一緒に当が引き継いできました。である四代目は正次を名乗らなかったので、私も名前は引き継いでいませんが、基本理念は受け継いでいます」

福顔の人のシンボルとして七福の一人である恵寿様を、福顔造のシンボルマークに採用。飲んでにこにこ顔のえびす顔になるおが、福顔造の日本酒であるとの想いを明かしてくれた。

■五十嵐川伏流水で仕込む

福顔酒造(©ニュースサイトしらべぇ)

福顔になってほしいと願いを込めた代表銘柄 そんな話を聞いては、是非とも恵寿様の福顔にあやかりたいもの。して、その味わいやいかに。

の旨みのふくよかな香り、飽きのこないゆかしい旨み。ほのかな甘みと柔らかな味が醸し出すハーモニーが絶妙です」との説明。なんとも飲んべえ心をくすぐられるではないか。

そんな味わいは何に由来するのかと問うと、小林社長は答えた。

「仕込みでしょうね。清感のある柔らかくさらりとした味わいは、五十嵐の伏流に負うところが大きい。うちの五十嵐と、五十嵐が育むで造っています」

■超軟水を造りに活かす

ここにを供給している浄場は、五十嵐の伏流。取される原質が良いことから、緩速濾過といわれる方法で浄化されているそう。

緩速濾過とは品を使わずに、細かい砂の濾過層にゆっくりと原を活かす方法で、自然に極めて近いとのことだ。

しかもこの五十嵐は県内でもトップクラス軟水。昔は、発酵が弱い軟水では、思うような造りができなかったといわれる。

この軟水と向き合い、辛抱強く努を重ねた末に、仕込みとして造りに上手く生かすことができたからこそ、福顔造は今日までこの地で生き残れたのであろう。

事実、3年連続で全鑑評会において賞を受賞するなど、その造りはますます磨きがかかっている。

■契約栽培の田んぼで田植え・稲刈りに参加

福顔酒造(©ニュースサイトしらべぇ)

こだわりのコメで醸すは純になる 造りで最も大事にしていることは「地産地消」だという。従って原料も地元での契約栽培が体。

百万石を使い地元で古くからされている『福顔』、五百万石と越淡麗を使った『越後五十嵐』、山田錦で醸す『越後平野』が3本柱だが、山田錦以外は地元産。

「越淡麗は10年ぐらい前から契約栽培をしてもらっています。どうしたらいいができるか研究しながら。全量買い取りが前提です。田んぼが近くだから、田植え・稲刈りに参加していますよ」

■「地産」と「地消」にこだわり

その越淡麗が十分に収量をまかなえるようになって、創業120年記念に『福顔特別純』を発売。1年熟成させて出荷したという。契約栽培の越淡麗を100%使用、精歩合は60%だから吟醸規格なのに、その表記はない。

これだけコメにこだわれば、蔵で醸す日本酒全てが純となる「全量純蔵」をすのも当然の流れだろう。しかし、小林社長は「地産」だけでなく「地消」にも重きを置いていた。

「純蔵宣言といきたいところですが、純に慣れ親しんでいない地元が大切なので、全量は難しいですね」

実際の規格よりもワンランク低い値段設定で、コストパフォーマンスの良さに定評があるのも、飲んだ人の福顔にこだわる創業以来のDNAなのだという感を強くした。

蔵元を代表するお酒を紹介しよう。

(1)『宇寿屋 純米大吟醸』

福顔酒造(©ニュースサイトしらべぇ)

地元・三条産の越淡麗を使用した、手造りならではの温かみと繊細でキレのある純米大吟醸。ふくよかでありながらキレの良い味わいが楽しめる。

(2)『越後五十嵐川 大吟醸』

福顔酒造(©ニュースサイトしらべぇ)

地元・三条産の越淡麗を使用。上品な香りとすべるような喉越しが特長。アルコール度数を下げて飲みやすく仕上げている。

(3)『福顔 本醸造』

福顔酒造(©ニュースサイトしらべぇ)

古くから地元でされている定番バランスのとれたの旨さ、飽きのこない爽やかな飲み口。燗としてもお勧め。

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(取材・文/伝農浩子

飲んでにこにこ「えびす顔」になる『福顔』 三条市唯一の酒蔵で超軟水を活かして