この度、学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に公開された研究により、宇宙人並行宇宙に存在する可能性があることが判明した。そして、その鍵を握っているのは、「ダークエネルギー」だという。一体どういうことだろうか?


マルチバース(多元宇宙)

 マルチバース宇宙論では、宇宙がこの宇宙だけでなく、それぞれ独立した宇宙が無数に存在していると考えられている。それぞれの宇宙はそれぞれの物理法則に従っており、この宇宙と同じ物質や法則で成り立っている必要はない。あまりにも不安定な法則のため誕生した瞬間に消滅してしまった宇宙や、重力加速度が9.80665m/s^2ではない宇宙も存在することだろう。

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 科学ニュースLive Science」(5月14日付)によると、これまで科学者は、そのような宇宙が存在するとしても、我々の宇宙のように銀河系が形成され、生命が誕生するほど安定した宇宙が発生するためには、極めて厳しい初期条件が必須となるため、生命体が存在するような並行宇宙も珍しいはずだと考えてきたという。

 だが今回の研究で、宇宙のさまざまな初期条件をコンピュータシミュレーションで試してみたところ、安定した宇宙の形成にはそれほど厳密な初期条件は必要ではないことが明らかになったそうだ。ただし、ダークエネルギーの存在を考慮する限りにおいて、という条件付きではあるが。


ダークエネルギー

 ご存知のように、宇宙はビッグバン以来、膨張し続けていると言われている。誰もが当たり前のように受け入れている“事実”だが、これは極めて奇妙な現象なのだ。

 というのも、時空は重力によって内側に引っ張られているにもかかわらず、宇宙全体の膨張速度は加速度的に上昇しているからだ。普通に考えれば、重力によって時空が収縮するはずであるから、膨張速度は減速すべきだろう。

 この常識外れの事態をなんとか解釈しようと導入されたのが謎に満ちた「ダークエネルギー暗黒エネルギー)」である。ダークエネルギーは全宇宙の70%を占めていると言われ、時空を押し広げる負の圧力、つまり斥力を持っている。これが宇宙空間を膨張させ続けていると考えられているわけだ。

 このダークエネルギーが多すぎると、宇宙の膨張速度が速くなりすぎて銀河の形成がうまくいかず、少なすぎると重力が勝り、生命が誕生する前に銀河が押しつぶされることになる。我々の宇宙には、ちょうど良い量のダークエネルギーが過不足なくあるおかげで、銀河の形成がうまくいき、めでたく地球上に人類という知的生命体が誕生することができた、というわけだ。

 しかし、生命が誕生するためのちょうど良いダークエネルギーの量とは一体どれほどなのか? 我々の宇宙だけが奇跡的にウルトラファインチューニング(超微調整)された唯一無二の宇宙なのだろうか?


並行宇宙人は存在する!

 今回、英国、オーストラリアオランダの研究者らは、「Evolution and Assembly of Galaxies and their Environments」(銀河とその環境の進化と集合形成)と呼ばれるコンピュータプログラミングにより、ダークエネルギーの比率をゼロから我々の宇宙の数百倍まで設定し、あらゆる宇宙の誕生、過程、消滅をシミュレーションしたという。

 その結果は驚くべきものだった。なんと、ダークエネルギーの量が我々の宇宙の300倍増えても生命は発生したというのだ! つまり、我々の宇宙、ひいては我々の存在にもなにも特別なところはなかったということだ。

シミュレーションにより、ダークエネルギーによる宇宙の加速度膨張はほとんど惑星の誕生に影響しないことが分かりました。そのため、(ダークエネルギーが多い宇宙でも)生命が誕生する余地はあるのです。ダークエネルギーを数百倍に増やしても、生命のまったくいない宇宙を作るには不十分でしょう」

 論文執筆者の一人であるウェスタン・オーストラリア大学の研究フェロー、パスカル・エルアヒ氏はそう語っている。だが、ここで逆説的な疑問が浮かんでくる。我々の宇宙が特別にウルトラファインチューニングされていないどころか、むしろダークエネルギーの量が必要以上に少ないのは何故だろうか? 

 この疑問に対し、ダラム大学のリチャード・バウアー教授は、「我々の宇宙の奇妙な性質を説明するためには、新たな物理法則の発見に乗り出すべきだと考えます」と答えている。だが、マルチバース宇宙論や人間原理の観点に立てば、これはむしろ奇妙でもなんでもないことだと言えるだろう。単純に我々の宇宙はそれほどうまく調整されていない宇宙であると考えればよいのだ。

 生命が発生できないレベルの過酷な宇宙を1点、あらゆるところで知的生命体が発生しているウルトラファインチューニング宇宙を100点とした場合、多くの宇宙は40点~60点ぐらいにおさまるのではないだろうか? 我々の宇宙もその範囲内におさまる中の下ぐらいの宇宙なのだろう。

 さて、今回の研究から、並行宇宙に人類以外の知的生命体がいることは理論的にはほぼ間違いないことが証明された。しかし、残念なことに、宇宙の地平線を越えて彼らに会いに行くことは絶望的に不可能である。可能性があるとしたら、宇宙間を行き来できるほどの超高度な技術を持った並行宇宙人が、無数にある宇宙の中から、さして出来のよくない我々の宇宙に気まぐれに訪れ、無数にある天の川銀河の星の中から、奇跡的にもこの地球にやって来た時ぐらいだろう……。
(編集部)


イメージ画像は、「Thinkstock」より

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