視力低下の原因として様々な疾患があります。しかし、一口に視力低下といっても、徐々に、一時的に、急激に出現など発症経過は様々です。また、視力低下の程度も歪んで見える、一部分が見えない、全体的にボケる、全く見えないなど多様です。ここでは視力低下のうち、急激な視力低下を引き起こす病気を紹介します。

視力が急に落ちた時に疑う原因6つ

視力検査の図と遮眼子と私

閃輝暗点

視界の一部がギザギザ模様に見えたり、チカチカしたりして、その箇所が見えなくなってしまいます。多くは眼の周辺部から始まり、その後中心部まで広がってから数十分程度で元の状態に戻っていきます。

閃輝暗点の原因は大脳にある後頭葉皮質の機能異常です。起きるきっかけは次の通りです。

閃輝暗点がみられた後、頭痛や吐き気などの片頭痛が起きるケースと起きないケースがあります。

片頭痛に閃輝暗点などの予兆がある患者さんは、脳卒中の発症リスクが通常の2倍程度高くなるという研究結果もあります(Markus Schürksらの論文、Migraine and cardiovascular disease: systematic review and meta-analysis)。

片頭痛の対処法については「片頭痛に治し方はないの?自分でできる対処法3つ」をご覧ください。

一過性黒内障(一過性脳虚血発作)

一時的に片眼が見えなくなり、数分後にゆっくりと視界が元のように戻っていきます。

一過性黒内障は、脳梗塞の前触れとして知られる一過性脳虚血発作(TIA)の症状の一つで、特徴的なものです。この他に一時的なめまい、嚥下障害や構音障害などが現れる場合があります。

症状について詳しくは「脳梗塞の前兆?TIA(一過性脳虚血発作)の4つの症状とは」をご覧ください。

網膜静脈閉塞症

網膜はカメラでいうフィルムの役割を果たしています。このフィルムに相当する網膜を網膜静脈と網膜動脈が流れていて、この2つは場所によっては交叉しています。

網膜動脈に動脈硬化が起きると、交叉する網膜静脈は圧迫されて血栓ができます。そうすると網膜に出血し、視力低下や視野障害といった症状が現れます。これを網膜静脈閉塞症といいます。

網膜静脈閉塞症は以下の2つに分けられます。

網膜中心静脈閉塞症

全ての網膜静脈が閉塞します。視力低下は多くが急激なものです。

網膜静脈分岐閉塞症

一部分の網膜静脈が閉塞します。症状は閉塞している部分によって程度が様々で、視力低下が起きても軽度だったり、視力は良くても一部に視野障害が起きたり、無症状だったりします。

 

閉塞にも以下のようにいくつか段階があります。

  • 切迫型(完全閉塞に至る前)
  • 黄斑浮腫(黄斑部の腫れ)
  • 新生血管(新たにできる血管)の出現
  • 新生血管緑内障
  • 硝子体出血

治療法は内服やレーザーの照射、ステロイド注射、抗血管新生薬の硝子体注射、手術があり、閉塞の段階によって異なります。

網膜動脈閉塞症

網膜静脈閉塞症と同様、網膜中心動脈閉塞症と網膜動脈分岐閉塞症に分けられます。

原因は網膜の動脈硬化による血栓が8割を占め、その他には塞栓があります。症状は片眼に起こる急激な視力低下です。網膜動脈分岐閉塞症の場合に、視力低下でなく視野障害や無症状のこともあります。

発症してから2時間以内では、治療として眼圧を低下させるために眼球マッサージや房水(目の中の水)を注射で吸引する前房穿刺などを行うことがあります。しかし多くの場合、改善は困難です。

網膜剥離

網膜剥離にはいくつかの種類があります。最も多いのは眼底の網膜に一部が破れたり、穴が開いて破れた部分や穴の周囲がさらに剥がれてしまったりする裂孔原性網膜剥離です。

網膜の一部が破れたり、穴が開いたりする段階を網膜裂孔と呼び、症状としては光が走る光視症、蚊が飛んでいるように見える飛蚊症があります。網膜裂孔から裂孔原性網膜剥離に至ると霧視、視野障害は出現します。

剥離した部分には治療後も視野障害が残りますので、早期発見が重要です。網膜裂孔の段階で発見されれば、網膜光凝固術によって、裂孔原性網膜剥離を予防することが可能です。裂孔原性網膜剥離に至った場合では早急な手術が必要になります。

硝子体出血

眼の中には硝子体(ジェル状あるいは液状の透明物)が入っています。硝子体出血は文字通り硝子体内に出血が起こる状態で、原因疾患として、網膜静脈閉塞症、網膜剥離、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、くも膜下出血などがあります。

症状は出血が増えるに従い飛蚊症や霧視、一部分が赤もしくは黒くなって数時間後には全く見えなくなるなど様々です。

治療は原因疾患を見分けることが大切です。特に網膜剥離が原因の場合は早急な硝子体手術が必要です。それ以外の場合は時間がたつと消失することがあるため経過観察を行い、2、3か月経っても消失傾向が見られない場合は硝子体手術を行います。

まとめ

急激に視力が落ちる疾患のうち、網膜剥離以外は加齢と動脈硬化、糖尿病、喫煙、高血圧などの基礎疾患があることがあります。網膜剥離、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症など早急な治療が必要になる場合もあります。特に一過性ではない場合はすぐに眼科を受診しましょう。

視力が急に落ちた気がする…その原因は?