まさに、現代のホットモデル! シビックタイプRはそんな表現が実に相応しい1台であり、最近試乗した中でも印的な走りを持つモデルだ。

かつてホンダタイプRといえば、徹底的に駄を削ぎ落とすことで走りを極めたモデルであり、シビックタイプRも1997年の登場以降、軽量化と究極のNAユニットで研ぎ澄まされ、ドライバーの感情を刺し続けてきた1台だった。

しかし、そんなシビックタイプRが180度方向転換したのは2015年に登場した4代モデルでのこと。このモデルドイツ自動車開発の聖地ニュルブルクリンクノルドシェライフェ(北コース)で「FF世界最速をす」というコンセプトのもと開発された。

当時、最大のライバルとされたルノーメガーヌRSを打ち破るために選択したパワーユニットは、2リットルの排気量を持つ直列4気筒ターボエンジン。これを実に310へと性アップして搭載。この時から、シビックタイプRはハイパフォーマンス志向のFFスポーツへとコンセプトを変えたわけだ。

そしてこのモデル2015年3月、1周約20kmのニュルで、7分5063というラップタイムルノーメガーヌRSの記録を破り、ニュルFF最速の座についた。だが、その座はすぐに、VWフォルクスワーゲンゴルフGTクラブスポーツSの7分4921というラップタイムによって奪われる。そして王座を奪還するべく、2017年に登場したのが、5代目となるシビックタイプR。今回試乗したFK8だ。結果は…7分4380というラップタイムマークし、ゴルフを破って再びニュルFF最速の座を取り戻した。

世界で最も過酷なニュル北コースFFの中で最も速く走る。ということは、走りに特化したスパルタンな1台。そんなイメージを抱くと思うが、新シビックタイプRに試乗してすぐに衝撃を受けるのは、実は乗り心地の良さである。

とにかく走り始めると、そのあまりに上質な乗り心地に肩透かしを食らう。実際に走らせると路面とタイヤの滑らかな接触がはっきりとあり、そこから生まれる極上の乗り心地に驚かされた。とても20インチという巨大サイズタイヤが与えられているマシンとは思えない。

これはシャシーの基本性が極めて高いことに加え、そこにサスペンションがしっかり取り付けられているためスムーズに、かつ懐深く動くからこそ実現されている乗り心地である。さらに今回のタイプRは、電子制御でダンパーの減衰を調整できる。普段乗りではコンフォートモードを選ぶことで、しっとりと滑らかな乗り味も選べる。

最高出320を発生するエンジンは、どの回転からでも軽やかに吹け上がり、強く扱いやすいフィーリングを届けてくれる。高速道路では快適なクルージングさえ味わえてしまう。そしてその時の感覚は、まさに上級サルーンを思わせる。長距離も楽にこなせるグランドツーリングも備えているのだ。

もちろん、快適さがシビックタイプRの最大の特徴ではない。今回は千葉県木更津市にある袖ヶフォレストレースウェイにご協いただき、サーキットでの限界領域も試した。

サーキットでは走行モードを切り替える。コンフォートスポーツ、+Rと選択が可だが、サーキットでは当然+Rを選ぶ。

するとサスペンションは減衰が高くなり、ハードに固められる。それでも乗り心地は悪化しないのが今回のタイプRのスゴいところ。イメージとしては、+Rを選ぶとサスペンションは締め上がるものの、操作に対しては素直に、また路面からの入に対してもサスペンションはスムーズに動き続ける。同時にハンドルアクセルダルの反応もダイレクトになる。

+Rモードで走り始めると、とにかく速い。その理由はシビックタイプRが較的軽量だから。エンジン的に同じレベルスバルのWRX STIべると100kg近く軽いのだ。

エンジンは+Rモードで極めてスポーティかつ軽く吹け上がり、鋭い加速を生み出す。サウンドも気持ち良くき渡る。そして実によく曲がるハンドリングを持っている。「FFは曲がらない!」という常識を覆すほどである。

シビックタイプRはFFの頂点にある。もちろん、このシビックタイプRに対して、世界の2リットルターボを搭載したスポーツモデルは、反撃の狼煙のろし)をあげるはず。ライバルたちを本気にさせた1台である。

河口まなぶ










1970年生まれ、茨城県出身。日本大学術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌(モーターマガジン社)アルバイトを経て、自動車ジャーナリストに。毎週金曜22時からYouTube LIVEにて会を務める番組『LOVEARS!TV!』がオンエア中。日本カーオブ・ザ・イヤー選考委員。

常識を覆す衝撃…日本が世界に誇る怪物FF車・シビックタイプRを試乗!