インフルエンザは風邪と比較し、重症化する可能性が高いため、早めに適切な対処が必要です。今回は、インフルエンザの症状や予防法、対処法、身近な人がインフルエンザにかかったときの感染予防法について「独立行政法人 国立病院機構 東京病院 臨床研究部長」の永井英明先生にお伺いしました。

目次

インフルエンザの症状

鼻をかむ女性

インフルエンザの症状は、風邪の症状と共通しているところもありますが、急な高熱や関節痛など、特徴のある症状がいくつかあります。ここではインフルエンザの症状について解説します。

インフルエンザの代表的な症状

インフルエンザの代表的な症状は、以下の4つのような全身症状です。

  • 38度以上の急な発熱
  • 筋肉痛
  • 関節痛
  • 頭痛

 

「冬の流行期に急に38度以上の高熱が出た場合、多くの場合がインフルエンザであると考えられます。ただ、ウイルスの型や患者本人の抵抗力によっては、インフルエンザであっても軽い症状で済む場合もあります。最近は、『症状が軽いので風邪だと思います』といって来院した患者さんでも、検査をすると陽性だというケースが増えました。『冬の流行期に怪しい症状が出たら、直ぐ検査をする』という意識が広がったことも影響していると思います」(永井先生
 
インフルエンザかどうかを自分で見分けることはとても難しいものです。感染の拡大を防ぐためにも、流行期には、体調が悪いと思ったら早めに病院に行くようにしましょう。

インフルエンザと風邪の違い

風邪の場合でも高熱は出ますが、インフルエンザの流行期はとくに、「ただの風邪だ」と思わず「インフルエンザかもしれない」と考えるようにしましょう。ここではインフルエンザと風邪の違いについて解説します。

急な高熱をはじめとする全身症状

風邪は喉の痛みや鼻水などの症状が先にあらわれ、微熱から少しずつ熱が高くなっていくことが多いですが、インフルエンザ急激に高熱が出ます。また、風邪の場合は、筋肉痛や関節痛などの全身症状は現れにくいです。

冬に罹患者が増える

インフルエンザの特徴は、冬に大流行するということです。
以下に、主な理由を解説します。

  • 冬は乾燥しているため、咳やくしゃみなど、ウイルスを含んだ飛沫の水分が減って軽くなり、遠くまで飛びやすい。
  • 冬は低温で乾燥しているため、インフルエンザウイルスの生存率が上がり、例えば、つり皮などについたウイルスの生存期間が長くなる。
  • 冬は窓などを閉め切って空気の循環も悪くなるため、ウイルスに接触しやすくなる。
  • 冬の乾燥した空気中では空気感染(※下記「インフルエンザの感染経路」章を参照)が起こる可能性がある。
  • 冬の低温と乾燥の影響で、のどの粘膜の防御機能(線毛活動)が低下する。

 

一方、風邪は一年を通してかかる可能性があり、季節による流行などはありません。

1日~3日の潜伏期間しかない

インフルエンザの潜伏期間は感染から1~3日程度であり、喉風邪や鼻風邪の潜伏期間が2日〜14日程度とくらべて短いことが特徴です。潜伏期間とは、体内に侵入したウイルスが細胞内で少しずつ増殖し、発症するまでの期間で、インフルエンザウイルスが急速に増殖するため発症が早いのです。

インフルエンザウイルスとは

インフルエンザの型

インフルエンザウイルスには、A型とB型、C型があります。C型は軽い風邪程度の症状で、幼少期にかかることが多く、一度かかると抗体ができるため、あまり問題視されません。ここでは、流行しやすく、重症化する可能性があるA型、B型について解説します。

毎年流行するインフルエンザウイルス

毎年流行しているインフルエンザウイルスの型は、主にA型とB型の2つです。
 
インフルエンザウイルスは、動物に感染・拡大するためにヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)という2種類の突起をもっています。A型の場合、このHが16種類、Nが9種類に分類され、その組み合わせとして144種類あります。とはいえ全ての種類が人間に感染するわけではなく、例年、『H3N2』と『H1N1』と呼ばれる種類が流行しています。B型の場合は、A型のような多様性はなく、『山型系統』『ビクトリア系統』と呼ばれる2の主要な群に分けられます」(永井先生

2018年流行したインフルエンザ

A型のインフルエンザウイルスのHとNはその内部で変異しやすい特徴をもっています。そのため、同じ『H3N2』であっても、ウイルスを見分ける働きをする免疫細胞から見ると、例えば去年と今年では異なって見えるため、毎年『H3N2』にかかることもあります。また、A型にかかった後にB型にかかることもあります。
 
2018年は、ヘマグルチニン(H)が『H1pdm09』もしくは『H3』を持つA型のウイルスが流行しました。また、例年はA型より遅れて流行するB型ウイルスが、A型と同時期にA型を上回るほど流行したため、流行の規模が大きくなってしまいました」(永井先生

インフルエンザの感染経路

熱を出した男性

インフルエンザの感染経路には、飛沫感染と接触感染、空気感染があります。

飛沫感染

「注意すべきは飛沫感染です。インフルエンザウイルスを持つ人が咳やくしゃみなどをすることでウイルスを含んだ飛沫が飛び、それを吸い込んでしまうことで感染します。ただし、咳やくしゃみが飛ぶ範囲は半径2メートル以内くらいですので、感染している人からそれ以上離れていれば、感染するリスクは低くなります。罹患者や罹患しているかもしれない人は必ずマスクを着用するようにしてください」(永井先生

接触感染

接触感染にも注意が必要です。インフルエンザウイルスを持つ人が咳やくしゃみを覆った手で触れたつり革や、ウイルスを含んだ咳やくしゃみが直接かかったテーブルなど、ウイルスが付いてしまった身の回りにあるものを触った手で目鼻や口を触ったりすると感染の恐れがあります。
 
インフルエンザの感染拡大を予防するためには、患者さんがマスクをすること、『咳エチケット』を守ることが大事です。マスクをしておらず、ハンカチも持たない時に咳が出るようであれば、手のひらではなく袖口で口を覆うなどし、ウイルスの飛散を防ぎましょう。手のひらで口を覆って咳をすることは、その手についたウイルスを広げてしまうことになるので、避けるべきです」(永井先生

空気感染

ウイルスを含んだ飛沫は、保持する水分が蒸発することで「飛沫核」となり空気中に留まります。この飛沫核を介した感染が空気感染です。
 
インフルエンザウイルスは空気感染する可能性は低いと言われていますが、ゼロではありません」(永井先生
 
空気が乾燥しやすい冬の流行期は、インフルエンザウイルスであっても空気感染のリスクはあります。乾燥対策や換気など、十分な予防対策をしてください。

インフルエンザの予防法

手洗い

インフルエンザを予防する医学的なアプローチは予防接種(ワクチン)を受けることですが、日常生活においても飛沫感染や接触感染の対策をすることが重要です。ここでは、日常的にできるインフルエンザの予防法について説明します。

マスクをする

飛沫感染の予防には、マスクをするのが効果的です。
 
マスクさえしていれば絶対に予防できるとは言えません。しかし、少なくとも咳やくしゃみで飛んだ大きな飛沫を直接吸い込んでしまうのを防げる可能性は高く、のどの保湿にもなります。そもそも、マスクをすることによるマイナス要素はありませんので、予防法として実践すべきだと考えます」(永井先生

手洗い・うがい

インフルエンザ感染の危険性が特に高いのは、満員電車や繁華街など人が多い場所です。咳やくしゃみによる飛沫感染はもちろん、つり革や手すり、テーブルや椅子など身の回りのものから接触感染につながる可能性も十分に考えられます。
 
「どこでウイルスに触れているか分からないので、外から帰ったときや食事の前には、必ず手洗いとうがいを習慣づけてください。アルコール消毒も十分効果がありますので、消毒用アルコールを職場の入り口に設置しておくのもよいでしょう」(永井先生

免疫力を上げる

生活習慣を整え身体を健康に保ち、免疫力を上げておきましょう。睡眠不足が続くと免疫力が落ちて、インフルエンザウイルスが体内に侵入しやすい状態になるため、しっかりと睡眠をとることも大切です。
 
睡眠不足や過労は、身体の免疫力を下げる要因になります。体調を整えるために、自分で毎日できることは、『しっかり休息をとること』です。基本的には、毎日6〜7時間程度の睡眠をとることです。眠りすぎもよくないので、規則正しい生活を心がけるのが一番よいと思います」(永井先生

インフルエンザの対処法

薬を処方する医師

インフルエンザかもしれない、と思ったらできるだけ早く病院に行くことが重要です。ここではインフルエンザになってしまったときの対処法についてまとめました。

病院の薬を服用する

インフルエンザの症状を和らげるには、病院を受診し、処方された薬を早めに服用するのが一番です。解熱を1日短縮する程度ですが、それでも楽にはなります。インフルエンザの治療薬は、ウイルスを殺して根本から治癒させるものではありません。ウイルスが身体の中で増えるのを防ぐことで、進行を食い止めるものです。そのため、インフルエンザの薬を早く服用すれば、それだけ早く症状が軽くなると考えていいでしょう。できれば、発症から48時間以内に服用してください」(永井先生
 
また、インフルエンザによる高熱がつらいときは、処方された解熱剤を服用しましょう。
 
「発熱は、ウイルスに対する防御反応の現れです。身体の熱を上げることでウイルスの増殖を抑えたり、免疫力を高めたりする効果があるので、無理に下げないほうがいいと考えています。そのため、無理に解熱剤を飲む必要はありません。服用にあたっての一般的な目安としては、体温が38度を超えて、かつ食事を摂れないなど身体がつらい場合でしょう。とはいえ、熱の影響には個人差もありますので、基本的な判断基準は『身体がつらいかつらくないか』でいいと思います」(永井先生

十分な睡眠と栄養をとる

薬を飲み、食事と十分な睡眠をとって休養に努めましょう。食欲がない場合もありますが、栄養をとって体力を回復させるためにも食事はしっかりとるべきです。高熱で内臓が弱っているため、お粥など消化のよいものがオススメです。汗もかくため、水分補給も忘れないでください。

症状がおさまっても学校や会社を休む

インフルエンザにかかったら、発症した後5日以上経っていて、かつ、解熱(熱が下がる)した後2日(幼児にあっては、3日)以上経つまでは学校や会社を休みましょう。
 
インフルエンザは、解熱してもウイルスが身体の中に残っており、周りの人に感染させる危険性が高いとされています。この期間を過ぎても、咳などの症状が出るようであれば、外出の際には必ずマスクを着用し、感染拡大を防ぐようにしましょう。

身近な人がインフルエンザにかかったときの感染予防法

熱を出している子ども

家族がインフルエンザにかかってしまった場合、同じ空間で日常生活を送っている他の家族もうつりやすい状況にあると考えましょう。ここでは身近な人がインフルエンザにかかってしまったときの感染予防法について解説します。

マスクや手洗いをする

室内にいても、マスクと手洗いを徹底しましょう。また、患者本人にもマスクをつけて過ごしてもらうことで感染するリスクを下げることができます。

部屋を加湿する

インフルエンザウイルスは、冬の低温で乾燥した空気中では長い間生存します。そのため、前述の接触感染のリスクも高まります。部屋を適度に加湿しておくとウイルスの生存率が下がり、接触感染のリスクも低下します。また、加湿により、のどの粘膜の防御機能(線毛活動)の低下も防ぐことができます。空気が乾燥していると加湿器がなければ、濡れたタオルなどを部屋にかけておくだけでも効果的です。

患者に個室で過ごしてもらう

飛沫感染、接触感染のリスクを避けるため、可能な限り患者には一人部屋で過ごしてもらうようにしましょう。また、患者の使った寝具や寝巻きから感染する恐れもあるため、交換や洗濯をしたあとにも手洗いを忘れないようにしてください。
 
<参照>
厚生労働省HP
日本小児科学会HP「抗インフルエンザウイルス薬の使用上の注意に関する注意喚起の徹底について(厚生労働省)」
国立感染症研究所「アデノウイルス解説ページ」
東京都感染症情報センター「インフルエンザの流行状況」
政府広報オンライン

photo:Getty Images