東京国立近代美術館フィルムセンター」(以下、フィルムセンター)をご存知でしょうか? 文化財である映画フィルムの収集・保存・復元・開をな活動とするフィルムアーカイブ機関であり、日本一の国立映画機関です。

そんなフィルムセンターが新たに発掘・復元した映画を紹介する企画「発掘された映画たち」が4年ぶりに開催されました。1991年に始まり今回で10年を迎える同企画。実は、まさに「発掘」という言葉がふさわしい、お宝映画の数々をにすることができるまたとない機会なのです。

今から約100年前のアニメを観てみた
実際に映画を鑑賞しに行ってみました。会場となる2階の大ホールはほぼ満席。較的観客の年齢層は高いようですが、中には親子連れの姿も。

今回見たのは「発掘されたアニメーション映画1」というプログラム日本最古のコマ撮り映画をはじめとしたアニメーション7作品を一度に見ることができました。もちろん、この機会を逃すとめったに見られない作品ばかりです。(『なまくら[最長版]』はフィルムセンターの常設展およびウェブサイト日本アニメーション映画クラシックス」(http://animation.filmarchives.jp/)にて鑑賞可



個人的に、特に印に残った2作品を紹介しましょう。

・なまくら内名之巻(はなわへこないめいとうのまき)
[新最長版](5分・16fps35mm・・染色)
1917(小林商会)(作画)幸内純一
(原版協松本氏、本地陽氏)



現存する日本最古のコマ撮りアニメーション2014年フィルムセンターによって最長版(250フィート6コマ)が復元されましたが、今回さらに映画史・本地陽氏によって発掘された35フィート11コマが新たに加わりました。

今から100年以上も前のコマ撮りアニメデフォルメされたキャラクターはとてもシンプルで、手足、や口元など一部しか動かないのですが、ちょっとした動きがとてもリアルで人間くささが伝わってきます。

もちろん「」で、現代のアニメのように声優さんの吹き込みや、効果音BGMなどはありません。しかし、純に動きだけでストーリーを見せてくれる新鮮さがありました。

まくらを買ったのちょっとした動きに、会場からもクスクス笑いが起こっていて、時代は変われど、今も昔もスクリーンを見上げる観客の様子は変わっていないのだろうなぁ、と感慨深くなりました。

・小人の電話(26分・35mm・カラー)
1953(渡部プロダクション)(監)藪下泰(脚)秋本(撮)倉泰一、高城泰策、石川明(録)土橋武夫(音)服部
(原版協神戸映画資料館)


初期フジカラーアニメーション映画で「発掘されたアニメーション映画1」のプログラムの中では一のカラー、音ありの作品です。

ある日、小人の電話が流れついたところから始まる物語電話を研究した小人たちは大量生産に成功し、「イザ、電話開通式!」となるものの電話はつながらず……。そこで、電話の技術を持つ人間のを視察することに。

電電社(現NTTグループの前身)とタイアップしたものらしく、かわいらしい小人の物語ラブロマンスも)を通じて電話の使い方を説明する内容。ミュージカル調の場面があったり、アニメーション実写融合した場面があったり、とてもユニークでした。また、当時の東京の様子なども映されていて、そうした部分も興味深かったです。


日本映画」をアーカイブする


デジタル技術が発展するに伴い、撮影・編集の現場、映画館スクリーンから姿を消しつつあるフィルムフィルムセンターでは映画を文化として継承していくために、映画フィルムの保存活動を行っています。

所蔵しているフィルムの数は、なんと80,040本!(2017年12月末時点)。今回紹介された作品を始め、映画フィルムはどのように収集されているのでしょうか?

最初にお伝えしたように、フィルムセンター日本一の国立映画フィルムの保存機関。そのため、外映画の収集も行っていますが、収集ポリシーとしては特に「日本映画」を、体系的・通史的に提示できるナショナルコレクションの形成と継承をしているそう。

そのため劇映画だけでなく、アニメーション映画や文化記録映画ポルノから個人映画(個人が庭で撮影したもの)までも収集しています。映画芸術作品としてだけではなく、文化遺産として、あるいは歴史資料として“網羅的”に収集することが標なのです。

ここでの“網羅的”というのが実はかなり大変。ご存知の方もいるかもしれませんが、日本国内で発行されたすべての出版物は、国立国会図書館への納入が義務付けられています。しかし、映画作品はそうはいきません。映画フィルムの法廷納入制度が確立されていないために、著作権の保護期間が残っている作品の多くは、著作権者から購入しているのだそう! ただ、コレクションの大部分は寄贈者のご厚意に支えられた「寄贈」によって成り立っているようです。 


これらの重なフィルムの中には、いつ、製作したのか不明な作品も多くあります。「発掘された映画企画のように多くの人に鑑賞してもらうことで、作品同定の手掛かりが見つかる可性もあるかもしれませんね。


特に重な「発掘」フィルムはどんなもの?


「発掘された映画たち2018」では計89本(30プログラム)の作品が上映されました。そのどれもが、文化財、歴史資料としても非常に価値のあるものばかり。同企画を担当されたフィルムセンター主任研究員の大傍(だいぼう)さんに話を聞きました。

―― 今回特に注すべき「発掘された映画」はどんなものですか?

大傍さん:フィルムセンター特定研究員の屋牧子が論文「“皇太子渡欧映画”と尾上之助‐NFC所蔵フィルムにみる大正から昭和にかけての皇室をめぐるメディア戦略」(『東京国立近代美術館紀要』第20号、2016年)を執筆したことが契機となって上映された『皇太子渡欧映画 総集篇』です。

皇太子渡欧映画”は、当時19歳だった昭和天皇が1921年3月から半年に渡ってヨーロッパを巡遊した様子をフィルムにおさめたものです。当時皇太子海外旅行は異例で、かつ皇族の動く姿を撮影するのも異例だったので、本作は多くの人々の注を集めました。


次に、現存する最古のアニメーション映画である『なまくら』(1917年)は、これまで都合3度も“発掘”されておりますが、アニメーション100周年にあたる昨年に、これまで未確認だった場面がいくつか発掘されるとは、まさに世紀の大発見と言えるのではないでしょうか。

新最長版を見ていただくと「なまくら」が製作された1917年の段階で、自分より強い立場にあるはずのを笑いものにしたり、そのに対して嘲るような表情を見せたりするところ等、人間の内面を豊かにかつ大胆に表現できていたことに驚かされますよ。


「発掘された映画たち」開催の狙い

今回の企画について、フィルムセンター主任研究員の大傍さんは以下のようにも話してくれました。

「『映画フィルム』が多くの方々の関心を集めるメディアではなくなり、コンテンツばかりが関心を集める時代に入ったかもしれません。しかし、これこそ映画フィルムの収集・保存・復元を担う映画アーカイブの取り組み、という本企画を通じて、携帯テレビ等の小さなモニターではなく“本当の”映画に触れてもらいたい、もう少し皆さんの関心を『映画フィルム』につなぎとめたいと思っています」


年々進化するデジタル技術や、当時の関係者へのインタビューをもとにできるだけ開当初の状態に近づける努して「発掘」、「復元」された映画たち。当時のお客さんたちが見ている状態と同じ映画を見ている、と考えるとさらに映画が味わい深く感じられますね。

フィルムセンターでは、今後も監督俳優製作ジャンル・時代など、様々なテーマにあわせた特集上映を予定しています。ぜひ会場に足を運び素敵な映画たちを鑑賞してみてください。
篠崎夏美/イベニア

『なまくら刀(塙凹内名刀之巻)』[新最長版]場面写真