週刊新潮」(4月19日号)が報じた財務省福田淳一事務次官のセクハラ疑惑をめぐり、財務省4月16日、「福田事務次官からの聴取だけでは事実関係の解明は困難」だとして、調査協力を財務省記者クラブ(財政研究会)に要請すると発表した。

財務省がHPで公表した文書によると、調査は委託先の弁護士事務所が担当するとし、「福田事務次官との間で週刊誌報道に示されたようなやりとりをした女性記者の方がいらっしゃれば、調査への協力をお願いしたい」「協力いただける方に不利益が生じないよう、責任を持って対応させていただく」としている。

●「女性記者を矢面に立たせてはいけない」

この件について、寺町東子弁護士は、「財務省の要請の前段階として、マスコミ各社が全く女性記者を守っていない。個人を矢面に立たせてはいけない」と記者クラブ加盟各社の対応を批判する。

「まず、被害を受けているという女性記者の所属企業である報道機関のガバナンスが機能していないという問題がある。自社の従業員が取材先という、一般の会社で言えば取引先にあたる組織の役職者からセクハラを受けたと申告している場面で、社として対応しないことがおかしい。

報道機関各社は自社の記者たちへの安全配慮義務の履行として、ハラスメントの相談窓口を作るなり、本件について言えば、男女問わず全記者に聴取するなりして、事実関係を把握しなければならない。それを踏まえて、社もしくは記者クラブなどを通じて、財務省に申し入れをすべきです」

また、財務省の協力要請についても、情報提供者の情報を財務省にどこまで伝えるのか書かれていない点が問題だと指摘する。

財務省の協力要請には『協力いただける方に不利益が生じないよう』などと記載しているが、通常、弁護士は、対応を委託した依頼者である財務省に対して報告義務がある。特に、情報は弁護士限りで、個人が特定される情報が政府に提供しないとも書いておらず、第三者性の要件を満たしていない。これでは情報提供者が不意打ちで個人情報を開示され、今後の取材において、不利益をこうむる危険性がある」

週刊新潮編集部「記事は全て事実に基づいたもの」

財務省は要請と同時に、福田事務次官からの聴取結果を公表した。聴取を担当したのは「福田事務次官の部下である矢野官房長等が行った」ことも明らかにしている。

音声データにある女性記者とのやりとりの真偽について、福田事務次官は「音声データによればかなり賑やかな店のようであるが、そのような店で女性記者と会食をした覚えもない」と否定。

また、普段から音声データのような発言をしているのかについては、「業務時間終了後、時には女性が接客をしているお店に行き、お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある」としながら、女性記者に対してのセクハラ発言については「認識はない」。

報道は「事実と異なるもの」として、新潮社を提訴する準備を進めていることも明らかにした。

一方の新潮社側は「記事は全て事実に基づいたものです。財務省が本日公表した文書に対する週刊新潮の見解は、4月19日発表の次号に掲載いたします」(「週刊新潮」編集部)としている。

(弁護士ドットコムニュース)

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