世界的指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンの実話に基づいた漫画が、SNS上で話題となっています。一国の首相が来ようと、あいさつにすら行かないカラヤン。そこで楽団員が取った行動は…という内容に「笑った」「とても面白かった」「実話というのがいい」などのコメントが寄せられています。漫画の作者に話を聞きました。

チェリストの言葉に影響を受けた

 漫画には、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の終身指揮者を務めたカラヤンが登場します。楽団員から「中国の首相が来ている」と告げられたにもかかわらず、カラヤンは机の上に足を投げ出し、あいさつに行こうとしません。傲慢なカラヤンに、楽団員はある言葉を…という展開です。

 この漫画を描いたのはIKEさんペンネーム)。漫画家だけでなくイラストレーター、デザイナーとしても活動しています。「マンガで教養 はじめてのクラシック」(飯尾洋一監修、朝日新聞出版編著)で漫画を担当したほか、「巡り逢う才能」(H.マクドナルド著/森内薫訳、春秋社)で装画などを担当しています。敷居が高いと思われがちなクラシック音楽をもっと身近なものにしたい、との思いで仕事をしているそうです。

Q.この漫画を描いた経緯は。

IKEさん「『証言・フルトヴェングラーかカラヤンか』(川口マーン恵美著、新潮選書)という本を昨年読み、感銘を受けました。もともとベルリン・フィルの来日公演を聴きに行く予定でしたので、予備知識として読んだ方がいいと思って手に取りました。

本では、今回の漫画のモデルであるベルリン・フィルの元チェリスト、ヴァインスハイマー氏がカラヤンとうまく付き合うコツについて、『カラヤンとは、そういう人間なのだ』『受け入れる』と語っていました。『反りが合わない人間とどう折り合いをつけるか』ということを考えさせられ、ぜひ漫画にしたいと思いました」

Q.これまでに、どのような意見が寄せられていますか。

IKEさん「『楽団員がGJ(グッドジョブ)すぎて泣いた』といったコメントを頂くなど、予想以上の反響がありました。職場や家庭など、自分の周辺に存在する『あるある』的な出来事に共感してくださったのかもしれません」

Q.現在、手掛けている漫画はありますか。また今後の目標は。

IKEさん「『ウィーンのキロク』という漫画を描いています。2015年に初めてウィーンへ行ったことがきっかけです。現地在住の日本人の方に案内してもらい、たくさんの刺激を受けました。現地の歴史や文化はもちろん、マナーに至るまで日本とは違いました。

教えていただいた知識量が多かったので、何らかの形にしたいと考えました。今年の秋に完結させる予定なので、読んでいただけるとうれしいです。今後は、海外の人にも読んでもらえるような、絵面のみで伝えられる漫画も手掛けていきたいです」(報道チーム)

カラヤンの実話を描いた漫画の1カット=IKE(@Zuraaaa)さん提供