AMDから突然の依頼がありました。まあ,だいたいいつも突然なんですけど,今回は「FreeSync 2の使用感を『Far Cry 5』で確認してほしい」というものです。
 確かに「FreeSync 2とはなんぞや」という技術解説は書いたことがありますし(関連記事),AMDイベントで同社が制作したデモは見たことがありましたが,FreeSync 2が市販のゲームタイトルでどう動くかというのは見たことがなかったので,提案を承諾した次第です。


 すると数日後,我が家に,FreeSync 2対応のSamsung Display Solutions製ゲーマー向け49インチディスプレイ「C49HG90」と,「Radeon RX Vega 64」搭載PCがやってきました。
 ただこの構成でFar Cry 5を起動して,ゲーム側のグラフィックオプションを弄ってみても,FreeSyncに関する設定はあれど,FreeSync 2に関する設定が見当たらず。自動でFreeSync 2が有効になるかとも思いましたが,C49HG90のステータス表示を見る限り,そんな様子もありません。


 おかしいと思ったボクは,AMDに「現状のFar Cry 5って本当にFreeSync 2に対応してる?」と問い合わせたのですが,数日後に返ってきた答えは「「Far Cry 5のFreeSync 2対応パッチは6月にならないと提供されません」というものでした。

 ギャフン。

 当然「ならなんでパッチが完成してからの依頼ではないのか」という疑問が浮上するのですが,「それまでお使いください」という言葉ももらえたので,急遽テーマを変えて今回は「Far Cry 5をFreeSync 2ではなく,FreeSyncプレイするためのセッティング指南」を執筆することにします。
 なお,本稿は接続先がC49HG90という前提で話を進めますが,FreeSync対応ディスプレイであれば別の機種にも応用が利くので参考になるでしょう。


■32:9アスペクトの49インチ超々横長ディスプレイは「16:9アスペクトで言う何インチの二画面分」なのか?

 PCのほうは4Gamer編集部が用意した自作PCで,CPUは「Core i7-7700K」,搭載するメインメモリはPC4-17000 DDR4 SDRAM 4GB×2という仕様です。
 注目は日本市場で正規販売されていないC49HG90のほうでしょう。「FreeSync 2対応」という注目の要素が霞んでしまうほど強いインパクトがあるのは,32:9というそのアスペクト比です。
 最近ではアスペクト比21:9のウルトラワイドディスプレイが相応に存在感を増してきていますが,32:9はあまり他に例がありません。


 32:9という数字の組み合わせは,よくよく考えれば「(16×2):9」です。つまりC49HG90は,ごく一般的なワイドアスペクトである16:9の2画面分を1画面で実現してしまった製品というわけなんですね。

 解像度は3840×1080ドット。横解像度はいわゆる「4K」ですが,縦解像度フルHD相当となります。
 画面サイズは前述のとおり49インチですが,画面サイズの「インチ表現」は対角長で表すものというのはご存じのとおりでしょう。C49HG90は32:9アスペクトという極端な横長デザインなので,「49インチ」というサイズ表記から受ける印象よりはかなりコンパクトな感じです。

 16:9アスペクトでいうところの何インチパネル2枚分なのかが気になる人がいるかもしれません。「普通に49を2で割った24.5インチかな」と思われるかもしれませんがそれは不正解。アスペクト比32:9で49インチだと,その半分
であるアスペクト比16:9の対角長は,三角関数で計算して27インチになります。小難しい計算はともかく,C49HG90は27インチフルHD液晶パネルを2枚横に並べた感じのディスプレイだと思ってもらえばいいと思います。
 一点だけ補足しておくと,C49HG90は横に長い画面を見やすくするために湾曲しており,その曲率は1800R(半径1.8mの円弧)です。

 スタンド付きの本体サイズ1203(W)×382(D)×415〜545(H)mm。スタンドの基準高は525mmで,そこから下に100mm,上に20mm程度スライド調整できるイメージですね。
 上下回転(チルト)は−2〜+15度,左右回転(スイーベル)は各15度でこちらも調整可能です。また,100×100mmのVESAマウントを取り付けることも可能と,総じて設置しやすさは優秀だと思います。


 ビデオ入力インタフェースはHDMI Type Aが2系統,DisplayPortが1系統,Mini DisplayPortが1系統。スピーカーは搭載していませんが,3.5mmミニピンのヘッドフォン出力とライン出力が1系統ずつあります。2ポートのUSB 3.1 Gen.1 Type-Aハブ機能もありますね。

 液晶パネルのスペックにも言及していきましょうか。
 パネルは液晶タイプは垂直配向型(VA)で,ネイティブコントラストは3000:1。公称視野角は上下左右ともに178°となっています。VA型はIPS型よりも黒の締まりが良好といわれますが,見た目もまさにそんな感じです。
 公称の中間調(gray-to-gray)応答速度は1msで,さすがはゲーマー向けディスプレイといったところ。垂直リフレッシュレートは最大144Hzです。


 公称輝度は350nit。HDR表現時のピーク輝度はもう少しありそうですが,そのあたりの詳細は記載がありませんでした。色域はsRGB色空間カバー125%,Adobe RGB色空間カバー率92%となかなか優秀だと思います。
 最大消費電力は113W。これは27インチディスプレイ2台分と考えるとおおむね妥当でしょう。


FreeSyncFreeSync 2って何がどう違うの?

 さて,ここからC49HG90をFreeSyncで利用するためのお話に移ろうと思いますが,まず,大前提としてFreeSyncFreeSync 2の違いをお話ししておこうと思います。

 詳細を知りたい場合はボクの連載バックナンバーを参考にしてもらえればと思いますが,簡単に言うと,

FreeSync:可変フレームレートの映像や,60fps(=60Hz)を大きく超えた映像の表示を美しく滑らかに表示するための技術
FreeSync 2:映像のHDR表示や広色域表示を出力先のディスプレイ最適化して行う仕組み


で,つまり,FreeSync 2というのはFreeSyncの後継でも,バージョンアップ版でもなく,むしろまったくの別モノです。ですので,FreeSync 2に対応する一方でFreeSync非対応という製品は存在し得ますし,逆も同様です。
 ちなみにC49HG90はFreeSyncFreeSync 2への両対応を謳った製品となっています。


FreeSyncを有効化するためのお作法

 C49HG90では,HDMIDisplayPortの両方でFreeSyncを利用できますが,その振る舞いは微妙に異なります。
 まず,C49HG90の最大垂直リフレッシュレートである144Hzを引き出すにはDisplayPort接続が必須となります。HDMI接続では120Hzまでです。ですが,今回組み合わせたRadeon RX Vega 64であれば,GPU性能的に,HDMIでもDisplayPortでもあまり違いはありません。
 というのも,ディスプレイネイティブ解像度である3840×1080ドット表示させた状態でFar Cry 5のグラフィックオプションメニュー「映像」で「画質」を「最高」にすると,Radeon Overlayから確認できる平均フレームレートは75fps前後だからです。最高でも90fps前後に留まりますから,上限が120HzとなるHDMI接続でも問題ないということです。


 さて,FreeSyncを有効化するためにはRadeon OverlayもしくはRadeon Settingsから有効化すればいいだけのような気もすると思いますが,実際にはこれだけだと不十分だったりします。


 というのも,これだけでFreeSyncは有効になるのですが,テアリングが知覚されてしまうんですね。ですのでゲーム側の設定「V-Sync」からVsyncを有効化する必要があります。そうすると,FreeSyncを利用しつつ,可変フレームレートの映像はテアリングなしに見られるようになります。
 また,「フレームレート固定を有効にする」も,FreeSyncの機能を最大限に活用するなら「オフ」にして,可変フレームレートを有効化すべきでしょう。

 Vsync無効時と,FreeSync&Vsync有効時の2パターンを,ソニーデジタルカメラ「DSC-RX100M5」で960fps撮影してみた結果を下に示すので,参考にしてみてください。

ムービー(※4Gamerへジャンプします)

ムービー(※4Gamerへジャンプします)


■HDRを楽しむためのコツも確認

 Far Cry 5の「映像」メニューではFreeSync以外の項目も細かくチューニングできるようになっていますが,メニューにある「モニター」以下でチェックしたい項目は「アスペクト比」「リフレッシュレート」「HDRを有効にする」の3つですかね。


 「アスペクト比」は「16:9」や「4:3」などといった標準的なもののほかに「カスタム」が選べるようになっています。21:9や,それこそ今回の32:9などといった超々横長アスペクトを選択したい場合は「カスタム」を選ばねばなりません。C49HG90を接続した状態では,「カスタム」を選択すると,その下の「ディスプレイ解像度」から「3840×1080」を選べるようになりました。
 「リフレッシュレート」はディスプレイサブシステムとしての設定を選びますが,基本的に,選択できる最も高いものを選んでおけば大丈夫です。前述のとおり,今回のグラフィックス設定で垂直リフレッシュレートが100fpsに到達することはほぼありませんでしたが,その状態で「リフレッシュレート」を100120144と切り換えても,見栄えに違いは生じていません。ですので,「大は小を兼ねる」的に最上位の設定をしておけばいいということになるわけです。

 「HDRを有効にする」は映像のHDR出力に対応させる設定です。C49HG90はHDR対応なのでここは「オン」にするべきでしょう。

 「映像」メニューの「色」にもHDR関連の設定があります。
 ここは,サンプル画面を見ながら白色の基準輝度を設定するところで,HDR表現の重要な役割を果たします。
 ここで設定する輝度は「最大輝度」ではなく「基準輝度」なので,一般的にはスペック表に記載されている「公称輝度」を設定すれば良いと思います。つまり,C49HG90の場合は公称輝度が350nitなので,350に近い設定にすればいわけです。
 ここの設定は10の位の数字が偶数に限定されていますから,実際には340か360を設定することになりますね。


 ただ,HDRらしい明るい表現をより鮮烈に見たいときなどには公称輝度よりもやや低めに設定するのもありだと思います。
 今回は,ここの設定を100にしたときと,340にしたときとで,下のような逆光シーンを使い,太陽の中心の輝度,画面やや左側の手前の樹木の幹の輝度,画面左下の茂みの輝度を照度計で計測して比較してみました。


 テスト結果は以下のとおりです。

■HDR無効化時
・太陽:303 lux
・樹木:42 lux
・茂み:25 lux


■基準輝度340nit設定時
・太陽:314 lux
・樹木:42 lux
・茂み:21 lux


■基準輝度100nit設定時
・太陽:309 lux
・樹木:21 lux
・茂み:12 lux


 画面が全体的に明るく見えるのはHDR無効化時です。HDR無効化時は,100nit基準で作った階調をディスプレイ側の映像エンジンが350nitの公称輝度にまで階調を増幅して表示しているため,暗いところもかなり明るく見えてしまっています。まあ,ゲームとしては意外にこういう画面のほうがプレイしやすいのかも知れませんけど。

 HDRを有効化したケースだと,基準輝度340nit設定時は画面全体の明るさこそHDR無効時に近いものの,暗部の階調がしっかりと暗く描けている点が異なります。
 さらに基準輝度100nit設定時は,印象としては前出2つよりも画面が暗い印象を受けるかもしれないですが,最大輝度で描かれる太陽の輝度は前出2つとそうは変わらず,一方で,他の表現の輝度はやや落ち着いた感じになっていて,コントラスト的な鮮烈さは最も強く感じます。「リアルな情景」といったイメージですね。

 正直,ここは好みにもよりますし,ディスプレイの機種特性にも依存するので,HDRディスプレイを持っている人は,今回の記事を参考にしていろいろ弄ってみると面白いかと思います。


FreeSync 2はパッチが到着し次第テスト予定

 以上,今回の記事は「届いた機材と現行Far Cry 5の組み合わせでなんとかFreeSync 2を有効化できないか」と試行錯誤しているうちに蓄積されたノウハウを吐き出した回となりました(笑)

 「蓄積されたノウハウ」とは「FreeSyncを活用するための小技」だったわけですが,このあと6月にFar Cry 5をFreeSync 2対応とするパッチが出てきたときには,初代FreeSyncの話を長々とするわけにもいきませんし,結果オーライかもしれません。
 この機材セットを使ってFreeSync 2の評価ができるようになったタイミングで,またお会いしましょう。



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記事URLhttp://www.4gamer.net/games/295/G029549/20180510121/
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関連タイトル
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・PC ファークライ5

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【西川善司】「Far Cry 5」をFreeSyncでプレイするためのTIPS