日本企業の世界進出は目覚ましく、年々、世界で活躍できる人材が求められています。海外進出を目指している日本の企業は多いですが、果たして海外の企業ではどのような仕事の進め方をしているのでしょうか。 外資系企業で働く黒岩真治さんに、国内企業と外資系企業の違いについてお話を伺いました。

国内企業はできなかったことを反省し、外資系企業はできたことを評価する

――国内企業と外資系企業の違いはどんなところでしょうか?

あくまでも一般論ですが、外資系企業の広報部署の責任者は国内企業と比べて地位が高く、経営会議のメンバーに入っていることも多いです。国内企業だと、マーケティングや総務に関わる部署の下に入っていることもありますが、外資系では独立している傾向にあります。

国内企業では、モーターショーや発表会で多くの広報スタッフがあちこち走り回っている印象がありますが、外資系は最小限の人数しかいないので、アウトソーシング(外部委託)を多用しています。モーターショーなどのイベントの他、例えば英語の資料を作る際、全て自分で作るのではなく、英語に翻訳することを前提とした原稿を日本語で書き、翻訳はアウトソーシングすることもあります。

極論ですが、「しなくていいことはしない」ようにしています。7割の出来でOKが出ることは、7割仕上げるところまでしか力を使わないということです。国内メーカーだと、7割で問題がないものでも10割に近づけようとするケースが多いですが、外資系では人数が少ないためそこまでしません。スキルのあるスタッフが7割を10割にするために、社内を行ったり来たりすると2倍3倍の時間がかかってしまうからです。

同じ仕事を2人でしないことも心掛けています。国内企業の場合は、会議に関係部署のスタッフが複数名顔を出すことが多いですが、私たちは同じ会議に明確な理由がなければ同じ部署から2人は出席しません。無駄だからです。週末にイベントがある場合も通常は1人しか出ません。別のスタッフは完全に休めるようにすることが付加価値だと思います。

こちらもあくまで一般論ですが、できなかったことを反省するのではなく、できた部分をとことん高く評価する点においても、国内企業と外資系企業の違いは大きいです。国内企業では何ができなかったか、改善点は何か、次回にどう生かしていくかと何か悪いところを改善しながらものを作る姿勢です。外資系は何が良かったか、どんな広報活動の評価が高かったかという点を見ます。

外資系はヘッドハンティングで転職するケースが多いです。給料は例えば金融業界だと数倍になることもあります。英語を使う仕事は平均的に給料が高いですが、英語がすごくできて国内メーカーに行っても、英語をあまり使う機会がなければせっかくの英語力が生かせません。外資系で英語をガンガン使う仕事の方が、スキルを現金化できています。

帰国子女で高い英語スキルを持っていながら国内企業で働いていてあまり英語を使わない人よりも、不自由しながらもなんとか英語を勉強して英語を使っている人の方が収入は上かもしれません。

学校の英語は「目的」、企業の英語は「道具」

自動車界の名だたる外資メーカーのシンボルマークが並ぶ
自動車界の名だたる外資メーカーシンボルマークが並ぶ

――高校時代から英語が得意だったのでしょうか?

基本的に学校で勉強するだけだったので、さほど英語が得意ではありませんでした。親の仕事の都合でアメリカで生まれましたが、生後1年ほどで日本に帰国したためごがく力における恩恵はゼロでした。

高校時代の英語の成績は悪くはありませんでしたが、海外で生まれたプライドが原動力で少しだけ頑張ったからかもしれません。自ら英語を学び始めたのは、社会人になってからです。英語が話せない自分に焦りを感じたためです。


――学校で学んできた英語と外資系企業に入って使う英語とでは、どのようなことが違いますか?

学校では英語そのものが目的ですが、企業では仕事という目的を達成するための道具です。その道具の「性能」を磨こうと本気で学んだので、社会人1年目で英語能力は急成長しました。

学生の頃、英語はテストや受験にパスするためのものでしたが、社会人になってからは仕事の場面で必要な情報や自分の考えを伝えるため、英語の筋力のようなものが付いたと思います。もちろん今でも英語が完璧だとは考えていませんので、毎朝NHKラジオの録音で地道に勉強して英語力の維持・向上を図っています。


――外資系企業に勤める上で持っていた方がいい資格はありますか?

企業に入社するために資格そのものが役立ったことはなく、資格を取る過程で勉強する内容に意味があると思っています。

仕事を通じて身に付けてきた英語力を客観的に測ってみたいと思い、スポーツをする感覚でTOEIC®に挑みました。ほぼ満点を取れたことで、自信を持って英語を使えるようになりましたね。国家試験である知的財産管理技能検定も、2級を取得する過程で広報業務で必須となる著作権や商標に関する知識を系統立てて学ぶことができました。

帰国子女が武器になるとは限らない、必要なのは実務力!

――最近は、国内企業であっても社内公用語を英語にする企業が増えてきています。今までどのような現場でどのように英語を活用してきましたか?

最初の職場はドイツ企業でしたが、公用語は英語でした。日本人ドイツ語ドイツ人が日本語を話す必要がない代わりに、互いの母国語ではない英語という共通の「道具」を使うことは合理的に思えました。書類も日本人用とドイツ本社提出用の2通り準備するのではなく、英語で1種類作ればいいのです。

その後の職場でも、会議では日本語を理解しない人が1人でもいれば英語を話す環境だったので、英語を話す必然性がありました。ただし、日本に駐在している外国人が上手に日本語を話すケースでその場にいる外国人日本語力が私の英語力を上回る場合、無理に英語を使わずに日本語を使います。

英語力が向上する過程で最も苦労したのは、同じ日本人の前で英語を話すことです。外国人と英語で話すことは実はそれほど難しいことはありませんが、自分より明らかに英語力が高い日本人の前では、恥ずかしい気持ちが先に立って英語を話せないことが何年も続きました。これを克服できたのは、先ほどお話した資格取得で自信が付いてからのことでした。


――外資系企業で働くには帰国子女の方が有利ですか?

日本における外資系企業の大半は、日本国内の市場で流通する商品やサービスを提供することを使命としています。業種や職種によってさまざまではありますが、仕事の大半は日本人の同僚や取引先やお客さまとの日本語のやりとりになります。言語力の面で帰国子女は入社の際に有利かもしれませんが、大切なのは言語力以上に実務力であると感じています。

ある一定の英語レベルを越えれば、帰国子女もそうでない人も同じく努力が必要です。外資系よりも日本企業の海外業務部門の方が多く英語を使っているのではないでしょうか。

国際人として大切なのは、英語を上手に話すことではなく自分の意思をきちんと伝える能力です。例えば、相手が理解しているかどうかお構いなしに話し続けるアメリカ人もいれば、相手の言語レベルを測りながら音節ごとに丁寧に話すアメリカ人もいます。日本人にも同じことがいえますね。


外資系の企業では、海外のスタッフコミュニケーションを図ることが多くなります。海外の人との会話は、相手の文化を理解できないと意思疎通が図れないこともあります。将来、外資系スタッフとして働くのであれば、英語のスキルを向上させることができ海外の文化に触れることもできる留学を視野に入れてみるといいかもしれませんね。


profile】FCAジャパン株式会社 広報部長 黒岩真治


FCAジャパン株式会社 http://www.fcagroup.jp/

※内容は全て取材時点(2017年12月)のものです。