2018年5月から上演される少年社中20周年記念第二弾 少年社中 第34回公演『MAPS』2018年1月に上演された『ピカレスク◆セブン』に続く記念公演 第二弾となる本公演は、「楽園を目指して旅する冒険家」、「江戸時代、日本の地図を作ろうとした伊能忠敬」、「一人の漫画家が苦悩の果てに生み出す漫画」という3つの物語に関わる3枚の地図を巡るファンタジー作品で、劇団主宰の毛利亘宏による完全オリジナル戯曲だ。本公演で脚本・演出を担当する毛利と、主人公の一人である冒険家を演じる多和田秀弥に作品にかける意気込みや役についての思いを聞いた。

ーー少年社中20周年記念公演として、第一弾公演『ピカレスク◆セブン』の手応えはいかがでしたか?

毛利サンシャイン劇場という大きな劇場で、本当に思い入れの強い出演者たちと、一つの作品をつくれたなという思いがありましたね。ずっとやりたかったエンタメの内容だったので、格好よくまとめられたと思います。少年社中らしい部分と少年社中らしくない部分が両方存在する作品が、お客様にも好評をいただけたことを一つの自信にできた公演だったなと思っています。

ーー全日程終了時に、毛利さんがTwitterで「なんだかようやくスタートラインに立った気がしてます」と発言されていましたが、そこにはどのような思いがあったのでしょうか?

毛利:何でしょうね。やりたいことをやろうと思って、それが形にできるようになったなということでしょうか。今までは、こういうことがやりたいと思っても、正直、自分の実力が足りていないと感じて、できなかったこともありました。だけど、『ピカレスク◆セブン』では、やりたいと思ったことをきちんと舞台に、作品にすることができた。環境的にもそうですし、その中で「ここからがスタートなんだ」と感じたんでしょうね。だから、第二弾公演では、やりたいって思ったことを何でもやってみるという思いで臨みます。20周年記念興行と銘打っていますが、少年社中としては単独公演ですから、僕のやりたいことがすごく詰まった作品になると思いますよ。

ーー多和田さんも『ピカレスク◆セブン』を観に行かれたそうですが、いかがでしたか?

多和田ファンタジー要素が強いんだけど、ただそれだけじゃなくて、普通だったら交わらないであろう人物同士が入り組む設定がすごくおもしろかったですね。芝居で魅せるところもあれば、セットや動き、アクションも激しかったので、いろんなアプローチでお客さんを楽しませる作品だと感じました。笑ったシーンもありましたし、前のめりになって観てしまうシーンもありましたね。僕のイメージ的に、毛利さんはエンタメ要素がすごく強くて、そういう世界観を鮮やかに作られる方だなという印象があるんですよ。毎回、観させて頂く作品の色はそれぞれで違うんですけど、そういう観ている側をワクワクさせるような作品だなと感じていたから、『ピカレスク◆セブン』もすごく面白かったです。

多和田秀弥

多和田秀弥

ーーその少年社中の20周年記念公演に出演されることになったお気持ちはいかがでしょうか?

多和田:少年社中の舞台に出てみたいという気持ちはすごくあって、いつか出られたらと思っていたんです。だけど、『ピカレスク◆セブン』を観てからすぐに出演が決まったので、ビックリしました(笑)。『ピカレスク◆セブン』を観劇させていただいた時に、改めていつか出たいなとより強く思い、また、毛利さんと久しぶりにお会いさせていただいたときも「いつか、この方と舞台をやりたいな」と思ってたんです。そうしたら、すぐにお話をいただいたものですから(笑)

毛利:そうだね(笑)

多和田:でも、それも言霊みたいに感じたりしています。この20周年という少年社中さんにとって大事な節目に、その第二弾公演でも新しい挑戦をきっとまたされるんだろうなというのを、あらすじを読んでも感じています。それにちゃんと僕も乗っかって、世界観を広げていけるように頑張りたいです。選んでいただいたからにはお返ししたいですね。

ーー多和田さんは少年社中の公演だけでなく、毛利さんの外部公演などを通しても毛利さんの作・演出の舞台作品には初出演ですね。お二人の出会いは、戦隊シリーズ手裏剣戦隊ニンニンジャー』での脚本家・毛利さんと出演者・多和田さんですが、毛利さんから見た当時の多和田さんの印象はどうでしたか? 

毛利:多和田くんが演じたキンジ・タキガワ / スターニンジャーという役はすごく難しい役でしたね。追加戦士というのは難しいと思うんですよ。物語の途中から参加するため、色づけが非常に濃いキャラクターになりやすい。キンジもまず、喋り方からしておかしかったよね?

多和田:はい、そうでした(笑)。見た目も個性的なだけでなく、喋りかたもおかしくて、追加戦士は強烈なキャラクターが多いイメージだったけど、いつも以上にかなりやばいキャラクターなんじゃないかなという印象でした(笑)

毛利:「一体、どういうことだ!?」みたいなね(笑)。ただ、多和田くんはそのキャラクターをうまく広げてくれて、おもしろくやるなという印象で、キャラクターに負けていませんでしたね。

多和田:僕もキャラクター負けしないということをまず目標に掲げていました。キンジという役は個性が出過ぎているぐらいの役だったので、視聴者の皆さんが違和感を覚えないようにするというのがまた1つの目標だったんです。毛利さんに負けてなかったと言われるとすごく嬉しいですね。演じていて「あのキャラクターを頑張っているな」じゃなくて、「なんだこのキャラクターは!? でも、なんか面白い」と言ってもらえるような人物にしたいと思いながら演じていました。だから、毛利さんにほめられるのは素直に嬉しいです。脚本を書いてくれた毛利さんから言われるというのは、視聴者の方に言われるのとはまた違いますので。

毛利亘宏、多和田秀弥

毛利亘宏、多和田秀弥

ーー多和田さんから見た毛利さんの脚本の印象というのはどうでしたか?

多和田:『ニンニンジャー』のメインライター下山健人(※主にアニメや特撮に参加している脚本家)さんで、毛利さんはサブライターだったんですよね。下山さんもコメディ要素の強いお話を書かれるなと感じてましたけど、毛利さんは下山さんとは当たり前ですけどまた違うベクトルの世界観を持ってらっしゃって、その面白さを30分という限られた枠に全力で出してこられる方だなというイメージがありました(笑)。毛利さんが脚本を担当された回で、僕は役的にあんまり暴れることはなかったんですよ。でも脚本を読んで、僕もこういうのをやりたいなと毎回羨ましく思っていましたね。「毛利さんが書いたらどうなるんだろう」みたいな興味がわき、脚本を読んだ時には「こんな世界観に入りたいな」とも感じました。その印象は毛利さんの舞台を観てますます強くなりましたね。

毛利:嬉しい(笑)

多和田:当時、『ニンニンジャー』のプロデューサーさんとかにも言っていたんですよ。「なんで毛利さんの脚本回はアオニンジャー(※松本岳が演じるニンニンジャーの一人)がメインのお話しばっかりなんですか?」って(笑)

毛利:ひたすらアオニンジャー担当になってたね(笑)

多和田:そうなんですよ。いつのまにか担当になっていたので、みんなで「本当に毛利さんは八雲担当だよね」と言っていたんです(笑)。毛利さんはアオニンジャーが好きなんだと、出演者のみんなが嫉妬していたんですよ(笑)

毛利:最初は、下山さんがコメディ路線に行くから、シリアス担当のつもりで入ったんですよ。それで、初回はお父さんと家族のしんみりした話を書いて、その路線で行こうと思っていたんだけど、2回目でなぜか芝刈り機(※アオニンジャーの宝物がなぜか芝刈り機で、さらにその芝刈り機が妖怪になるというエピソード。放送当時、そのとんでもな内容に視聴者の反響が大きかった)みたいなことになって、そっちに突き進むことになっちゃって(笑)。だけど、ニンニンジャーで書けなかったことを少年社中で書けるのか……と思うとうれしく思います。

ーー今回の第二弾公演『MAPS』は、第一弾公演『ピカレスク◆セブン』の興奮冷めやらぬうちの発表でしたが、どんな作品になりますでしょうか?

毛利あらすじとしては、本当かどうかも分からない3枚の古い地図を持った人々が楽園を目指すお話です。そして、実は地図にまつわる嘘を持つキャラクターが出てくる。今回、古い地図と嘘と楽園という3つのキーワードで物語を作りたいなというのがありまして。その3枚の地図が3つの違う世界をまたぐことになるんです。一つはファンタジーのような冒険家たちが楽園を目指すお話で、その船長の役割を冒険家として多和田くんが演じることになります。その世界とは別に、日本地図を作ってみたいと冒険をする伊能忠敬という実在の人物が出てきます。ファンタジー的な味付けはするんですけど、時代劇的な世界ですね。で、あともう1つは、この冒険家たちの物語を描く漫画家の話です。その3つの時間的にバラバラな物語が絡み合っていって、それがやがて一つになっていく物語を描きたいと思っています。

毛利亘宏

毛利亘宏

ーー今回はファンタジーの『ピカレスク◆セブン』や、SFの『アマテラス』とは違って、少し落ち着いた大人な物語という印象があります。

毛利:大人な物語にはなると思います。ただ、最近すごく意識するようになったんですけど、観に来た人が「自分が自分のままでいいんだ」とか、「自分のやりたいことをやっていいんだ」とか、すごく肯定できる気持ちになれるお芝居を作りたいという思いが強くあります。少年社中らしいエネルギッシュな感じは残しつつも『ピカレスク◆セブン』はアクションをたくさんやったんですけど、今回はもうちょっと内面を描くお話しができたらなというのはありますね。

ーー冒険家、伊能忠敬、漫画家の3人が主人公になると思いますが、その中で、冒険家に多和田さんをキャスティングした考えというのは?

毛利:3人の主人公にある種の自分、いつかの自分を投影したいなと思っているんですよ。多和田くん演じる冒険家は20代の自分として、仲間と一緒にがむしゃらに何か目的に向かっていこうとしていた自分ですね。上京して少年社中を立ち上げた頃の自分のような。それを投影したいなと思っているんです。南圭介くんに演じてもらう漫画家というのは、現在のクリエイターとしての自分ですね。20代を経て、色々と苦しみながら作品を作っていくというね。それで、伊能忠敬は年を取ったこれからの自分を思って描いていくことになっていくんじゃないかなと思っています。だから、自分の中でも現在、過去、未来じゃないですけど、3人の自分が交錯し交わっていく作品になるんじゃないかなと考えているんです。かつて、真っ白な地図のようにどうなるかも分からない中で、少年社中を作って続けてきた気持ちみたいなものを、楽園を探す冒険家たちに投影したいんですよ。それを率いるのが多和田くんというイメージでいます。

多和田:毛利さんが3人の主人公に自分を投影されているというのは聞いていました。若いときの毛利さんということで、夢に向かってもがきつつも全力で突き進む、でも、楽しんでいるという生き様をみたいなものを表現したいですね。毛利さんには、「自由にやって欲しい」とおっしゃっていただいているので、全力でぶつかりたいと思います。ちょうど僕も20代ということもあって、きっとリンクする部分もでてくると思っています。やりたいこともあるけど、それが全て上手くいくわけでもないし、やらなきゃいけないこともあるという中で、やりたいことを見極めて前に進んでいくというような。まるで地図を自分で描いていく感覚、地図を広げていくみたいなことを、この作品を通して表現できればと思います。そして、観て下さる方に少年社中らしさ、毛利さんらしさを感じて頂ければと思いますね。

ーー先ほど、毛利さんから“3人の主人公に自分を投影されている”とお話がありましたが、そうすると伊能忠敬は将来の自分の理想の姿ということでしょうか? 

毛利:そうですね。伊能忠敬が測量を始めた50代というのは、今でいう70代ぐらいの感じだと思うんですよ。もう一つ本当の夢を叶えようとする伊能忠敬という人間に昔からすごく興味があったんですよね。徒歩でGPS並に正確な測量をしていたんですけど、もともとは地球のサイズを知りたかったという話もあって、そこにすごくロマンを感じるんです。70歳になった自分がどういうことを考えているかというのは想像もつかないですけど、今よりアグレッシブでありたいですね。少年社中も年齢的にはすっかり中年社中となりましたけど(笑)。ちゃんと未来へ向かって進みたいですね。老年社中になったとしてもね(笑)。20年も劇団をやっていると、観客の年齢層もずいぶんと幅が広がってきました。若い子から、僕らのような50代に近くなってきた人たちにまで観てもらえる劇団になっているので、そういう全世代に向けたお話というのも意識して書こうと思っています。少年社中の今を描くというか、これまでと、これからずっと続いていくというお話しを描くことになる気がしています。

ーー多和田さんは『ニンニンジャー』でコミカルさと格好良さを併せ持った役を演じていましたが、今回の冒険家という役柄や物語について何か考えていることはありますか?

多和田:どういうものになるかはこれからですし、僕次第なんだろうなとは感じています。偶然にも僕と南さんがスーパー戦隊シリーズ追加戦士つながりというのもありますけど、この作品のキャラクター的なポジションとして、僕と南さんは正反対なものにしたいと毛利さんからおっしゃっていただいたんですよ。そう考えた時に全然違うものになりそうだなという楽しみと、どういうものが来るんだろうかというワクワク感がありますね。毛利さんが「多和田だったら、これが似合うんじゃないの?」とか、「こういう冒険家をやって欲しい」と思って下さったものを、僕は受け止めて表現するのが仕事だと思うので、それを恐れずにやりたいなという感覚です。

多和田秀弥

多和田秀弥

ーー南さんとの共演は初めてでしょうか?

多和田:初めてですね。南さんが出演されている番組に出たことがあるぐらいです。お芝居を一緒にするのは初めてなので、「やっと共演できるのか」みたいな感じですね。スーパー戦隊追加戦士という立場もそうですけど、ミュージカルテニスの王子様』でも手塚国光という同じ役をやっていたというのもあるので、似たものを感じています。『MAPS』では3つの話がバラバラだけど、それがつながっていくというところで、2人の持っている独特の色を共演することで、作品に放っていけたらなと思っています。

ーー伊能忠敬を演じる岩田有民さんや、その他の少年社中の劇団員の方々について感じていることはありますか?

多和田:『ピカレスク◆セブン』を観た時にも思ったんですけど、劇団員の方々は、もちろんゲストの皆さんと違う空気感を持っていながら、それが浮いてなくて、上手く合わさっているんですよね。ゲストの方には負けない色味みたいなものをそれぞれが放っていらっしゃる印象があります。毛利さんが作る少年社中の世界観に必ず必要な方たちだろうなというのを毎回思いますね。毛利さんがやりたいものをすごく理解していらっしゃると思うので、僕もすごく心強いというか、その世界観に一緒に飛び込めるのを楽しみにしています。

毛利:僕も楽しみです。『ニンニンジャー』の頃から多和田くんにはすごく興味があったので。それこそ、アオニンジャーばかり書かないで、もうちょっとキンジも書きたかったみたいなものはあったんですよ。

多和田:えー、そうだったんですね。

毛利:ようやくこれで、書けます。面白いなと思った人になにか役(キャラクター)を書いて、その人が持っている魅力を借りることで一つの役にしていくというのがいつもやっている作業なんですけど、そういう意味でも多和田くんの魅力を引き出したいですね。

多和田:ぜひ引き出して欲しいです。今回、こうやって毛利さんに出会えたのも、きっと運命だと思っています。毛利さんの目から見えている、僕も知らないという自分を一緒にこの作品を通して引き出せれば、この作品にしっかり貢献できるんじゃないかなと……考えています。だから、毛利さんにとって、少年社中にとって、良い方向性になるようエネルギーを預けて、全力で向き合いたいと思います。

ーー最後に公演に向けての意気込みや、お客様へのメッセージをお願いいたします。

多和田:毛利さんのお話を聞いていて、「人って自由でいいんだろうな」と感じています。それぞれの考え方や感性があって、それが認められる場合もあれば、認められない場合もあると思います。だけど、自分でやりたいことに向かって突き進んでいくエネルギーや素晴らしさを、この作品で自分もまた実感したいし、それを表現して観て下さった方にもそういうエネルギーを持って劇場から帰って頂きたいなと思っています。若さあふれる頃の毛利さんのようにエネルギッシュに舞台へ立てるように頑張りたいです。毛利さんの若い頃のお話しを色々と聞きたいですね(笑)

毛利:少年社中の単独公演としては1年以上空いているので、これぞ少年社中と言えるような今の少年社中をちゃんとお見せしたいと思っています。最初から変わらない思いとして、観た後、全力で走って帰りたくなるようなお芝居を毎回目指しています。みんなの背中を押せるようなお芝居を作りたいなと。お客様が「明日、頑張ろう」と思えるような作品にしますので、ぜひともご期待下さい。劇場でお待ちしております。

毛利亘宏、多和田秀弥

毛利亘宏、多和田秀弥

取材・文・撮影=櫻井宏充

毛利亘宏、多和田秀弥