ゴールデンカムイ」5話は、杉元のバイオレンスアクションアシリパ(リは小文字)のアイヌ知識、白石の特殊能力、とメインどころ3人組のおいしいシーンが全部見られる回。相変わらず無茶苦茶に多い原作のネタを取捨選択し、ストーリーを軸にバランスよく表現。「ここが見たい」というシーンを、しっかり見せてくれる、安定感のあるアニメだ。

アシリパさん、オソマを食べる
アシリパが初めてオソマを食べる場面は、原作では見開きで描かれている。

杉元は、アシリパや村の人にに迷惑をかけたくない、と一人で行動。しかし彼は鶴見中尉に捕まり、殺し合いの末逃げ出すハメに。結果、杉元はアシリパの弓術と白石の潜入術に救われた。
アシリパ「私がお荷物だと言いたいんだろう」「私を子供扱いして相棒として信用せず、ひとりで軽率に行動して捕まったのはお前じゃないか」

気まずい空気の中、桜鍋(馬肉)調理。中には味噌が入っていた。
アシリパは杉元の持っている味噌を「オソマうんこ)」と呼んで、極度に忌み嫌っていた。今まではいくら杉元が勧めても、断固として食べなかった。
今回、杉元はアシリパのために、気を使って味噌なしの鍋を作ろうとしている。
しかし彼女は、自分から努力して、味噌を食べた。「オソマおいしい!」
杉元も、つい涙をホロリ。

杉元は今まで、郷に入れば郷に従えの精神で、アシリパと一緒にアイヌの風習を守っていた。
今回はアイヌであるアシリパが、和人である杉元の文化を受け入れた瞬間だ。
これは鍋作り直前の「お荷物」発言にもかかってくるのだろう。
杉元には相棒として、自分を信じてもらいたい。そのために自分も、杉元に歩み寄らねばいけない。

アシリパの極端な変顔のインパクトで(作者がシリアスな場面はギャグを入れないと落ち着かないタイプらしい)ヘンテコな画面になっているが、今後の2人の旅の起点となる、とても重要なシーンだ。
以降、2人は強い信頼関係で結ばれ、命がけの場面でお互い背中を任せて行動するようになる。

なおアシリパはここから先すっかり、食事の際は味噌中毒に。
普段は杉元がどこに味噌を隠し持っているのかは、ファンの間でも謎のひとつ。

動物を大切にする杉元
アイヌ文化を大切にする杉元。5話では動物をとても大切にする姿が描写されている。
例えば杉元が脱出の際に、軍から奪って乗ってきた馬。
白石はこの後のことを考えて、連れて行くのは危険だから「処分したほうがいい」と証拠隠滅を勧める。
杉元は「ホラ、もうこんなに俺になついている」とやたら寂しそうだった。

アシリパエゾシカを追っていた時、狩猟に慣れていない杉元は急所を外して撃ってしまった。
「これじゃあ無駄に苦しい思いをさせただけだ、必ず仕留めてあげなくては…」
(ちなみにこれは現在日本の鹿狩猟でも同じで、ハンターたちは一発で急所を射抜いて殺すよう心がけている)

アシリパの村にいた時は、拾ってきたヒグマの子供をいつも懐に入れて、世話をしていたこともある。
人間は容赦なく殺し、刺青の入った人皮は剥ぎ取り、5話では腸を抜きとるなどしている彼の行動を比較すると、かなりギャップを感じる。
とはいえ、彼の自然と動物へ優しさは、アシリパたちアイヌに受け入れられている要因の一つだ。

ゴールデンカムイ」は食材と自然に敬意を払っている作品。動物の命を粗末にすることは、杉元やアシリパはほとんどしない。
無用な殺生は極力しない。食べる分は、行く先々で必要なだけ狩る。食べる際は「ヒンナヒンナ」と感謝しながら味わう。
アシリパと共にいることで、食が持つ思想や人間性が、杉元にも染み付きはじめている。
2人の食への向き合い方は、白石をはじめ今後合流する他の人間にも伝染。人と人との繋がりの表現になっていく。

(たまごまご)

「ゴールデンカムイ」5巻。アシリパのオオカミを狙っている、元マタギの谷垣。次の6話で、熊撃ちのマタギ・二瓶鉄造とからむことになる