目立つ格好の人を撮影する行為について先日、SNS上で話題になりました。投稿者は、「ロリータ服を着ていて嫌なのは盗撮」「顔を隠したりボディーランゲージで拒否を伝えてもなくならないのが現状」「私たちはテーマパークの着ぐるみと違って、顔の出ている生身の人間だし、なるべくほっといて下さい。『目立ちたいから派手な服を着ている』のではなく『好きな服が派手だっただけ』なので」としています。

 これを受けてSNS上では「了解なき撮影は全て盗撮」「『目立つから撮ってもいい』という感覚なんだと思います」「撮る前にコミュニケーションを取れない人がいるのが問題」と共感する声が上がっていますが、こうした撮影行為に法的問題はないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

肖像権の侵害に刑事罰はない

Q.目立つ格好をしている一般人を無断で撮影する行為に法的問題はないのでしょうか。

牧野さん「その人の普段とは異なる『目立つ格好』であっても、その本人と特定しうるものであれば個人の肖像権やプライバシー権を侵害する可能性があります。これらは基本的には民事上の権利で、同意なく自分の姿を撮影されたり、公衆にさらされたりしない権利です。撮影された本人が精神的損害を受けた場合、その損害を賠償しなければなりません(民法709条の不法行為)。また、のぞき行為などで文字通り『盗撮』を行えば軽犯罪法違反ですが、肖像権の侵害に対しては基本的に刑事罰はありません」

Q.目立つ格好の一般人を無断で撮影し、SNSなどにアップした場合はどうですか。

牧野さん「個人の肖像権やプライバシー権を侵害している可能性があります。これらは基本的には民事上の権利で、同意なく自分の姿を公衆にさらされない権利です。本人の承諾なくその人が写った写真を公開した場合、それだけで肖像権の侵害となり、その人が受けた精神的損害を賠償する必要があります。さらに、写真を手がかりにその人が特定され、執ようにコンタクトをされて精神的損害を受けた場合も、その損害を賠償しなければなりません。また写っていた人の名誉を毀損したり、プライバシー権を侵害したりしたことで民法上の不法行為が成立し、精神的損害(慰謝料)を賠償しなければなりません。肖像権やプライバシー権は、基本的に刑事罰はありませんが、その公開された写真により社会的評価を低下させた場合『名誉毀損罪』(3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金)に該当する可能性があります」

Q.無断で撮影されたり、その写真を勝手にネット上にアップされたりした場合、被害者側はどのような法的措置を取ることができますか。

牧野さん「公開された写真により社会的評価を低下させられた場合、名誉毀損罪の告訴をすることが考えられます。民事上の救済では、状況にもよりますが、被害者はそれによって受けた精神的損害の賠償を請求することができる場合があります。SNS上にアップしてもらい、多くの人に見てもらえたとむしろ喜んでくれるケースもあるかもしれませんが、派手な仮装が会社にバレて社内での評価が大きく低下した場合には、精神的損害の賠償を請求することができる可能性があるでしょう。ただし、加害者を特定しないと法的措置を取れませんので、まずは『プロバイダー責任制限法』という法律を使ってプロバイダーに発信者情報を開示してもらうことになります。なお、この手続きはそれなりの費用と時間がかかるので慎重に検討する必要があります」

Q.過去に同種の裁判例があれば教えてください。

牧野さん「過去に同種の裁判例は見当たりません。発信者の特定までに多額の費用と時間がかかることから、裁判にまで発展しないものと思われます」

(オトナンサー編集部)

目立つ格好の人を撮影、法的には問題ない?