今季のドラマには、“タイムピートもの”が2本ある。『トドメの接吻』日本テレビ系)と『リピート』日本テレビ系)だ。(原作)

トドメの接吻』はタイムリープを繰り返して人生を好転させる生き方を描いているが、『リピート』ではタイムリープ危機を回避しても決して人生は上向かない。

タイムリープしてやり直したい8人が集結
図書館書として働く篠崎美(貫地谷しほり)のもとに、風間六角精児)から「1時間後に地震が起きます」という電話が来た。1時間後、予言通りに地震が起こり美は驚く。
風間は「未来から過去のある時点へ戻って人生をやり直したことがある」と告白。だから、未来に起きることをすでに知っているのだ。
「一般的には時間旅行とかタイムスリップと呼ばれているものに近いかもしれません。私はそれを『リピート』と呼んでいます」(風間

数日後、次の「リピート」のゲストとして美を含む8人が招集された。戻れるのは10ヶ前。それぞれが、リピートしたい事情を抱えていた。


美は、交際中のイケメン商社マン・久瀬松田悟志)から別れを切り出されてしまった。原因は、10ヶ前の美の誕生日。一美にプロポーズをするつもりだったが、美は図書館で怪をした子どもの対応に追われ、ディナーの席に現れなかった。
たち“タイミングが合わない”ってことだよ。別れる運命なんだ」(一

毛利介(本郷奏多
キャバクラアルバイトするフリーター介は、彼女の由子(島崎遥香)から札束で弄ばれる関係。「私のだって拠」と首輪を着けられ、札束でかれながら「ワンって言いなさいよ」と迫る由子に心底うんざりだ。

太郎ゴリ
カフェ経営者でバツイチ童。アメリカへ移住する元妻の文香(ちすん)と息子史(南出嘉)は、高速バス成田空港に向かう途中に交通事故に遭う。結果、史は死去。童が「渡前に史に会いたい」と申し出たため、史はその時間のバスへ乗ることになった。

横沢佐知子手塚理美)
主婦の佐知子は、夫・正明(酒井敏也)がガンで他界。リピート前の人生では社交ダンスの発表会に出なかった佐知子だが、リピート後の人生で正明とともに参加しようと考えている。

郷原俊清水
会社員の郷原は1日500円の小遣いで、煙草もやらずと会社を往復の毎日競馬を手に入れ、生活を変えたいとリピートに参加した。

大森知恵(安達実)
食品科学関係の研究をしているリケジョの大森。彼女の研究するバイオ技術は飢餓で苦しむ何億人もの子どもたちを救うが、完成はいつになるかわからない。大森はリピートを繰り返すことで研究をめたいと企んでいる。

坪井要(野広
予備校生の坪井大学受験に失敗。10ヶ前に戻れば、解答を知った状態で大学二次試験を受けることができる。

高橋福田転球)
トラック運転手高橋は「今度はちゃんと勉強して高校卒業したい」と願っている。戻れるのは残念ながら10ヶ前までだが……

タイムリープして前よりひどくなる者が続出
タイムリープして人生を好転させたい8人。一度は体験した場面ばかりなのだから、トラブルの回避は容易いはず。

まず、美がリピートの恩恵にあずかっている。誕生日図書館でケガをするはずだった子どもの動きを徹底的に見り、一とのディナーに間に合った彼女は事にプロポーズを受けることができた。
他の面々も、喜色満面だ。毛利はきっぱりと由子に別れを切り出すことができた。坪井二次試験に合格して東大生になることができた。郷原は競馬を稼ぎ、生活を一変させている。

しかし、リピートしたとて、幸せになるとは限らないのだ。美は、偶然にも一が別の女性キスする場面を撃してしまう。彼女は一に別れを切り出した。
「本っ当にいいんだな!? もう、二度とこんなチャンスいからな。美みたいな地味な女と結婚してあげようと思ったのに、美から別れるとか。ハハハハハッ……ふざけんなよ!」(一
ピートしようがしまいが、結局は別れる運命だった。それどころか、彼氏が最低な人間だと知ってしまった分だけ、リピート後の人生の方が辛い

介は、フッたはずの由子がストーカー化してしまった。合鍵で部屋に入り、粗末な料理を作って帰宅を待っていたり、不在の介宅にび込んで隠しカメラを仕掛けたり……。介と美の仲が怪しいと読むと、本好きを装って美に接近。遂には美の自宅へ上がり込み、隙を見て彼女の私物を調べる異常性を見せている。介も、むしろリピート後の方が危険度は増した。

ピートの効は、皆が期待したようなものではなかった。
「婚約者にフラれて、やり直したいと思ってリピートしたけど、前と同じ。……ううん、前よりももっとひどい結果になっちゃった」(美)

タイムリープ後の出来事で世界が変わり、新たな未知が襲う
ピート前と後で状況が変わるのは、当人だけではない。まず、リピート々に高橋が死去してしまった。タイムリープ直後はの前がっ暗になり“落ちる感覚”がする。ちょうどそのタイミング高橋トラックを運転しており、対向線を走るトラックと正面衝突してしまったのだ。

こうした出来事が積み重なり、世界は少しずつ変容していく。以下は、リピート前とリピート後の変化だ。

介は、キャバクラへ入店した新人の存在を不思議がる。リピート前には出会わなかった女の子だからだ。
ピート前にはかった連続放火事件がリピート後に起こっている。その影は佐知子に及んだ。夫・正明とともに社交ダンス発表会へ出たいと考えていた彼女だったが、会場が不審火で燃えて大会は延期となる。しかも、その後に起こった放火事件の被に遭って佐知子と正明は死去した。
する元妻と息子に会わないと決意していた童だったが、なぜか息子の方から「最後にパパ会いたい」と言い出した。

「なんでだ? なんで、こうなるんだ!?」(童)

ピートで起こった細な出来事によって、ルービックキューブのように展開が変わったとしか思えない。人生を好転させようとそれぞれが行動を起こすたびに、今後もさらなる未知が彼らを襲うだろう。

特に気になるのは、連続放火事件だ。リピート前にはいなかったはずが、リピート後の世界では放火犯がのうのうと暮らしている。そのせいで命は失われ、まずます世界は変容する。もはや、「事態を好転する」という気な話ではおさまらないのだ。


タイムリープ人生を好転させる『トドメの接吻』と、このドラマは好対照になっている。タイムリープした者が死んだり、負傷したり、未知の事態に襲われたり、ことごとくロクなに遭っていない『リピート』。
前者は成功に向かって邁進するポジティブさがあるが、後者はとことんドツボへはまりにいく。キーは、8人をリピートへ誘った風間意だ。
寺西ジャジューカ)

「リピート」乾くるみ/文藝春秋