NTTドコモKDDIau)、ソフトバンクの3社寡占が続く携帯キャリア事業に、楽天をあけそうだ。通信料、端末、使い勝手など、どんな違いを打ち出せるのか!? 今後の展開を予想する!

楽天グループの次の成長エンジン

インターネット通販内大手の楽天が、携帯電話事業への参入を表明した。総務省から認可が下りれば、2007年イー・モバイル(現・ソフトバンク)以来、13年ぶりとなる「第4の携帯キャリア」が誕生することになり、来年中にもサービスが開始される予定だ。

だが同社はすでに、14年からグループ内でMVNO(=仮想移動体通信事業者、いわゆる格安スマホ)の「楽天モバイル」を展開している。事業は好調で、昨年11月には競合のフリーテルを買収し、格安スマホ業界で3位にのし上がったばかり。なぜここへきて、携帯キャリア事業に乗り出そうというのだろう。

携帯電話ライター佐野氏が言う。

楽天は本業のネット通販事業において近年、王者アマゾンに大きく引き離され、下からはヤフーに突き上げられと、頭打ちになっています。FCバルセロナスポンサーになったりして、懸命に存在感アピールしていますが、絶対王者であるアマゾンの多種多様なサービスには、とうてい太刀打ちできません。そんななかにあって楽天モバイルは、順調に契約者数が伸びている数少ない好調部門。三木浩史会長はそこにをつけたのでしょう。

とはいえ、MVNOはキャリアから回線を借りているので、けが出にくい。そこで自らがキャリアとなることで利幅の大きいビジネスに育て、楽天グループの次の成長エンジンにしようと考えたのだと思います」

携帯電話業界は今、かつての通信料値下げ競争が鳴りを潜め、NTTドコモKDDIau)、ソフトバンクの3キャリアが同準でにらみ合っている。そこに楽天が殴り込みをかけるとなると、新規会員獲得のために通信料の価格破壊を仕掛けるなど、積極的な戦略の期待が高まる。3社寡占の着(こうちゃく)状態にをあけてくれるのか!?

が、話はそう簡単ではないらしい。ITジャーナリスト石川温(つつむ)氏がる。

携帯電話事業の基礎である通信インフラを全に整備するには、大(ばくだい)なコストがかかるのです。楽天はそのための費用として、19年から25年にかけて最大6千億円を調達するようですが、そんな額ではとうてい賄えない。すでに全くまなく通信網をり巡らせているドコモでさえ、維持・管理等のためだけに毎年5千億~6千億円を費やしているのです。

ゼロから全ネットワークを構築していくとなると、ヘタをすれば数兆円規模の予算を投下しなければなりません。まずそれを工面できるのか? そして整備には当然、時間も必要。来年からサービスを開始するとなると、不全なネットワークのまま見切り発をするしかありません」

インフラが不全なのに、どうやって全カバーするというのか?

「例えば、人口の多い都市部から整備し、手の回らない地方部は既存キャリアの回線を借りるローミングでカバーしながら、徐々に自社回線の地域を広げていくとか。これは、イー・モバイルも採っていた方法です。あるいはSIMを2枚挿せる端末を提供し、キャリアとしてのSIMと、MVNOである楽天モバイルSIMを入れる裏技もあります。自社ネットワークがある地域ではキャリアSIMで、そのほかの地域は楽天モバイルSIMでと切り替えながら通信するわけです。こちらも、自前で全を網羅するまでの暫定的な手法ですね。

ただ、どちらにしても、サービス開始当初の自前ネットワークは地域が限定され、やり方によっては自社回線と他社回線の切り替わり時に接続が切れる恐れがあるなど、3キャリアべて通信品質が劣るのは確実です」(佐野氏)

■まず格安スマホ業界の料競争が化する

だったら「第4のキャリア」というより、楽天モバイルとさして変わらないような気もするのだが…。

現実的なビジネスモデルを考えれば、『楽天モバイルの通信品質が強化されました』というところから始めざるをえないでしょう。現在楽天モバイルは、都市部で正午あたりの通信速度が落ちる傾向がありますから、自社回線を持っていれば、そこは善できる。さらにユーザー楽天ネットワークにつながっているときは、データ消費をカウントしないようにし、お得感を出すとか。並行して通信インフラ網を徐々に広げていき、しかるべき時に正正銘のキャリアとして仕切り直すのだと思います」(石川氏)

したがって端末ラインナップも、現行の楽天モバイルと代わり映えのしないものとなりそうだ。

iPhoneの最新機種の取り扱いは難しいでしょう。アップルiPhoneを大量に売りさばけるキャリアにしか供給しませんから、誕生間もないキャリアは相手にしません。まして楽天モバイル体にするのなら、中国ブランドファーウェイあたりを中心に、あとはメーカーSIMフリー機を若干そろえる程度でしょう。つまり中低価格帯の端末が体で、その中に楽天関係のアプリを入れて提供するのではないでしょうか」(佐野氏)

結局、楽天がまったくの新事業としてキャリアを立ち上げるのではなく、当面はMVNOである楽天モバイルサービスが拡充されるにすぎないもよう。だとするとキャリア間での料値下げ競争の再燃など期待できない?

「既存キャリアは、自前の通信網も整っていない楽天を同格のライバルと見なしていませんから、値下げ圧になるはずがない。それどころかインフラ整備に多額の資本を投入するのですから、本来なら逆に楽天モバイルのほうが通信料を値上げしなければならないところです」(石川氏)

でもそんなことをしたら、既存会員が逃げてしまう。

「だから、据え置くしかない。楽天モバイルはしばらくの間、相当厳しい収支バランスに耐えねばなりません。結局、キャリア事業の認可総務省から受けたところで、3キャリアに対抗できる強みといえば、楽天スーパーポイントの付与や使用ができることぐらい。だったら現在楽天モバイルとなんら変わらないわけで、同じ6千億円もの資本を投下するのなら、今のMVNOのまま、楽天モバイルをより魅的にするために使ったほうがよほど有効です。

今回のキャリア事業参入は、業界内でも疑問視するしか聞こえてこないし、楽天内でさえ『理解できない』と首をかしげている社員が少なくありません。私はこの先、正式な電波取得申請の前に、三木会長が心変わりして撤退宣言しても驚かないし、もし彼がその決断を下せたら、むしろ評価しますね」(石川氏)

スタートする前からすでに八方ふさがりとされている、楽天のキャリア事業。しかし既存キャリアの間になんの波も立たず、通信料がこのまま高止まりしているのもしゃくに障る。楽天に起死回生の逆転シナリオは、まったくないのだろうか。

楽天にしても、いきなり3キャリアに対抗しようとは考えていないはずで、まずは格安スマホ業界トップソフトバンク下のワイモバイルターゲットに定め、サービス面で、例えば楽天ポイントの付与や使用を今以上に優遇するような対抗策を打ってくるでしょう。だから格安スマホ業界上位同士の競争は、これから間違いなく化するはずです。

そうした戦略でワイモバイルを打ち負かすのが、第一標。さらにその標をクリアして、iPhoneを扱えるまでの規模の契約者を獲得し、全に自社ネットワークが整備されれば、既存キャリアの脅威となるはずです。ただ、投下した資本の回収を考えれば時間との勝負。すべての施策が順調に進んで初めて、キャリアへの挑戦権を得られるという、極めて低い成功率であることは間違いありません」(佐野氏)

楽天のキャリア事業に、果たして楽天的な未来は待っているのか?

「第4の携帯キャリア」へ参入する楽天は“3強”の牙城を崩せるのか?