イギリス屈指の名門バレエ団として知られる英国バーミンガムロイヤルバレエ団が3年ぶりに来日している。きたる2018年5月25日(金)と27日(日)に『リーズの結婚』(全3幕)のタイトルロールを務める平田桃子は、2013年プリンシパル(最高位)に昇進し、カンパニーを代表するバレリーナとして活躍中だ。のどかな農村を舞台にした人情味あふれる名作喜劇において、パリ・オペラバレエ団エトワールのマチアス・エイマン(ゲスト)と共演する平田に、来歴や公演への意気込みを聞いた。

「演じる役柄」が好き

ーー2001年ローザンヌ国際バレエコンクール入賞後、ロイヤルバレエスクールに入学されました。なぜイギリスに行こうと思われたのですが?

5歳からバレエを始め、吉田都さん(元英国ロイヤルバレエ団&英国バーミンガムロイヤルバレエ団のプリンシパル)に憧れていました。10歳の頃、都さんの踊る『くるみ割り人形』の映像を観て衝撃を受けました。そこから海外で活躍したい、都さんがいらっしゃるイギリスで踊りたいという気持ちが芽生えました。ローザンヌでスカラシップをいただいたので、迷わずイギリスに留学しました。

ーー 2003年、英国バーミンガムロイヤルバレエ団(以下、BRB)に入られます。

スクールに入るためロンドンに着いて数日後に初めて観た舞台がBRBの『白鳥の湖』でした。学生時代には芸術監督のデヴィッド・ビントリーさんの『ペンギンカフェ』などを観る機会があり、いつか一緒に仕事ができればいいなと願っていました。最終学年のときにデヴィッドさんがクラス見学に来られ、入団のオファーをいただき、その日のうちにサインしました。就職活動を始める直前でした。

ーー BRBの魅力はどこにあると思われますか?

雰囲気がアットホームです。シーズンの半分はツアーなので皆と一緒にいる時間が長く、家族のようです。信頼できる仲間と創りあげるチームワークが優れていて、それが舞台にも反映されているのではないでしょうか。レパートリーも幅広く、ピーター・ライトさん(前芸術監督)の古典作品を大事に上演し続けながらデヴィッドさんの作品も取り入れたりして活発です。私は「演じる役柄」が特に好きです。この4月に『ロミオとジュリエット』のジュリエットを演じたのですが、その前に『眠れる森の美女』のオーロラ姫を踊り、5月に日本で『リーズの結婚』のリーズを演じます。これらを短期間で演じることができて本当に満足しています。

師・ビントリーに導かれて

ーー ビントレーさんは日本のバレエファンにも敬愛されています。平田さんにとって彼はどのような存在ですか?

口数は少ないのですが、ダンサーひとりひとりの能力を見抜く目が大変優れている方で、私もデヴィッドさんに自分の良いところを見出されてここまで来られました。自分では古典を踊るのが得意だと思い、ジュリエットとかは絶対に無理だと考えていました。でも配役してくださって、キャラクターの幅が広がり、「自分はこういう面も出せるんだな」と気付くことができたので大変感謝しています。

デヴィッドさんの作品も踊らせていただいています。彼はストーリーを伝えるのが上手く、音楽性にこだわりがあって、斬新な作品をたくさん創っています。私に初めて振付してくださったソロが『シンデレラ』(2010年)の春の精で、一から創作に関わり役を創り上げた唯一の全幕作品なので思い出に残っています。他にも『パゴダの王子』のBRB初演(2014年)でさくら姫を踊ったり、『テンペスト』(2016年)のミランダを演じたりしました。

ーー ビントリーさんにかけられた言葉で印象深いものは何でしょうか?

一時期カンパニーを離れましたが(2011年から2013年までスペインのコレーラ・バレエに所属)、「帰りたくなったら、いつでも戻っておいで」と言ってくださり、凄く心強かったです。スペインに出てみてBRBの良さを実感し「戻りたい」と電話を掛けると、デヴィッドさんもご自分の言葉を覚えていらっしゃり迎え入れてくれました。本当にありがたかったです。外に出たのは、まだ若かったし、いろいろな作品に触れてみたいという野望にあふれていたからでしたが、周りのことを考えずに行動していました。スペインでも良い経験ができたのですが、BRBに戻ってからはさらに充実しています。

平田桃子

平田桃子

バレエのおもしろい要素のすべてが詰まった『リーズの結婚』

ーー 日本公演で主役のリーズを踊るフレデリック・アシュトン振付『リーズの結婚』の話をうかがいます。作品の魅力や見どころをご紹介ください。

コメディですが、ロマンティックな場面もあって人間関係やキャラクターが多彩です。リボンなどの小道具も出てきますし、着ぐるみの鶏が飛び出してきたりもします。バレエのおもしろい要素のすべてが詰まっていると思います。それぞれが演じるキャラクターの個性が強いので、それを私たちがどう表現し掛け合っていくのかをご覧いただきたいです。

アシュトンの振付を踊るのは大変難しいです。角度一つ違うと別のものになりますし、フットワークは独特です。一度デヴィッドさんがガラ公演で(男性が演じる)リーズの母親シモーヌを演じ、木靴の踊りを踊るのを観ましたが、バレエテクニックを超えていました! ぜひ全幕で演じてもらいたいです。

ーー 好きな場面、演じる際に工夫されている部分はどこですか?

最後の第3幕が特に好きです。踊るだけでなく自分の動きが重要になるので、マイムをどれだけ明確にお客様に伝えられるかが常にチャレンジです。明確にやらないと伝わりません。

ーー コーラスとの結婚生活を夢見る場面ですね。

イギリスバレエ特有かもしれません。来日公演のもう一つの演目『眠れる森の美女』はライトさんのバージョンで、そちらでもマイムが重視されています。今回はイギリスを代表する二つのバレエを楽しんでいただけます。

ーー コーラス役はパリ・オペラバレエ団のマチアス・エイマンさんです。来日に先立ちバーミンガムで一緒にリハーサルをされたそうですね。

若い頃からエトワールとして大活躍されているスターなので、共演させていただくのはこの上なく幸せです。初めてお会いしましたが、基礎にはじまりすべてが美しいですし、もちろん経験も豊富なのでパートナーリングも上手でいらっしゃいます。ストイックな方なのかなと想像していたのですが凄く気さくで、「ああ、なんていい人なのだろう!」と思いました。本番でどのように掛け合って反応を返してくださるのか楽しみです。二人でリボンを使ってあやとりをする場面を、バーミンガムに来ていただいたときにひたすら練習しました。今は自分用リボンをもらって一人で練習しています(笑)。ソロで踊る場面もあるので一生懸命やっています。

ーー日本公演に賭ける思いをお話しください。

日本で踊るプレッシャーはあります。自分よりも若いダンサーがほとんどになり、その分の責任感は常にあるので、今回は先頭に立って引っ張っていくくらいの勢いで来ています。それから寂しいですが、デヴィッドさんはあと1シーズンで芸術監督を退任するので、今回が監督として最後の日本公演になります。がんばらなければいけませんが、日本の観客の皆様に私たちの和気あいあいとした素敵なカンパニーを見ていただけるのは楽しみです。

平田桃子

平田桃子

取材・文=高橋森彦 撮影=荒川潤

平田桃子