体のブツブツや体臭が気になる――。その症状はもしかしたら、体に繁殖した「マラセチア菌」が原因かもしれません。マラセチア菌は、誰の皮膚にも存在する常在菌ですが、汗をかいたり皮脂がたまったりすると急激に繁殖し、さまざまなトラブルの元になります。マラセチア菌の正体や感染の予防法について、アヴェニュー六本木クリニックの医師・太田理会さんに聞きました。

Q.マラセチア菌とは何でしょうか。

太田さん「マラセチア菌は日頃から皮膚(特に毛根を包む組織である毛包)にすみついている常在菌の一つです。高温・多湿の環境、皮脂分泌の多いところで急激に繁殖します」

Q.マラセチア菌の繁殖によって引き起こされる症状と、その治療法を教えてください。

太田さん「マラセチア菌によって引き起こされると考えられる疾患は、『脂漏性皮膚炎』『癜風(でんぷう)』『マラセチア毛包炎』などです」

【脂漏性皮膚炎】 

マラセチア菌が関与し、顔、頭、前胸部など皮脂の多い部分に、時にフケのような付着物を伴う湿疹(しっしん)ができる。
治療法=抗真菌外用薬、副腎皮質ステロイド外用

【癜風】

マラセチア菌に感染し、主に胸や背中などの体幹に、褐色や白色のシミのようなまだらの斑点ができる。
治療法=抗真菌外用薬

【マラセチア毛包炎】

マラセチア菌に感染し、胸や背中などに2~3ミリくらいの小さな赤いブツブツができる。膿(うみ)を伴うブツブツができることも。
治療法=抗真菌外用薬

Q.皮膚炎以外に、気になる症状はありますか。

太田さん「マラセチア菌を含む皮膚常在菌によって皮脂が分解されたり、酸化したりすることで、臭い(体臭)が発生すると考えられています」

Q.繁殖しやすい環境や人の特徴はありますか。

太田さん「マラセチア菌は、高温多湿の環境、特に汗をかきやすい夏の時期に多く繁殖し、発症しやすくなります。脂漏性皮膚炎は乳児や思春期以降の成人に、癜風やマラセチア毛包炎はいずれの年齢でも認められますが、思春期以降に多いです。

また、マラセチア菌は皮膚常在菌のため、適切な予防策を施さないと繁殖しやすく、再発もしやすくなります」

Q.繁殖を予防するための方法を教えてください。

太田さん「皮脂や汗をこまめにケアして清潔に保つことを心掛けてください。暑くてジメジメしたところはなるべく避けること。汗をかいたりベトベトを感じたりしたら、早めに市販の汗ふきシートなどで拭き取ったり、シャワーでしっかり洗い流したりしましょう。身体のケアだけでなく、衣服の洗濯やクリーニングも大切です。

症状を繰り返す人は、ミコナゾール硝酸配合のシャンプーや液体石けん、泡石けんなどの使用をお勧めします。『コラージュフルフル』(持田製薬)『メディクイック』(ロート製薬)などが薬局などで購入可能です。

また、皮膚を健康に保ち、皮脂の過剰分泌を誘発しないために睡眠不足や偏った食事などは避け、生活リズムを整え、ストレスをため込まないようにしてください。食事は、特にビタミンB群(B2・B6)やビタミンCを多く含む食事を心掛けましょう。ビタミンB2は肉類(特にレバー)、卵、納豆、乳製品、ウナギなどに多く含まれます。難しい場合はサプリメントなどを利用するのも有効です」(ライフスタイルチーム)

マラセチア菌の繁殖と感染を防ぐ方法は?