場から拠点となる街へ移動中の車からいきなり飛び出し猛ダッシュしたかと思うと、ブロック塀の上を走るトカゲレインボーアガマ)をジャンプしながらワンハンドキャッチ。大げさでもなんでもなくホームランボールをジャンプして捕るイチローのようだった。まだ予定したフィールドに到着してないのにターゲットを察知してしまうと、街なかだろうが車内だろうが、お構いなしに着火してしまう回路がたまらない。「ヒュ〜すごいね〜!ほらアグレッシブだ、噛んでくる、おっとっとっと!」「こんな人が多いとこにもいるんだね〜」こっちは加藤の唐突さに面と食らってるのに、当人はただ爬虫類を語りたくて仕方がないというのも「バカ」でいい。このあとも本命となるカエル両生類だが)を探すのに、スタッフの身の安全など気にもとめず、森の中の激流に立ち入りズンズン遡上していくこと3時間、「いた!」と叫ぶやいなや横っ飛び、半身ずぶ濡れになりながら岩の上を転がり、世界最大のカエルゴライアスガエルを捕えた。「いた!すげえ!あぶねえ!」(ギリギリ捕まえたという意味)と興奮し叫んでいたが、いきなり飛びついた加藤の反射神経がまず「すげえ」し、目を見開き高揚しジャンキーみたいになってた加藤の表情の方がよっぽど「あぶねえ」。さらに加藤は、人間の子供くらいのデカさのニシアフリカコビトワニを川の茂みに飛び込み捕獲。素手で口を押さえ、全体重をかけワニの体を押さえ込み、もたつくスタッフに指示して口にテープを巻く。素手でワニを15分以上押さえ込み、捩じ伏せた興奮のまま加藤が語る。「ワニは持久力ないからすぐバテます、だからホールドして、ホールドして、ホールドはっぶしゅ!!」長く水に浸かり体が冷えたのだろう、得意気に語るウンチクの語尾がスムーズにクシャミに切り替わる。最高。『世界ぐるっと爬虫類探しの旅』によると、幼稚園時代、将来「イチゴさんになりたい」という女子を「なれるわけないじゃん!」とバカにしつつ、自分は?と問われると加藤は胸を張って「ワニになりたい!」と答えていたという。なりたかった相手を素手で堪能し、さぞ嬉しかったことだろう。どんな「獲物」も素手で捕るのは何故か?加藤のすごいのは、どんな時も網や罠やモリ(ヤス)などの道具どころか手袋すら付けずに、素手で捕獲を行うところ。カエルを探す時も、そこに天敵のヘビもひそんでいるとわかっているのに、川沿いの冠水した植物の中にガシガシと素手を突っ込んでいく。「ちょっと触れた時に、石なのか木なのかそれとも生き物の肌なのか、全て情報が指先から入ってきますから」「軍手してたら、あれ?ワニかな?何かな?と思ってる間にガブッときちゃう(噛まれちゃう)」この皮膚感覚を重視するこだわりは、指先で釣り糸をたぐるカジキ漁師や、僅かな感度に左右されるアスリートと同じものだろう。加藤の研鑽された捕獲技術を裏打ちする野性味にシビれる。それでいて、危険では?と心配するスタッフに「噛まれなきゃ大丈夫」とか、毒ヘビに対しても「噛まれたら(毒)抜けばいいし」と、身も蓋もないのもいい。危機意識がどこかズポッと抜け落ちてるのは歴代のクレイジーな出演者との共通点だ。加藤は各地の爬虫類のDNA採取をライフワークとしており、世界中を旅している。それは種の分布や進化の歴史を紐解くための実にアカデミックな行為なのだが、リミッターの外れた時のこの人を見れば見る程、理由は全て「後付け」であり、結局一番の動機は愛してやまない爬虫類と純粋に触れ合うのがたまらないからなんだろうなと思えてくる。(紹介VTRのナレーションは「ただ触れ合うのが目的ではない」と言ってはいるが)初登場時に、トカゲに指をガシガシ噛まれて嬉しそうしてる意味がわからない松本人志に言われ、「アゴの強さが『コイツ、これくらいか』っていうのがわかるんですよ」と、もっともそうな理由を嬉しそうに答えていたが、段々とその意味がわかってくるのだ。畑正憲ムツゴロウ)が猛獣に齧られても嬉しそうにしてるのと似ている。今夜の爬虫類ハントの舞台は初の南米、またしてもスイッチが入りのたうち回ってる加藤の姿が予告で放送されていた。楽しみだ。(柿田太郎)]]>

幼稚園頃の夢は「ワニになりたい」。小学校に上がりそれが無理だとわかると今度は「恐竜に乗って学校に通いたい!」。この「夢」の推移が「バカ」でいい。そんな加藤少年はテレビで初めてコモドオオトカゲを見て「これでもいいじゃん!背中に乗って学校に行ける!」とすっかり虜に。クレージージャーニー初登場にコモド島を訪れるさらに10年前、加藤が初めてコモド島を訪れた際の様子も本書に記されている。憧れのコモドオオトカゲと初対面した際、地元のレンジャーに「これに乗ってもいい?」と尋ね「だめ!」と即答される加藤。この時すでにアラサー。過去も今も本質は何も変わらず。さすがだ。