女性の表情から髪の一本一本までをみずみずしく、写実的に描いた油絵が、SNS上で話題となっています。「生命を感じさせる」「素直にすごい」「精巧な絵を描けることに驚き」といった声が寄せられています。絵を描いた男性に話を聞きました。
見たものをありのままに描く
川に寝そべっている女性を描いた「言葉にする前のそのまま」というタイトルの絵は、透き通った水、白く美しい肌、見る者に向けられたまなざしが絵に躍動感を与え、その風景が目の前に広がっているかのような印象を与えます。
描いたのは画家の三重野慶さん(33)。写実美術のコンクール「第2回ホキ美術館大賞展」で特別賞を受賞したこともあります。
Q.絵を本格的に勉強するようになったのはいつからですか。
三重野さん「広島市立大の芸術学部に進学してからです。それまでも独学でイラストを描いていましたが、自力では成長のスピードが遅くなってきたと感じていました」
Q.写実絵画の道へ進んだ理由は。
三重野さん「大学進学前から、目で見たままに見えるように絵を描いていました。進学先の大学も写実絵画を特色としていたので、自然とその方面に進むようになりました」
Q.これまでに何点描きましたか。また絵画の制作期間は。
三重野さん「約40点です。最短でも1カ月以上かけます」
Q.人の肌は本物と見間違うほどですが、制作方法に特徴があるのでしょうか。
三重野さん「通常の油絵と同じように描きます。制作方法に変わったことはありません」
Q.人物を描く絵が多いですね。モデルはどういった人に頼みますか。
三重野さん「人を描くのが一番好きですから。モデルは知り合いのほか、SNSで気になった人に連絡してお願いすることが多いです」
Q.絵を描く上で意識していることは。
三重野さん「『目にしたままの姿を描く』ことです。目に映って脳に送られた像と、心で捉えた像には差があり、感情や認知により色や形を変えていると考えています。『目にしたまま』とは、私の中にある色や形、光をそのまま描くことで、言葉にならないものをありのまま伝えることです。
そもそも今感じていることを言葉で伝えることはできるのでしょうか。自分が使う言葉の意味と相手の中の言葉が全く一緒だとは考えていません。自分の感情や感覚を言葉にするとき、それは翻訳され形を変えた別のものになってしまいます。私が本当に伝えたいことを思う時、どうしてもそのように考えてしまいますね」
Q.作品に対してどのような意見が寄せられていますか。
三重野さん「絵のモデルさんには『鏡で見るのとは違って、本当に自分と対峙(たいじ)しているようだ』と言われましたね。『今まさにそこにいるようだ』という声がうれしかったです」
Q.今後の目標は。
三重野さん「まだ自分の描きたいことを十二分に描けているとは言えないので、一枚一枚、成長を重ねていきたいです」
三重野さんは7月13日から28日まで、東京・日本橋にある「ギャラリー須知」で作品を展示する予定です。
(報道チーム)
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