巨額の仮想通貨NEM」が流出した仮想通貨交換所コインチェック4月6日インターネット券大手マネックスグループ子会社になると発表した。

コインチェックの新社長には、マネックスグループ取締役兼常務執行役の勝屋敏氏が就任する予定。現コインチェック社長和田一良氏と同取締役COO大塚雄介氏はともに経営責任をとって退任し、執行役員となる。

コインチェックでは1月に約580億円分のNEMが不正流出し、投資の動揺が広がった。NEMを保有する約26万人全員に対し、あわせて約460億円を日本円で返する方針を示したが、投資の不信感は高まり、複数の損賠償をめる訴えが東京地裁に提起されている。

今回、マネックスグループ入りしたことでコインチェックの旧経営らを相手取った裁判はどのような影を受けるのか。また、マネックス側が新たに負う訴訟上のリスクはどのようなものが考えられるか。仮想通貨に詳しい勝部泰之弁護士に聞いた。

コインチェックの過失、裁判で明らか

ーーまずコインチェックの巨額流出問題についてどうみていますか

「本買収案件の前に、コインチェックは取引の再開やNEMの補償を既に実施しており、補償資の問題や、仮想通貨の分別管理状況に関する懸念はひとまず払拭されていると言えます。そうすると、残された賠償リスクは、NEMの補償レートの問題と、システム停止時における取引機会の損失の問題に集約されることになります」

ーー具体的に教えてください

「まず、補償レートの点ですが、判例は損=差額であると捉えています(差額説)。NEMの事例にあてはめると、流出がなかった(NEMを保有している)状態と、実際の銭賠償との差額が損ということになりますが、補償実行時の実際のレートよりも良いレートを支払っている本件にあてはめると、損はないという結論になります。

仮にそれ以上のレートでの賠償をめるのであれば、そのレートでNEMを売却して利益を得ていたことが確実であるなどの特別事情の立が必要になってくると思います。また、どのタイミングで履行不となったのかの判断も影するでしょう」

ーー機会損失についてはいかがでしょうか

「これは、ビットコイン等他の仮想通貨の取引停止期間中に、『損切りができなかった』『け損ねた』という問題です(なお、仮想通貨の下落自体による損を交換所や経営者にめていく場合には、流出させた行為と下落による損の因果関係の立められます)

コインチェックに『秘密鍵』(パスワードのようなもの)の保管についての落ち度があったことは明らかですし、システム停止から復旧までの内部管理態勢や代替出手段の整備が不十分であり、その結果、長期の取引停止を招いたという点に管理上の落ち度があったという側面は否めません」

ーー「ホットウォレット」での管理も問題視されました

日本公認会計士協会の定める分別管理に関する実務針においては、常にネットワークに接続し管理されている『ホットウォレット管理』自体が禁止されていたわけではないですし、何をもって仮想通貨交換所の過失と捉えるのか、裁判の中で争われていくことになるでしょう。

加えて、機会損失のような二次的な損(拡大損)の請については、特別事情の存在と予見可性が民法上要されますし、利用規約に免責規定も存在しますから、こういった点も論点となるでしょう」

マネックス下で事業立て直し

ーー今回のマネックスによる買収はどうみていますか

「本買収は発行済式の買い取りですから、その的は流出騒動の補償資獲得ではなく、あくまでも事業自体の立て直しであると思います。買収が訴訟進行に与える影は軽微で(むしろNEMの補償実行と取引再開の影の方が大きかったでしょう)、従前通り事実関係と法律論の争いになるものと思います」

ーーマネックス側が負うリスクはどうみていますか

「今後コインチェックマネックス連結子会社となりますが、コインチェックは既存の商号等を使い、あくまでも別会社として営業をしていくと聞いています。合併や事業譲渡ではないのですから、仮に訴訟においてコインチェックが多額の賠償義務を負うことになったとしても、それをマネックスに請できるわけではなく、その意味でリスクは限定的であるといえます。

もちろん、今後コインチェックが業登録を断念したり、多額の賠償負担によって破綻することにより投資した36億円が駄になってしまう、というリスクは残ることになります」

弁護士ドットコムニュース

【取材協弁護士
勝部 泰之(かつべ・やすゆき)弁護士
2007年弁護士登録。ジョージワシントン大学ロースクール卒業(知財法専攻)。仮想通貨交換所の登録申請、コンプライアンス整備を担当した経験を持つ。株式会社リーガル・テクノロジーズ代表取締役CEO
事務所名:麹町アセット法律事務所
事務所URLhttp://www.a-kojimachi.com

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